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早稲田大学が「ダイバーシティ推進宣言」なぜこのタイミングなのか、LGBT学生支援センターの課長に話を聞いてみた

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早稲田大学が7月1日に「ダイバーシティ推進宣言」を公表しました。

今年4月からLGBTの学生を支援する「GS(ジェンダー・セクシュアリティ)センター」を設置している同大学では、キャンパス内のだれでもトイレに「All Genders」マークを新たにつけたり、授業の出席簿から性別欄を廃止するなど、多様な性に配慮した施策を進めています。

なぜこのタイミングでLGBTへの配慮を本格的に始めたのか。早稲田大学GSセンター課長の関口八州男さんにお話を伺ってみました。

見えてきたのは、「当事者の声、学生の声をしっかり反映することが、見落とされがちな細かい配慮に活きている」ということ。他大学のみならず、企業など多様性を受け入れる制度づくりの上で参考になるお話でした。

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GSセンター課長の関口八州男さん。「GSセンターはLGBTの学生が気軽に相談しに来れたり、ジェンダーやセクシュアリティに関心のある全ての人が自由に利用できるフリースペースです」

■学生からの提案でもあり、トップダウンでもある「早稲田」だからできること


ーーどういった経緯でGSセンターは設置されたのですか?

関口さん:早稲田大学では、2032年で創立150周年を迎えるということで、「WASEDA VISION 150」という中長期計画を2012年に発表しました。その中で、学生が大学に対して、このビジョンに沿った提案を行う「Waseda Vision 150 Student Competition」という学生コンペがあり、そこでダイバーシティ早稲田という団体が「日本初、早稲田大学にLGBT学生センターを」という提案をして、総長賞を受賞したのです。

総長賞になったものは基本的に大学は実現を目指すことが暗黙の了解となっており、学生提案ではあるのですが、いわゆるトップダウンでもあり、早稲田大学ならではの仕組みなのではないかなと思います。

2015年の秋から設置に向けて動きだし、ダイバーシティ早稲田が提案したイメージを損なわないよう、学生にも意見を求めながら進めました。

ーー学生から声があがったというのが良いですよね

関口さん:学生から声が上がっていなければ、この組織はできていなかったと思っていますので、提案は素晴らしかったと思いますね。

私も社会の流れの中で「本来は何かしなければいけない」と思っていました。早稲田大学にはもともとLGBTの学生サークルもあったので、一定の認識はあったのですが、その一方で、学生からの相談が顕在化されにくい状況にありました。

学生相談室にも学生はあまり相談に行っていないようでした。理解をしていない人に話すと、辛い反応をされることもあるというのがあって、学生にとってはハードルが高いようです。

--GSセンターはどこが管轄されているんですか?

関口さん:2017年4月に早稲田大学学生部に「スチューデントダイバーシティセンター」が新たに設置されました。GSセンターは「スチューデントダイバーシティセンター」内のひとつの担当箇所となります。早稲田大学の学生部では元々、ICC(異文化交流センター)と障がい学生支援室が設置されており、学生部内のそれぞれ単独の組織だったのですが、「多様性」というひとつのキーワードの中、これらを統合した組織を作るべきではないかということで、新たに設置したGSセンターを加え、「スチューデントダイバーシティセンター」の設置に至りました。

ICC、障がい学生支援室、そしてGSセンターの3つの担当で「スチューデントダイバーシティセンター」は成り立っているんです。

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6色のレインボーフラッグがGSセンターの目印。学生が訪問するためのハードルを少しでも下げるために、あえて「LGBT」という名前は使わなかったそうです。

■利用者は月に約100人。「敷居の低さ」がポイント

--GSセンターを設置して約2ヶ月、反応はいかがですか?

関口さん:学生の反応は、思ったよりありますね。最初どれくらい来るのだろうと正直思っていましたが、今は1ヶ月で100人弱くらいGSセンター事務所に来所しています。
新入生に配る書類に紹介パンフレットを入れたので、それを見て来たという人も実際にいましたね。

--そんなに来ているんですね。学生からはどういう相談があったりするのでしょうか?

関口さん:ひとつは大学の制度に関すること。例えば4月に多かったのは健康診断に関する相談でした。現在、早稲田大学は学生から相談があれば、個別対応をしています。その他、ハラスメントの相談を受けることもありますし、ご自身の気持ち、セクシュアリティについてちょっと話を聞いてほしいとか、そういう相談もありますね。

あと、本を読みにくる学生も結構いますよ。気軽に読みに来てもらって大丈夫です。本は多種多様に揃えておいて良かったと思いますね。

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ジェンダーやセクシュアリティに関する様々な本が置かれています。ソファで話をしたり、本を読んだり、思い思いの利用ができるそうです。

GSセンターの職員で、自らもMtX(法的な性別は男性だが、自らを男性でも女性でもないXジェンダーであると感じること)を自認されている大賀一樹さんにもお話を伺った所、GSセンターは「学生が相談にくるための敷居が低い」ことが良いそうです。

「だからこその課題もあって、やっぱりアウティング(セクシュアリティについて、本人の同意なく第三者に暴露されてしまうこと)のリスクをどう防ぐか。例えば、GSセンターの利用には受付が必要ですが、ニックネームでもOKにしてもらっています」

学生からの相談内容は様々で、教員へのカミングアウトについてや、当事者間でのトラブルについて、また、ALLY(アライ)としてどう振る舞えば良いのかという相談もあるそうです。

特に当事者間でのトラブルについては、「言える場所が他になくて誰にも相談できない。第三者的な視点で、でも知識や理解がちゃんとある場所が必要なんだなと改めて感じました」

--GSセンター設置と同じタイミングで、全学として、だれでもトイレの表記に「All Genders」というマークを追加したり、授業の出席簿から性別欄をなくしたりという取り組みをされていますよね。今後はどんなことを進めていかれるんですか?

関口さん:とにかくまずは多くの学生にこの取り組みを知って欲しいですね。
ただ、広く学生の皆さんに啓蒙活動を行いたい一方で、当事者の学生への窓口であることも重要だと思っています。

最近、課題と感じていることは、センター内のフリースペースの中で当事者と当事者ではない学生が一緒になることで、当事者の学生が息苦しさを感じてしまっていることです。当事者の学生が安心して、センターで相談できる環境を保っていかないと、学生が来づらくなってしまいます。ただ、当事者ではない学生にも、GSセンターの事をもっと知ってもらいたいと思っています。両者を併存する事がなかなか困難であることから、まずは、当事者以外の学生の啓発活動として、イベントなどを行っていきたいと思います。

また、大学全体の課題の一つとして、教職員の研修が必要であると思っていますので、ダイバーシティ推進室を中心にGSセンターも協力していきたいです。

■「誰のためにやっているのか」当事者の声を拾い上げ、学生と連携する


早稲田大学は今回「ダイバーシティ推進宣言」を公表しましたが、「ただアピールだけして、それで終わり」だともちろん意味がありません。その意味では、これまでも早稲田大学としての取り組みをひとつずつ重ねてきたことが、もちろんまだまだ課題はあるけれども、取り組みを進めていく姿勢を見せる=宣言することにつながっているのだと思います。

お話を伺っていて感じたのは、当事者の声を拾い上げる、つまり学生との連携がとても重要だということ。すごくそこを気遣っているように見えました。

「あまり大学が一方的にということになってしまうと、誰のためにやっているのかとなってしまうと思うんですよね」と話す関口さん。

「私自身も他の人から見れば、ダイバーシティとは無縁な人間のように見られてきたけれども、最近は随分変わったと職場の方からも言われたりします。」と、いつの間にか自分自身の意識も変化しているそうです。

「いろんな人たちが安心して学生生活を送れるような環境にする、というのがひとつの理想です」

早稲田大学の取り組みが、他大学はもちろん、学校や企業など様々なコミュニティに広がることを期待したいです。