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「子どもたちの放射線への関心が薄らいでいる」 風化を防げ 福島県・醸芳中学校 教諭 日下部準一さんらに聞く

2014年04月21日 01時42分 JST | 更新 2014年06月19日 18時12分 JST

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取材・執筆:大貫璃未 撮影:河野綾香

 福島第一・第二原発の事故で漏れ出た放射線をめぐり様々な解釈があるなか、子どもに指導する立場として放射線をどうとらえ教えていくのか。教育現場の教師たちは事故直後から今にわたり模索し続けている。醸芳中学校は、2013年6月に福島県教育委員会から放射線教育の実践推進校として指定され、同年11月、県内の教員を対象とした公開授業を初めて行った。先生方に放射線のリスクを生徒にどう伝えているのかお話を伺った。(写真は公開授業の様子を紹介する日下部教諭。)

子どもたちが自分で判断できるようにする

―授業の内容を教えてください。

紺野:第1学年は昨日(12日)が初めての授業でした。放射性物質とは何かという基礎的なことを教えます。小学校で学ぶ内容ですが全く身についていなく、知ろうとする気持ちがあまりない中でのスタートでした。

日下部:第2学年では、原子・分子の単元で放射線を出す原子について扱いました。そして体内に入ったときの影響や内部被ばくのリスクが低い食品の選択方法について公開授業で教えました。

―放射線に関するリスクはどのように伝えていますか。

日下部:低線量被ばくは科学的に解明されていない上に証明が難しい。放射線の影響で癌など疾病するリスクがあっても因果関係は明らかになっていません。それはリスクはあるということを示します。ですから今できることは、リスクの低減を図り病気や癌にならないよう少しでも努力することだと伝えています。

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日下部準一教諭

―今、生徒さんから質問がくることはありますか。

日下部:事故直後は事故について聞いてきたこともありますが今はほとんどありません。授業をして関心が薄らいできていることを知り驚きました。

紺野:中学校1年生にアンケートを取ったら、放射線をあまり気にしていないという子どもが思っていた以上に多かったんです。空間線量は通常より高いし、これからは内部被ばくのほうも気になるところなのですが。

―空間線量の値が事故当時より低くなったからなのか慣れからなのか、気にならなくなっている原因として何か思い当たることはありますか。

八巻:両方だと思います。気にしていたら生活ができないという状況もあります。マスメディアからの情報もこの頃は少ないですからね。

日下部:放射性物質は味もにおいもしないので身近に危険を認識できるものがないわけです。ですから、気にしなくてもいられるようになってくるのは怖いところです。

―事故後2年半後に放射線教育が始まるのは遅い気がしますが。

日下部:醸芳中学校では震災の年から理科の授業で何回かやっていました。教えるには基礎的な知識がないと無理なので専門的な知識のある理科の役割かなと思います。 紺野:事故の前は原子力発電のリスクよりプラスの側面に重点が置かれていました。今は危機感があるので事故前と同じように教えることはできないと感じています。リスクについて教科書の知識に付加して教えていかなくてはと思っています。

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手作りのプリント。放射線の正しい理解が判断の材料になる。

目に見えない放射線は具体化して理解する

―イメージしにくい放射線を教えるのは難しそうです。データを示したりするのでしょうか。

日下部:そうですね。子どもたちはデータを見ると自分で判断でき安心感が生まれます。また、事故当時危険な状況だったことも認識できるようですね。数値を示さないとただ聞き流してしまうところがあります。

 資料にしているデータは、公的な機関である県、国や諮問機関が発表したものを柱にしています。あとは教員が調べたことや福島県で生活している私たちが感じることも含めて指導をしている。知識として伝えることはできますが、それを使ってどう判断するかは子どもたちに委ねられています。安全・危険、それぞれの考え方に触れながら授業を進めています。

 教えるときはプリントだけでなく電子黒板、野菜など実物を使って理解しやすいようにしています。

―放射線について授業で教えるにあたり困難なことはありますか。

日下部:言葉の使い方ですね。学校の前は桃畑ですが、このあたりは果樹や稲作農家が多いんです。生産者の立場がありますから危険性を強調し過ぎないようにしています。ただリスクについては伝えなければいけないので、検査すれば安全を確認し食べることができるというところにとどめています。 また、電子黒板の数が足りないのでもっと配備してもらえるとありがたいです。

―生徒さんは線量計を使っていますか。

日下部:自分の家で持っている子もいるはずです。学校では授業で測定します。空間線量計は4台でベクレルを測る線量計はありません。

 事故前の学習指導要領で放射線の学習を3年生の理科で行うと決まっていました。4月実施のところ前の月の3月に事故があったので既に線量計が配備されており測ることができました。

紺野:たった1台でしたが貴重でしたね。

事故前から放射線教育の必要性を感じていた

―学習指導要領が決まる前は放射線教育の実施を考えていたのでしょうか。

日下部:教師の研究会もありますがごく一部です。自分自身はたまたま大学の卒論が放射線の教育を中学生に取り入れるべきではないかという内容だったので、ある程度の基礎知識があり役に立ちました。ただ放射線教育をやりたいかどうかは個人の先生の考えによります。

―もっと放射線について学ぶべきという考えはありましたか。

日下部:ありましたね。福島県は第一、第二と2つの原発があります。働いている人たちもたくさんいるわけです。原発で発電した電気を使って生活しているのに原発や放射線のことを全然知らない。これではまずいのではという思いからですね。

放射線そのものへの興味が判断のものさしに

―授業後の生徒の反応はいかがでしたか。

日下部:授業前後のアンケートでは、授業前の関心は人体への影響・放射線防護の一点だけでした。しかし授業後は、放射線の出る仕組みなど放射線そのもの、原発の仕組みや人体の放射性物質など科学的な部分に興味をもつ子どもが増えました。また、根拠を求めるようにもなりました。

―放射線について学校で教えることの意義は。

日下部:学校であれば必ず子供たちは来る。授業をやれば受けている子は全員その話を聞き、自分で実験をする。その機会をきちんと確保するという意味で、学校は放射線の知識を学ばせる貴重な場だと捉えています。またそれが学校の使命だと思います。

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紺野玲子教諭(第1学年理科を担当)

子どもが忘れていくことを防ぐ

―今後の課題はありますか。

日下部:一番の課題は内部被ばくでしょう。家でもそれほど気にしなくなっている。危機感の低下や風化に対処するために学校の役割はますます大きい気がします。食べ物を家で採ったり他人から頂いたときに、実際に線量を測り食べても良いものか考える。そしてリスクを判断することが大切だとずっと言い続けないといけない。大人になったとき危機感が全くなければ子どもたちの健康は守れないでしょうから。

紺野:実践教育校の配当で放射線の本を買いました。放射線の授業をしたとき置いておくと見るので、関心が高いときに出すなど工夫したいです。

日下部:ちょっと落ち着きのない子どもなんかも見ていたりして、意外と見てるんですね。

 国で放射線教育の実施が決まってからは色々な工夫が可能になってきました。ましてや事故が起きた福島県では子供たちを守るという立場で授業をすることになりました。何か起こったら対処できるよう中学生の段階から教えるべきではないでしょうか。

―風化を防ぐための具体的な対策は。

日下部:1つは校内の掲示物。2つめは授業での取り上げ方。今年度から始めた連携授業を増やしたい。来年度は保健体育と理科で、子どもたちの関心がある健康への影響について合同授業ができたらと思っています。そして授業の効果や課題を県内や全国に発信していきたいです。

(取材日 2013年12月13日)

取材を終えて

 「こんにちは」学校に向かう途中部活帰りの生徒さんから次々とあいさつが飛んできた。緊張で慌てて返事をしながら入った教室では、放射線の半減率を説明する紙を吊るしたハンガーなど授業で使った手作りの教材を見ることができた。放射線の授業は始まったばかりで頻度は学校によって異なる。一度事故が起これば目に見えない放射線と向き合っていくことになる。だがそれは事故の有無にかかわらず必要なことではないだろうか。(大貫璃未)

(2014年4月11日「Spork!」より転載)

福島原発 地下汚染水の視察

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