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ネタニヤフがホロコースト修正主義と、イスラエルとパレスチナの衝突を必要とする理由

2015年11月02日 15時01分 JST | 更新 2015年11月02日 19時44分 JST
HAZEM BADER via Getty Images
Israeli security forces stand and Palestinians gather at the scene where a Palestinian attempted to stab an Israeli soldier before being shot dead in the occupied West Bank city of Hebron on October 28, 2015. The United Nations warned that a deadly surge in violence between Israelis and Palestinians was headed toward 'catastrophe' as new knife attacks took place in the volatile West Bank. AFP PHOTO / HAZEM BADER (Photo credit should read HAZEM BADER/AFP/Getty Images)

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は10月20日の演説で、ヒトラーはもともとユダヤ人を抹殺しようと計画していたわけではなく、高名なパレスチナの聖職者に圧力をかけられたからそうしたのだと主張した。これは突飛な話ではあるが、右寄り政府とアメリカ支持者たちの長年の言説と一致する。

ドイツ政府からイスラエルの優れた歴史家まで誰もが言っているように、大ムフティー(イスラム国家宗教指導者)であるハジ・アミン・アル・フセイニがホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)への責任があったとする非難は馬鹿げている。そのようなやり取りが両者の間にあった記録がないだけでなく、会談が行われたのが1941年11月下旬は、いわゆる「最終的解決」が公式に認められてから4か月後だったのだ。その時点ではすでに、主にポーランドやリトアニア、ウクライナ、セルビア、そしてロシアから100万人近いユダヤ人たちが殺されていたのだ。

ネタニヤフがこうした極端な発言を短期的に行うことの目的とは何なのか。それは、パレスチナによるイスラエル市民への最近の攻撃が、イスラエルを代表する安全保障アナリストが言うようなイスラエルによるパレスチナ人の大量殺害に対する報復でなければ、イスラエルの50年間近くに及ぶ支配や植民地化、そして抑圧による欲求不満によるものでもないのだとする自身の主張を確かにするためだった。イスラエルの指導者にとって、攻撃は単純に何百年にも及ぶユダヤ人への憎しみの結果なのだ。

動機がどのようなものであろうと、占領されたヨルダン川西岸地区とイスラエル内でこの1か月に起こった8件のイスラエル人への刺傷や銃撃事件は、紛れもなくおぞましいことであり、絶対に正当化されるべきではない。

しかしこれと同時期に、13人の子供と1人の妊婦を含む57人のパレスチナ人たちが、イスラエルの警察や兵士、自警団によって殺されている。殺害されたパレスチナ人は刺傷攻撃を行った、あるいは試みたとされているが、多くの場合そうではなかったと目撃者たちは主張している。ある事件では、不審な動きをしていた男がイスラエル警察によって殺され、「テロリスト」扱いされた。だが、政府は彼が実際にはイスラエルに住むユダヤ人だったことがわかると、すぐにその扱いを撤回した。

暴力的抗議をしている最中に射殺されるパレスチナ人もいるが、殺された人の多くは暴力や脅威的な行動を行ってはいなかったようだ。殺害された人の中には医師や、ヘブロン(ヨルダン川西岸の都市)のコミュニティの指導者で、人権活動家でもあったHashem Azzehも含まれる。彼は、イスラエルや、国際的な平和活動グループと共に協同してきた非暴力抵抗運動の支持者だった。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの専務取締役ケネス・ロス氏は、同団体の研究者がイスラエル進駐軍からの銃撃を受けて次のように述べた。「無差別あるいは故意による、何の脅威もない第三者やデモ参加者への銃撃は、イスラエル軍が従うべき国際的な基準を侵害しています」。

一方アメリカでは、ヒラリー・クリントン前国務長官と共和・民主両党の議員が、パレスチナによるイスラエル市民の殺害を非難する声明を発表した。非難の対象になったのは、より件数の多いイスラエルによるパレスチナ市民の殺害に対してではなかった。

アメリカ議会の有力な民主党議員は、共和党員の仲間たちと共に、パレスチナのムハンマド・アッバス議長に対して、現在行われているイスラエルへの攻撃を停止するように求めた。その攻撃の大部分が、イスラエルの独占的支配下にある地域に住むパレスチナ人によって行われているという事実にも関わらずである。実際、イスラエルの諜報機関は、アッバス議長がそのような攻撃を支持していることを示唆する証拠はないだけでなく、管轄区域内でのいかなる攻撃も未然に防ぐようにと議長が自らの公安部隊に指示していたということを認めている。

ホロコーストに関して歴史を顧みないネタニヤフの主張の背後にあるより大きな動機は、パレスチナの民族主義的な活動は、理性ない狂信者たちによるユダヤ人殲滅と大差ないと説明する長期的戦略の一環のようだ。これこそが、和平は不可能だと右翼首相が主張する理由なのだ。実際、10月26日のヨルダン川西岸地区に関する演説で、ネタニヤフは「私たちは近い将来、全ての領地を支配する必要がある」と繰り返し主張した。

一方で、アッバス議長、パレスチナ自治政府、パレスチナ解放機構(PLO)、PLOの主流派ファタハなどのすべての機関は、歴史的にパレスチナのものであった土地の78パーセントで、確固たる安全保障があるならばイスラエルの存在権を容認しているとされている。その上で、1967年の中東戦争でイスラエルに奪われた残り22パーセントの土地の支配・植民地化の終了を単純に要求しているだけなのだ。

このような穏健的姿勢を前にして、イスラエルが和平のために必要な妥協を拒み続けることは難しくなってくる。このようにして、ネタニヤフや彼のアメリカの支持者たちが占領下の土地で起きる暴力だけを非難し、アラブ人やイスラム教徒はただ単にユダヤ人の抹殺を望んでいるのだと大衆に思い込ませなければならない。そして、パレスチナからの和平提案を却下するように大衆を恐怖へ落とし込む必要がある。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。US版は10月27日にザ・プログレッシブに投稿された記事を転載しました。

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