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【人はなぜ勉強するのか】強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話 - ある一家の家庭教育にあった、学びの意味 -

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偏差値至上主義、学歴偏重社会の言葉に代表されるように、現在、日本の教育は、学校や塾を中心に、「受験や成績のために勉強する」ということに重点が置かれている。
しかし、「勉強する」ということの本質は、本来受験や成績を上げることとは別の所にあるのかもしれない。

「なぜ勉強をしなければいけないのか?」そう自分の子供に問われたことのある親も多いのではないだろうか。この問いは誰もが一度はぶつかる壁でもある。
この問いに答えられること、それ以上に、この問いを子供と一緒になって考えることこそが、今求められているのかもしれない。

以前STORYS.JPに、ある家族の長男が綴ったストーリーが投稿され、瞬く間にネット上で話題となり、多くの人の反響を呼んだ。
それは、一風変わった、どころか、かなり変わった「強烈なオヤジ」に育てられた三兄弟の物語だった。
彼ら三兄弟は、結果として、高校も塾も通わずに京都大学に進学することとなる。
家庭教育に心血を注いだ強烈なオヤジの教育は、一見すると奇想天外なものばかりだが、そこには「学ぶこと」の本質があった。

多くの人が、「学ぶ」ということは広い意味を持つことであり、決して成績や学歴だけが全てではないことを頭では理解しているように思う。
しかし、理想だけではどうにもならない現実との狭間で、教育の答えを皆が探している。
だからこそ、子供の教育というものに正面から向き合って全身でぶつかっていった強烈なオヤジと、彼に育てられた三兄弟の物語は、多くの人の心をつかんだ。
そして先日、この物語が、「強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話」として全国書店で発売された。

筆者インタビュー

三兄弟の長男である筆者は、現在学習塾を経営し、日々生徒達と共に、「学ぶこと」と向き合っている。
本書は、前半は漫画のような筆者の家族の多彩なエピソードが綴られ、後半には教科書のような、分かりやすく実践しやすい具体的な子育て・教育メソッドが綴られている。
一家の長男として、そして子供達を指導する教育者として、2つの立場から綴られた本書は、今まさに学ぶことに直面している学生、そして子供の教育に悩んでいる多くの親に、きっとヒントを与えてくれるだろう。

ここで本書の一部を少しだけ紹介したい。

「学校よりもクリエイティブな1日にできるなら 無理に行かなくてもいい」

その後、本当に学校に行かなくなり
大検制度を使って京大に放り込まれた3兄弟は
変わった教育方針の父親の元で育った。

長男「お母さん、今日は『火の鳥』のマンガ全巻読破するから学校休んでもいい?」
母「いいわよ~」
というような調子で一日中マンガ浸けという日があったり。

次男「いま『信長の野望』がいいところで、今日中に天下統一するから学校は休むね。」
父「コマンドの【調略】をうまく使えよ。夕飯時に武将クイズするからちゃんと覚えとけよ。」
次男「任せといて~」
というような調子で一日中ゲーム浸けという日があったり。

父「おい、今日は天気がいいな。(平日だけれど)キャンプ行くか!!」
三男「ええー。今日は揚げパンの日だからヤダよ・・・」
父「うるせえ!いいから行くぞ、支度しろ!」
父親の思いつきで突然二泊三日のキャンプ旅行が始まることがあったり。

一般的な家庭なら
「早く起きろ!さっさと学校に行け!」
と育てるところでしょうが三兄弟の家庭はその真逆。
学校に頼って勉強するのではなく、自分で勉強を組み立てろというのがその主旨でした。

家庭教育に心血を注いだ強烈なオヤジの存在。成功や失敗を踏まえながら、ときに孤軍奮闘、ときに悪戦苦闘、またあるときは支離滅裂になりながら、「自分の子どもは自分の力で育てる!」ことを信念に生きたオヤジの姿。そこには強い覚悟と子どもへの限りない愛があった。

自分の力で育てるといっても、仕事がある以上四六時中家にいて授業するわけにもいかない。そこで筆者の父親が考えたのは、「自分の代わりに優秀な教師を買い込む」ということ。それは、有名な家庭教師でもなんでもない、自分で学び取ることのできる本・マンガ・テレビ番組・映画を大量に買い込み、それを「戦略的」に見せていくというものだった。

時に何時間もかけ本屋で本を選び、知的好奇心を刺激するようなテレビ番組を探し、名作と呼ばれる映画を何十本と借りてはストックする。全ては自分の息子たちに学ぶ楽しさ、自分の頭で考える大切さを教えるために。

しかし、子どもというのは、わざわざ買ってきたからといって、簡単に手に取るほど甘くはない。「興味ないし」の一言で片づけられてしまうことが多い。
どうしたら子どもが興味を持ってくれるのか、試行錯誤を重ね出した一つの作戦は、「マンガや本については1ページにつき1円の小遣いを出す」というもの。
思い返せば、ガムシャラに学研の伝記シリーズなどを読みあさり、手にした小遣いで駄菓子屋に駆け込んだ日々があったという筆者は、幼き頃に心に焼き付けられた世界の偉人達の人生がその後の人生に大きな影響を与えたと振り返る。その頃は、エジソンにはまり、四六時中工作やロボット作りに励み、将来はロボット工学者になることを夢見ていたという。
「最近の子どもには夢がない」という言葉をよく耳にするが、憧れの人物を見つける・人生のお手本を知る・ロールモデルに出会う、というのはとても大きな学習効果を持っているのではないだろうか。

その他多種多様なやり方で、息子達に学びを伝える「強烈なオヤジ」の姿は、子を持つ親ならば何か心の琴線に触れるものがあるだろう。

映像を見せる前後や途中で、オヤジの授業が繰り広げられ、物事の見方を教え込んでいくのです。この「視点」というのが特に重要で、結局「○○の事件があった」とか「この偉業は○○が達成した」という知識ではなく、その知識を学ぶことを通して、新しい物事の見方や捉え方ができるようになることに意味があることを子どもながらに実感していきます。勉強の目的は知識を得ることではないということをオヤジは伝えたかったのでしょう。

オヤジが最も重視していたこと、それは入門編を吟味するということです。一口に歴史といっても、膨大な本や山のような映像があるため、どれから手をつけていいか初心者には分かりません。

オヤジ「子どもっていうのは自分が何を知りたいのか、何から手をつけていいのか、実のところよく分からないんだ」 

自分に適した本の選び方、映画の選び方、というのはある程度経験値をつめばこそ分かるというもの。また初心者の段階で挫折したり面白さを味わえなかったりすると、それ以上それに取組もうと思いませんよね。だからこそ入門編との出会いが大事だ、それをオヤジは知っていました。

本やマンガ、映画にテレビ。こうした地頭を鍛えるメディア家庭教師に加えて、オヤジが自分の分身として働かせていたものがありました。自称あらゆる学問に通じている彼が家庭に取り入れたのは他ならぬリアルな家庭教師(オヤジの友達)です。
オヤジを大学の学長とするなら、彼らはまさに学部長というべき人物たち。

リアル家庭教師A:旅行好きの主婦
リアル家庭教師B:禅寺の和尚
リアル家庭教師C:オーケストラの指揮者
リアル家庭教師D:芥川賞作家
リアル家庭教師E:彫刻家
リアル家庭教師F:藍染め職人
リアル家庭教師G:近所の豆腐屋のおっちゃん
リアル家庭教師H:バス停でたまたま知り合ったイスラエル人

バラエティに富むユニークな大人たちが、さまざまなタイミングや場面で登場し、三兄弟に影響を与えていくのです。
特にオヤジは、自分の力量では教えられないことや伝えられないことを、他人の力を借りて三兄弟に吹き込んでいく手腕も巧みでした。

・禅寺の修行とはどのようなものか
・指揮者に問われる力量とは何か
・芥川賞作家はいかにして小説を書き上げるのか
・彫刻家が削りだすのは人間のどんな葛藤か
・たまたま声をかけられて家に来る人の心境とはどんなものか

様々な体験談や人生のストーリーがオヤジと客人との間で繰り広げながら、3兄弟も耳を傾けていきます。そうして知り得ることができたのは、人の生き様でありこの世界の奥行きの深さです。そして、自分はどんな人物になりたいのか、将来どんな世界に関わりたいのかという人生で最も意義深く、そして答えのない難題に、早くから取り組むことができたような気がします。 

男だらけの家庭を支えた、お母さんの存在

また、本書は、一見三兄弟と強烈なオヤジが中心で、男臭いストーリーに見えるが、途中途中でさりげなくお母さんが登場する。このお母さんの存在こそが、この一家の鍵をにぎっていた。

筆者は母親に対してこう答えている。

"うちの家族をよく知っている人は、やっぱりうちの母を大事に思ってくれていますね。みんな客観的に見ていて、やっぱこの母ありきだよね、というように。「母が要だよね」って。"

"僕は、母親というものが機能しなくなってしまったら、家庭ってのは成り立たなくなってしまうと思うんです。
僕は今回父親についての本を出しましたが、これから支援をしたいと思ってるのは、母親、お母さんの方なんです。この世の中で一番偉いのはお母さんだと思っていて。世の中のお母さんのパフォーマンスが1%あがれば、地球のパフォーマンスは10%あがるんじゃないかって。それくらい母ってのはすごいんですよ。子供の教育、夫の仕事のパフォーマンスの支え、親戚付き合い、ご先祖様のケア、地域社会、おじいちゃんおばあちゃんの医療介護etcとかって考えていくと、母親ってあらゆる文脈の結節点なんですよ。色々な世の中の課題の全てに関わっている。だから母親が動かないと、世界は動かないんですよ。

そして、僕はたぶん、世のお母さんとかおばちゃんとかに一番必要なのは、自信だと思います。 私たちが世間を支えているんだって自信。その自信を持ってもらうためにも、一番大切なのは、社会全体の「気づき」だと思います。あ、母ちゃんってすげえって。普段胸にしまいこんでいる気持ちを、僕たちが呼び起こすこと。母への感謝ですよね。"

一風変わった強烈なオヤジに育てられた三兄弟、そしてその一家を支えた母。今自分が子を持つ親、そして教育者という立場となった長男が語る、教育の意味を問いかける物語。
そこには、読むものの心を惹き付ける、「家族の愛」がある。
学ぶことの喜びと、家族への愛に溢れた一冊。筆者は、本書で一番伝えたかったメッセージにとして、
「広く学ばせてほしい。そして、それを一緒に学んでほしい。」と語っている。

親も子供と一緒になって、学ぶことの意味を考えることが出来たら。

学ぶとは何か。本書を通じてこの問いが多くの家族に届き、日本の家庭に温かさと笑顔が溢れることを願う。

筆者インタビュー

書籍紹介(徳間書店)

強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話

(文=STORYS.JP編集部・川延幸紀)

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