BLOG

【永遠のゼロも矢沢永吉も門前払いだった?】セルフパブリッシングに見る、日本のパラダイムシフト

2015年11月18日 00時19分 JST | 更新 2016年11月16日 19時12分 JST

「セルフパブリッシング」という言葉をご存知だろうか。

個人が出版社を介さずに自身で本を出版・販売することができる、いわゆる自費出版サービスのことをいう。

一般的に"自費出版"というと、多額な費用が必要で、出版後の販売経路の確保も難しく、自己満足のような形で終わってしまうことも多い。

出版社を介しての出版となると、今度はハードルが非常に高くなる。

ベストセラーとなり、映画も大ヒットとなった「永遠のゼロ」も、持ち込みの時点では相手にされず、陽の目を見るのに長い時間がかかってしまったという。


しかし、前述のセルフパブリッシングならば、費用は「ほぼ0円」で電子出版をすることができる。

誰でも低予算で出版することができるこのサービスは、出版社を介さずに「個人」が「ベストセラー作家」になることも可能だ。

このセルフパブリッシングが、今日本の出版業界にパラダイムシフトを起こしている。

電子書籍市場は2014年で1,411億円、2019年には3,400億円市場になるといわれており、日本ではまだ始まったばかりだが、Amazon、Kindle、楽天koboなど、個人に門を開いた電子書籍のプラットフォームも次々に発表され、セルフパブリッシングは今後ますますの注目を集めるだろう。


そんなセルフパブリッシングをいち早く利用し、わずか半年で大手出版社からの紙書籍化にこぎつけた素人サラリーマンが居る。

名門、早稲田大学を卒業し、風俗店の店長になるという異例の経歴を持つ彼は、自身の半生をテーマにした作品をセルフパブリッシングで出版した。

その反響は凄まじく、Amazonランキングノンフィクション部門で2位を記録。

9月30日に紙書籍として発売されると、Amazon新着ランキングノンフィクション部門で1位を記録した。

何故彼はセルフパブリッシングをいち早く取り入れることができたのか。

それは、彼が日本社会に抱いていた疑問が要因となっている。


先にも述べた『永遠のゼロ』や、『佐賀のがばいばあちゃん』なども、持ち込み時点では門前払いされている。

社会に求められる良い作品であっても、こうして陽の目を見るまでに長く埋もれてしまうケースは多く、陽の目を見ることなく埋もれてしまった作品も多くあることだろう。

これは出版業化に限ったことではなく、日本の社会すべてに当てはまる。

例えば音楽業界。曲やデモテープを山ほど持ち込まれるが、そこからデビューできることなどは非常に稀だ。

日本を代表するロックスター矢沢永吉ですら、持ち込んだ曲をその場でボツにされたことがあり、ちなみにその曲は、あの有名な『アイラブユーOK』だというのだから驚きだ。


評価や判断をする人の見る目によって、多くの才能が生まれ、そしてそれ以上に多くの才能が埋もれてきた。

一般社会においても、才能が活きるか死ぬかは上司や周りの環境によって大きく左右される。

このように、限られた評価で才能が埋没することに対して、彼は違和感を感じていたという。


そういった、ごく一部からの評価を受ける環境と真逆の位置づけにあるのがインターネットだ。

不特定多数の人たちが、思い思いに、そして好き勝手に評価をするネット社会。

一定の範囲でしか評価されない場ではなく、より多くの評価者がいる中で、多種多様な評価をされる環境。

そういった環境が、才能を埋没させない有効な手段であり、出版業界でそれにあたるものがセルフパブリッシングであると考えた彼は、見事にヒット作を生むこととなった。

人脈も資金もない個人が、Amazonや楽天といった大きな市場で自分の作品を出すことができる。

例えるとするならば、個人という株を株式市場に新規上場する"個人株のIPO"だ。

海外ではイギリスの主婦がオンライン小説で発表した『フィフティズシェイズオブグレイ』が大ヒットとなり、アメリカで映画化されるまでに至った例もある。


電子書籍市場の成長や、個人が利用できるプラットフォームの増加。

日本でも今後広まっていくであろうセルフパブリッシングは、新たな才能が開花する場所として、日本社会がより豊かになる大きなキッカケとなり得るのではないだろうか。



【関連リンク】

電子書籍市場規模、19年度は14年度の倍以上の2,900億円規模へ

「学歴を得ただけでは何も変わらなかった」衝撃のノンフィクション『早稲田出ててもバカはバカ』

(文=STORYS.JP編集部・阿部仁美)