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父の想い - 時を超えるラブレター -

2014年06月20日 23時06分 JST | 更新 2014年08月18日 18時12分 JST

W杯日本代表初戦に国中が熱狂した6月15日。この日は父の日でもありました。

一家の大黒柱としていつも家族を支えてくれている父に、普段照れくさくて出来ない感謝の気持ちを表す日。

「父は背中で語る」という言葉があります。多くを語らない父親に、時におびえたり、いらだったり、不思議に思ったりした経験は誰しもあるでしょう。世の中には、父親の顔なんて見たくないという人もいます。

しかしどんな時でも、父親というのは、子供を、奥さんを、家族を見守っているものなのかもしれません。

「言葉に出さなくても、どこかで父の想いは伝わる。」

そんなことを感じさせてくれる一つの物語があります。

これは、不器用で頑固者、いつもリビングで相棒のショートホープを吸っていた父が残した一枚の紙と家族の物語。

時を超えるラブレター

筆者の家庭は父と母と筆者の三人家族。本当に仲睦まじかったという家族の中で、筆者は一つだけ不思議に思っていたことがあったという。

それは「なぜ母は父を選んだのか?」という疑問。

母はしゃきしゃきのしっかり者で人気者。

父は不器用でとっても頑固者。

母の男性遍歴を聞く限り、不思議な結婚のように筆者には見えていた。

筆者が20歳半ばを過ぎた頃、父はガンで亡くなった。

一枚の紙を見つけたのは、父の遺品整理をしていた時のことだった。

仕事上、動き回ることが多い父は、

だいたいの所持品に年季が入っているのですが、

財布だけはほぼ新品のようにきれいでした。

...どっかで見たことあるなあ。

その財布は何年か前の父の誕生日に僕がプレゼントしたものでした。

大事に使っていてくれたんだと思うと、

何やらうれしいようなさみしいような複雑な感情に見舞われましたが。

何気なく中を覗くと、1つだけ見慣れないものが入っていました。

真っ白な2つ折のカードのようなもの。

何だろう?と、母と2人で開いてみると...

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○○さん

いつまでも初めて出逢った時の心を忘れないで、

私を愛してください!

○○より

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母の目には涙が溢れていた。

それは30年近くも前に、バレンタインデーに母が父に贈ったラブレターだった。

"「あの人こんなものまだ取ってたん、もう。」"

言葉ではそう言いながら、母はとてもうれしそうにその手紙を握りしめていた。

父にとって大事な宝物だっただろうその手紙は

30年の月日が流れた今でも、傷ひとつなく、きれいなままだった。

「なぜ母がこの広い世界でたったひとり父という人を選び、生涯を共にしてきたのか?」

この瞬間、筆者はずっと疑問に思っていたことの答えに、少しだけ気づいたのだった。

〜エピローグ〜

それから僕は東京に戻った。

実家に母ひとりを置いてきてしまったため、

心配でしょうがなかったし、実家に戻ろうかとも考えた。

そんなある日、母と電話で話しているとき、母はこんなことを言った。

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あたしね、もうさびしくないよ。

毎日何をしてても、あの人を感じる。

朝起きてでかけるとき、あの人が明るく送り出してくれる。

疲れて帰ってきたとき、あたたかく迎えてくれる。

だから最近おうちに帰るのがすごく楽しみ。

あったかくて、とってもやさしい時間が流れる。

あたしは大丈夫。

何かあればきっとあの人が助けてくれるから!

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何故だかこのとき僕もすごく安心したのを覚えている。

東京でもうすこしだけ、がんばろう。

素直にそう思えました。

30年前のラブレターが、時を超えて今僕らを包みこんでくれた。

時間も、距離も、ましてや生死という概念さえも、

どうやらこの2人の邪魔はできないようだ。

互いを想う2人を見て、

僕はここに生まれてきたことを心から感謝した。

そして、感じた。

結婚っていいものなのかもしれないな、と。

不器用で頑固者だった一人の父親は、言葉で語らずとも、今も確かに家族を繋いでいた。

時を超えるラブレター

(文=STORYS.JP編集部・川延幸紀)