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妊娠・出産は「新たな命の誕生」という奇跡。その陰に隠れた、"奇跡になれなかった命"の存在、知っていますか?

2015年11月06日 21時02分 JST | 更新 2016年10月28日 18時12分 JST

10月16日より、綾野剛さん主演のTBS系金曜ドラマ『コウノドリ』がスタートしました。

ドラマの舞台は産婦人科。生命誕生にかかわるさまざまなドラマが描かれます。

原作はモーニング(講談社)に連載され、人気となった同名コミック。

妊娠・出産は、当人の人生の中では1番といっても過言ではない出来事。

でも、そこに関わる人たち以外には、案外注目されないことでもあります。

自分も、お母さんの"出産"を経て、今ここに居るのに。

妊娠・出産は、「新たな命の誕生」という奇跡。

そしてその多くは、「輝かしい美談」として取り上げられます。

その美談の裏には、奇跡になれなかった「陰」の部分がたくさん存在してるにも関わらず。

陰のストーリーは、滅多に語られることはありません。

「陰」の実態は、経験した人にしか分からない。思い出すのも、語るのもつらい。

だから私たちは、陰の存在にあまり気が付いていないのかもしれません。

『コウノドリ』で描かれるのは、そういった陰の部分。

見た人が、"命"について考える。そんな機会を与えてくれるはずです。

誰でも自由に自分のストーリーを投稿できるサービス「STORYS.JP」にも、

実体験に沿って書かれたハイリスク妊娠のストーリーがあります。

投稿されるやいなや大反響となったこのストーリー。

「ハイリスク妊娠」という言葉、皆さんはご存知でしょうか。

産婦や胎児が病気になったり、死亡する可能性が高いものを指す言葉です。

(※参考:http://okguide.okwave.jp/guides/71951

病院からの受入れ拒否、母体のリスク、

無事に誕生する確率は2億分の1という壮絶な数字。

「3つ子」を授かった女性が伝えたいこととは・・・・・・

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妊娠が発覚したのは、著者が27歳のとき。

夫婦共働きで、結婚してから1年が経ったころでした。

「一卵性の双子ですね」

医師からそう告げられ、双子の妊娠に喜んだのもつかの間、

その病院では双子の出産ができないと告げられてしまいます。

本来は1人分の部屋に2人が存在している双子の出産は、帝王切開の確率が約9割、早産の確率が約8割。

それらの設備が整った病院でなければ出産することができないのです。

著者が住む市には設備の整った病院がなく、

紹介された大学病院は、バスと電車を何度も乗り継がなければならない場所にありました。

出産する場所なんて、どこでも選べる。そう思っていたのに。

出産できる病院を探すも、「双子」というワードを出すと、

ほとんどが「受入れできません」という回答でした。

やっと受け入れ先の病院が見つかり、一安心の著者。

名付け辞典を購入し、我が子との対面を心待ちにしている旦那さん。

しかし、そんな穏やかな幸せも、長くは続いてくれませんでした。

妊娠11週のエコーに映っていたのは、なんと「3つ子」の胎児。

やっと見つかった病院から、「3つ子の出産はできない」と告げられ、

また病院探しが振り出しに戻ります。

双子の誕生を楽しみにしていた夫も、3つ子という宣告に心の整理がつかない様子でした。

それでも、3人分の母子手帳をもらいに行った著者。

紹介された病院が受入れ可能ということ、

そして、オーストラリアで報じられた一卵性の3つ子の出産のニュースに勇気づけられ、

新たな病院で検診を受けました。

そこで初めて知らされた、受入れ体制の実態。

病院で受け入れてくれるのは、母体と一人の赤ちゃんのみ。

残る二人の赤ちゃんは、別病院での受入れになる、ということでした。

赤ちゃんの受け入れ態勢が整っている病院は、ごく限られた数しかありません。

出産後、遠く離れた病院に母乳を届けに行かなければならない。

退院した赤ちゃんの面倒を見ながら、遠い病院に通うなんてできるのだろうか。

3つ子を育てながら、仕事を続けることはできるのか。

妊娠して初めて、自信を無くしたといいます。

追い打ちをかけるように、発覚した「一卵性」という事実。

1人の部屋に3人が居る状態で、胎児の血液の偏りを防ぐために、レーザーでの手術が必要だと告げられます。

そして、その病院では手術ができないこと。

それができる病院は、通うのに1時間以上かかるハイリスク妊婦専門の病院だけでした。

仮に出産できたとしても、普通のお母さんが授かれるような、

元気な赤ちゃんが望める可能性は限りなく低く、

なんらかの障害が残る可能性もあるということも告げられます。

何度受け入れ拒否されようと、双子ではなく3つ子であると発覚しても、

元気な3つ子が授かれると、そう思っていたのに・・・・・・

まだ27歳という若さの著者。

3つ子の命を諦めて、次の妊娠を考える気持ちもありました。

それでも出産を諦めなかったのは、普段は著者任せの夫が言った、

「3つ子の顔が見たい」という言葉を聞いたからでした。

改めて出産の覚悟を決めた著者。

もう何件目かもわからない病院で、改めて出産の準備を進めました。

死産でも無事に生まれても、学会ものといわれるほどの稀なケース。

胎児だけでなく、母体にも大きなリスクがあることが伝えられます。

元々3つ子の妊娠で腎臓が弱っていたので、

腎不全に陥る可能性があるということ。

子宮破裂で子宮全摘出になる可能性があるということ。

3人分の重圧がかかり、血栓ができるかおしれないということ。

そして、その血栓が肺に入ってしまった場合、

「母体死亡」という可能性も出てきてしまうこと。

「母体死亡」という文字に、言葉を失う夫。

病院から勧められたのは、「中絶」という道でした。

双子という診断が、3つ子になるなんて思っていなかった。

受入れ可能な病院が限られていること、

受け入れられた先に、受入れが拒否されてしまうことがあるなんて思っていなかった。

県内で1番大きな病院から「中絶」を勧められるなど思っていなかった。

日本全国探せばあるかもしれない病院。

でも、受入れを期待して、それを裏切られるのは怖かった。

見知らぬ土地で一人で入院することも、

障害の残る可能性が高い子供を3人も産む勇気も、気力も、もう残っていなかった。

たどり着いた答えは、中絶でした。

しかしハイリスク妊娠は、中絶すら安らかにしてくれることはありません。

中絶を勧めたにもかかわらず、

病院では中絶が禁止されているとのことで、また別の病院への転院を余儀なくされます。

中絶も、手術ではなく普通の出産と同じ方法で行われます。

つまり、妊娠16週の著者に、無理やり陣痛を引き起こすということです。

出産経験の無い著者。

出産のイメージができていれば、中絶は断固拒否できたかもしれない。

のちにそう語るほどの、激しい痛みが伴う中絶となりました。

麻酔を使うといきむことができなくなるので、麻酔もない。

我が子に会えることを支えに陣痛に耐える出産とは違い、

その痛みに耐えた先には何もない。

全員が逆子という状態で迎えた中絶の日。

母体が最優先。赤ちゃんたちの原型をとどめることはできず、

ただおなかの中から引きずり出されるだけでした。

あたたかいベッドも、母親との対面もない。

子供たちの行先は・・・・・・。

3枚の死亡届の提出と、提携業者による火葬。

業者から渡された領収証には、「○○汚物処理所」という社名。

それはあくまでも業者の名前であり、子供たちはきちんと火葬された。

頭の中ではそう分かっていても、心が追いつきませんでした。

深い罪悪感と傷を抱え、今度はなにがあっても中絶はしない、と

そう心に決めた著者でしたが、その「今度」は、二度と訪れることはありませんでした。

6週間の休暇を経て職場復帰をした著者。

夫の職場も新しくなり、月に1度の休みすらなく、

人手が足りず、家に帰らない日も増えていったそうです。

1年が経過し、子供がほしいという気持ちはあったものの、

多忙な夫は「しんどい」「眠い」ばかり。

著者の体も、子宮は回復していましたが、弱っていた腎臓はいまだに良くならないままでした。

検査の結果はIgA腎症。

(参考:http://www.nanbyou.or.jp/entry/41

もしかしたら、この治療と妊娠が同時進行になるかもしれない。

中絶がIgA腎症の原因ではありませんが、

罰が当たったのかもしれない・・・・・・著者はそんなことを考えたそうです。

そして入院をきっかけに、夫婦の絆にヒビが入ってしまうことになります。

入院準備中、たまたま見かけた映画のチケットの半券。

夫の趣味ではない、その映画のチケットに違和感を覚えた著者。

夫の財布を確認すると、出てきたのはシティホテル宿泊の領収書。

そして、某有名ラブホテルチェーンのメンバーズカードでした。

産まれてくる3つ子のために、家に帰れない日も多いほど一生懸命働いていた夫。

良くならない著者の体。

浮気をしたのはほんの数回で、ほとんどは本当に仕事だったという夫ですが、

著者は、その言葉を信用しきれませんでした。

話し合いの末、離婚することとなった2人。

改めて思い知らされた、

3つ子の誕生を待ち望んでいた夫の気持ち。

自分のことばかりで、夫の悲しみに寄り添えていなかったことへの後悔。

離婚から3か月後、著者の元夫は浮気相手とできちゃった結婚をし、

その話にショックを受けた著者でしたが、

そんな著者を支えてくれる人と縁あって、1年後に再婚。

今では、一児の母となり、ずっと望んでいた「幸せな家庭」を守っています。

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27歳という若さで経験したハイリスク妊娠。

初めて知った医療の現状、社会の現状。

健康でも若くても、誰にでも起こりうるリスク。

万全ではない医療環境。

リスクを乗り越えて出産しても、無事に健康な子が産まれるとは限りません。

知っておくだけで、回避できるリスクも、救える命も増えるかもしれません。

妊娠中も、出産後も、なにがあるか分からない。

でも私たちは、「新たな命の誕生」という、いくつもの通過点の中のひとつにしか注目していません。

誕生するまでのこと、誕生してからのこと。

もっと知っておくべきことが、もっと見るべき部分が、この世界にはたくさんあります。

そして、無事元気に産まれてくれた命や、今ここに居る自分たちが、どれだけ奇跡的な存在なのか。

当たり前のようで見失いがちな奇跡を気づかせてくれるストーリー。

たくさんの人に、思いが届いてくれますように。

≪関連リンク≫

『5年でハイリスク妊娠、中絶、離婚、再婚、出産を経験した私が伝えたい4つの事』: http://storys.jp/story/7157