発達障がい児を抱えて買い物をする親の気持ち-『息子は自閉症。ママのイラスト日記』(19)

「このまま置いていってしまおうか―...。」ハッと我に返り、涙がこぼれました。

自閉症児の息子、こもたろがもっと小さいころ。

日々の生活の中で、一番しんどく大変だったことがありました。それは買い物です。こだわりは強いし、思い通りに動いてくれないし、パニックにはなるし。

なるべくは主人がいる土日に、私が一人で買い物に行くようにしていましたが、それだけでは済まない時もあります。急遽、必要になり買いに行かなくてはいけないものがあったり、土日に用事があってそもそも買い物に行けなかったり。

発達障がい児を抱えていると親もしんどいです。もちろん、本人が一番つらいのは分かっています。でも一緒にいる親だってつらい。違う意味でつらいのです。

多くの方はパニックになる息子を見ても怪訝な顔はされますが、なにか事情があるのだろうと関心を持たずに通り過ぎます。でも中には純粋な親切心からか私の息子への接し方についてご忠告をいただくことがあります。

普段ならご忠告をありがたいと思える心のゆとりがありますが、パニック中の息子を持て余しているときには、お心づかいに感謝するよりも、孤独で不安な気持ちに陥ることがあります。心の中では「早く買い物終われ終われ終われ終われ」と思っていました。

「すみません、すみません」と下を向いて謝りながら、早々に買い物を切り上げて帰宅。買い物後のこのどうしようもない虚脱感。買い物って私にとってはちょっとしたストレス発散といいますか、楽しかったものだったのですが、疲労困ぱいし、家にいても何もしたくない状況に陥っていました。

正直、買い物なんて行きたくなかった。でも行かなくちゃいけない時だってある。

それにずっと逃げて、大きくなってから手が付けられなくなるより、本人にだってより小さい今のうちに買い物を経験させて少しでも慣れてほしいと、本当にこれは挑む気持ちで、買い物へ行っていました。

この頃は本当につらくて大変で何であえてこんなことしてるんだろう...と思った時期も。叫びたくなる時もありました。今ここで叫んだら、どんなにスッキリするか。でも、グッと堪えました。

こんなことも思いました。この子は今どこに住んでいるのか、親の名前も、自分の名前すらも話せない。恐ろしい考えが脳裏をよぎりました。

「このまま置いていってしまおうか―...。」

ハッと我に返り、涙がこぼれました。今のは私の本当の気持ち?なんて恐ろしいことを思ったのだろう。私は母親なのに。この子の母親は私しかいないのに...。

この時は余裕がなかったんでしょうね。

あれから月日は経ち、今7歳になった息子。私が買うものに迷ってあちこち行き来しても文句も言わずついてきてくれ、欲しいものがあっても我慢できるようになりました。

あの時のあの経験は決して無駄じゃなかったと今は思えます。

泣き叫んでいる子がいても、何もできず立ち尽くしている親を見かけたら、「うるさい」「迷惑」と思うかもしれません。それはそうだと思います。無理もないことだと思います。私も本当に申しわけなく思っています。

ただ、出来ればちょっとだけでいいので「うるさいけど...もしかしたら頑張っているのかな」と思っていただけると私たちは本当に救われます。皆さんのそのちょっとしたお気持ちが、親の追い詰められた気持ちの「退避スペース」になるのです。どうかどうか、お願いします。

~続く。

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