マスク・ショック――『スコットランド人夫の日本不思議発見記』(1)

今回からこちらに書かせていただくテーマは「夫目線で見た日本(人)」です。先にお伝えしておきますが、夫である<ダッダ>は、いわゆる「一般的な外国人夫」とは根本的に異なります。

はじめまして、イギリスはスコットランドの片田舎でひっそりと生息している「ホリー」と申します。

思春期寸前の年子の娘と、清々しいまでに自由なスコットランド人の夫に振り回される日々を送っています。

皆様、どうぞよろしくお願い致します。

今回からこちらに書かせていただくテーマは「夫目線で見た日本(人)」です。

先にお伝えしておきますが、夫である<ダッダ>は、いわゆる「一般的な外国人夫」とは根本的に異なります。

しいて例えるなら「激動の昭和を生き抜いたオジサン」(頑固・融通が利かない)とでも言いましょうか。自分の為に地球は回っていると本気で信じている「残念な外国人夫」であります。故に彼のエキセントリックな言動を「外国人論」として鵜呑みにする事はお勧め出来ません。「世界の片隅には、こんな風に日本を捉える人間もいるんだな」と、優しい目で受け流して頂けるとありがたいです。

今回は、そんな夫に激しく驚かれた(そして、なぜか怒られた)「マスク」についてのお話をお届けしたいと思います。

5年前の冬――私と長女チハナ(当時7歳)が風邪を引きました。とにかく、咳が止まらない・喉が痛いと言う事で日本から大量輸入したマスクを初めて使用する事にしました。マスク姿で鎮座する我々を目撃した夫。

その顔が歪むまでに数秒も掛かりませんでした。たじろぎならも夫はこう続けました。

「そんな格好悪い姿、誰かに見られたらどうスルの!?恥ずかしいカラ今すぐ取っテ!」

確かに欧米でマスクを着用している人間を映画の中でさえも見た事がありません。夫にとってもこれは奇妙な光景だったのでしょう。ですが、「喉が痛い」「咳が止まらない」「モモカ(次女)にうつる」を阻止する為にはやはりマスクは欠かせません。私は咳き込みながらも懸命に夫の了解を取ろうとしました。ですが、彼の返答はこうでした。

「マスクは空気が悪い所でする物デス!」

「咳で出したウィルスをもう一度飲み込む様なものデス!」

なるほどと、思わず私はうなりました。「ウィルスを飲み込む」という表現を今の今まで想像した事がなかったからです。夫の主張はなんとなく理解は出来たのですが、「マスク」を使う事は日本人のエチケットだと言う事を知って貰いたかった私は、得意げにこう言いました。

「風邪をひいた時のマスクは他人への感染を防ぐ為にするのだよ」と――。

だがしかし、夫の返答は想定外のものでした。

「風邪はうつる事で免疫力を高めていくものデス!」

夫はマスクをさせないが為に、家庭内感染までも推奨する気らしいのです。そんな理不尽な理由ではさすがの私も納得がいきません。私は負けてはいられないと、「日本人のマナー」について懇々と彼を諭しました。「日本人の常識」を持ち出されては、さすがの夫も譲歩するであろうと思ったのも束の間、彼が最後の切り札を持ち出しました。

結局の所、最後の最後に持ち出した「マスクはマイケル・ジャクソンみたいだからダメ」と言う彼の持論が最も説得力がないものと相成りました(マイケル・ジャクソンファンの皆さん、ごめんなさい)。

しかしながら「郷に入れば郷に従え」。自宅以外で私がマスクを使用する事は一切ございません。

~続く。

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