看板・ショック-『スコットランド人夫の日本不思議発見記』(23)

誰ひとりとして、看板を読める人間がいなかったので、結局、3人は野良猫にがっつりエサを与えてしまったらしいです。

今から8年前――

日本に帰省した際、夫が幼い娘たちを連れて、近くの公園に遊びに行きました。

当時、娘たちは5歳と6歳で、日本語は話せるものの、読み書きに関しては、かろうじて「平仮名が読める」程度でした。

夫も結婚前に日本語を勉強していましたが、その日本語力は娘たちと比べても劣る、申し訳程度のものでした。ゆえに――

誰ひとりとして、その看板を読める人間がいなかったので、結局、3人は野良猫にがっつりエサを与えてしまったらしいです。

娘たちの言い訳としては「看板にネコさんの絵が描いてあったからいいと思った」でした。

唯一の大人である夫は恥ずかしかったのか、その看板について多くを語りませんでした......。

そして、スコットランドへ帰国する前日、夫は今度は娘たちを2駅離れた大型児童館へと遊びに連れて行きました。

私はややイヤな予感がしていたのですが、意気揚々と帰宅した娘たちから、その予感が的中したことを聞かされました。

私は恐る恐る娘たちに聞きました。

「ええっと......今日はダッダ、何をやらかしたのかな?」

すると娘たちは、事のあらましを興奮気味に教えてくれました。

「いろんな置物が並んでいた棚があってね、そこに――

っていう張り紙があったから、2人で触ってたの。そしたら突然、ダッダに怒鳴られたの!」

「ここに『さわってみてね』って書いてるからさわってるんだよって言っても、ダッダが信じてくれなくて、近くにいた係員さんが飛んで来たんだよ」

私は思わず『オー!ノー!』と、心の中で叫びました。

この出来事に対する夫の弁明は、こうでした。

「ああいう所に貼ってアル注意書きは、大抵『行動抑止』を呼びかけるものデス!」

『ネコ看板事件』直後だったので、夫もデリケートになっていたのかも知れませんが......

外国人観光客が珍しくなくなった昨今、どんな小さな張り紙にも、外国語表記やわかりやすいイラストの添付が必要だと感じたものです。

(終わり)

★コラム著者の4コマコミックエッセイ