便座・ショック――『スコットランド人夫の日本不思議発見記』

夫と娘達が初来日した2006年。特に夫にとっての「日本」は驚きの連続だったらしく、毎日新たな発見を私に報告してくれました。

2006年――。長女3歳、次女2歳の秋、私は渡英後初となる里帰り帰国を果たしました。それはイコール、夫と娘達の初来日。特に夫にとっての「日本」は驚きの連続だったらしく、毎日新たな発見を私に報告してくれました。

「駅やバス停で皆が綺麗に整列してイタ!」

「電車が3分おきに出テル! しかも時間通りにクル!」

「店員がずっと笑顔でトテモ丁寧!」

「ソシテ!!」

夫は目を輝かせて言いました。

夫の興奮ポイントがあまりに斬新過ぎて愉快でしたが、何にせよ、彼のお陰で「日本のおもてなし文化」の素晴らしさを改めて痛感したものです。同時にスコットランドの適当さ加減・横暴ぶりを思い出した私は、ついモヤモヤとした感情を抑えられなくなりました。

「そうだな。スコットランドの電車は遅れて当たり前な上、定位置で停車しないから、乗客はホームに横一列となって扉を狙っているもんな。そして、スーパーの店員と言えば偉そうな上、仕事よりもおしゃべりに夢中ときたもんだ。あれで働いていますと言われてもこっちは納得がいかないよ」

日頃の鬱憤がつい次から次へと口を衝いて出てくる私。しかしそれを聞き、不愉快になったのであろう夫が猛反撃に出てきました。

「ハァ? 日本だっていろいろと悪い所がアリマス! アノお酒の自動販売機は何デスか!? 子供も簡単にアルコールを購入出来ちゃいマス!」

それを言われると、ぐうの音も出せません。黙る私に勝利を確信した夫は、得意顔で続けました。

「それにジュースの自動販売機が街中に溢れかえってイル! アレでは強盗に持って行ってくれと言っているようなモノだ!」

私「いや、そこまで日本の治安は悪くない」

「そしてコレ! タバコのフィルターに色が付いていナイ! コレではどちらが吸い口なのか分からナイ!」

私「バカなのか?」

「そして何よりもワタシが一番懸念を示すのは、あの便座デス! 水場で電気を使うなんて、日本人はクレイジーダ!!」

「日本のテクノロジー、ナメんなよ」と叫びたい衝動に駆られながら、エンジニアである夫言うところの「漏電の危険性」について、何故かその後、懇々と説教された私。「いや、私にウォシュレットを廃止に追い込む権限などないのですが...」と訴える我が心の声は、夫には届きませんでした。

その後も、居酒屋で自動的に蓋が開き、勝手に水が流れるトイレに対し「意味が分からナイ」と散々文句を垂れていた夫ですが、スコットランドに戻って数日後、夫が私に報告してきました。

「同僚にウォシュレットを使った事を言ったら、スゴク羨ましがられたヨ☆」

「こっちでもウォシュレット売ってるらしいヨ☆ ネットで探してあげるヨ☆」

そう言って、夫がウォシュレットを検索し始め早10年――。未だ我が家にウォシュレットは設置されておりません。

~続く。

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