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朴槿恵を「ニョン(bitch)」と呼ぶ人にはわからない「朴槿恵退陣」の意味

2016年12月07日 00時14分 JST | 更新 2016年12月07日 00時14分 JST

ソウルだけで170万人、全国合わせて232万人が集まった12月3日の大集会の風景は、朴槿恵政権に対する人びとの抵抗が、国内の政治状況を超え、世界との強いつながりをもっていることを示すものであった。

人びとが叫んだ「財閥も共犯だ」というスローガン、ろうそくをもった外国人参加者のすがた、海外から送られた応援メッセージなどが示すように、事件の真相が明かされ、集会が度重なるたびに、「反独裁」「反腐敗」「反財閥」などの多様な抵抗のフレームが浮上し、それに共感・賛同する海外からの声が集まっているからである。

しかしこの驚くほど平和的で強力な抵抗が世界史的意味を獲得していく一方で、驚くほど古くて無意味な動きが依然としてみえる。それは、朴大統領が「女性」であることに執着し、「ミソジニー」のフレームで彼女を非難する人びとである。

その認識は、さまざまなかたちで表れている。

一部のミュージシャンが朴大統領の「性別」と「身体」をねじったラップを発表したり、朴大統領が独身女性であることを揶揄するポスターが貼られたり、集会の男性参加者が「朴槿恵〇〇ニョン(bitch)!」を叫んだりする。ネット空間をみると、政権を倒すという「大義」を理由に、それに賛同する人びとが少なくない。

そもそも「ミソジニー」の問題は、昨今の政治スキャンダルが起きる前から、深刻な社会問題として注目されていた。就任演説で「女性や障害者、その他の誰もが安心して暮らせる安全な社会」を強調した朴政権の体制のもとで、逆説的にも「ミソジニー」がかつてないほど強まり、そのなかで多くの女性が、日常生活やネット空間などで大きな不安と恐怖、苦痛を感じてきたのである。

なぜ「女性」大統領の時代に、このようなことが起きるのか。

多くの人がこう問いつづけたが、そもそも問いの前提が間違っていたので、答えが出るわけもなかった。朴大統領が「女性」であることは、この問題とは何の関係もないからだ。

結論からいえば、「ミソジニー」を促したのは、「朴槿恵型ファシズム」である。

父朴正煕元大統領に対する宗教的熱狂とノスタルジーを背負って大統領になった朴大統領は、国会の機能と役割を否定し、法と制度の上に君臨しながら、極端な愛国主義にもとづいたポピュリズム政治を行った。

掌握した主流メディアを使って、格差と不況が生んだ人びとの怒りと不満を政治的に動員する一方で、政権に反対する人や勢力にはあらゆる手段を用いて組織的弾圧を行った。目の前で304名の命が沈んでいった「セウォル号」事件の真相究明を求める遺族さえも、この体制のもとでは「国益を損なう不純な勢力」にすぎなかった。

同時に、社会に「不寛容」が急速に広まった。特定の世代、性別、地域、国籍、性的指向に対するに嫌悪や蔑視が、「逆差別」「不平等」などの概念で正当化され、さまざまな葛藤を起こした。ネット右翼を中心に広まった「ミソジニー」は、この典型的なファシズム的現象の一つなのである。

したがって、いくら朴槿恵を「ニョン(bitch)」と呼びつづけても、その体制に亀裂を与えるどころか、むしろ自ら動員されることになる。

「ミソジニー」は、それ自体で朴槿恵体制の産物だからだ。

朴槿恵の退陣は、「朴槿恵型ファシズム」とその産物すべての退陣でなければならない。