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阪神・淡路大震災20年 何も変わらない「死」の群像

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■情報インフラは発展したけれど...

阪神・淡路大震災が起きた20年前というと1995年。つまり「Windows95」が発売され、インターネットの本格的な普及がスタートした年である。だから、震災が起きた1月当時は、まだインターネットによる情報流通は存在しなかった。被災地における情報は、口コミと、ラジオ・テレビ・新聞によるメディアに頼るほかなかった。

私たちは、ラジオに耳を傾けて被害状況の把握に努め、目を皿のようにして新聞の文字を追って知人の安否を調べ、必要な支援情報を自分の手で発掘する作業に明け暮れた。被災者は情報に飢えていたのである。

2011年の東日本大震災では、まったく状況が違っていた。津波の様子はSNSを通じて瞬時に世界中に発信された。政府や自治体のホームページには多様な情報があふれ、避難所に行くと大量の支援文書が山積みになっていた。

もっとも情報がきちんと届いていたかどうかは別問題である。的確な情報にアクセスする能力や、あふれる情報を取捨選択するリテラシーがないと、結局、情報には辿り着けない。「情報格差」が新たな課題となった。また、原発に関する情報は意図的に隠され、それがパニックの引き金になった。さらに個人情報保護が人と人の絆を阻んだ。「適時に的確な情報があれば、人々は正しい選択ができる。」これは民主主義の基本。こうしてみると、東日本大震災では、情報インフラの発展という光の面と、情報に基づく民主主義の未成熟さという陰の面を、見事にあぶり出したように思える。

■明らかにされない、それぞれの「関連死」

一方、何も変わらないのが「死」に対する向き合い方だ。

阪神・淡路大震災6434人、東日本大震災1万8483人。それぞれの災害の死者・行方不明者の人数である。私は、この数値を見るたびに違和感を覚える。理由は3つある。第1は、死は一人ひとりについて悲痛な事実があり、本来それぞれに向き合うものであって「数える」ものではないと思うからである。第2に、無機質的に死者が数値化されることにより死の本質が隠れてしまうように感じるからである。第3に、死者数を災害の規模を計るモノサシとする傾向があるが、災害の実相は必ずしも死者数に比例するわけではないと思うからである。この傾向は、20年前も、今も、まったく変わっていない。

今から10年前、兵庫県西宮市にある阪神復興住宅で、63歳の男性が白骨化して死亡しているのが見つかった。男性は阪神・淡路大震災で被災し、仮設住宅のあと復興住宅に移り住み、その後に失業し、一人暮らしとなった。家賃を滞納し、強制執行のために室内に立ち入ったところ発見された。亡くなってから発見されるまで約1年8か月。震災から10年経った時期における孤独死の実際である。復興住宅での孤独死数は864人とされる。それぞれの死の実相は明らかになっているのだろうか。

東日本大震災では、関連死が3194人にのぼると報じられた。こうした統計数値はあるが、不思議なことに一人ひとりの関連死の背景や実情は調査されていない。災害関連死は、災害で助かった命が、その後の施策の不足によって落命したもので、人の手で防げた「死」である。どうすれば関連死を防げるのか、本気で取り組んでいるのか。日本弁護士連合会は、関連死の個別調査を強く求めている。

■一人ひとりの「死」に向き合う情報のあり方を

額田勲著『孤独死-被災地神戸で考える人間の復興』にはこう書かれている。「効率を求めて動いていく高度情報社会では、おそるべき情報の消費量がスピードとリズムを作りあげて、その速さで人間もどんどん変質していく(中略)日本社会の不幸はすべからくすぐに忘れ去られる構造になってしまって、大災害にかかわる数々の悲しみや苦しみは、独特の社会システムの中にあっけなく埋もれてしまった。」

私は情報の発達を歓迎する。ただし、情報は人の幸せを培い、社会の発展のために存在するのだから、何よりも大切な価値である生命のために、利用されなければならない。一人ひとりの「死」に向き合う情報のあり方を考えたい。「死因究明等の推進に関する法律」は医療・科学的な見地から死因を明らかにするために2012年に新設された法律だが、それだけにとどまらず、社会的な視点からアプローチして、災害における死の実相を究明することも大切である。

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