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【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

2015年06月22日 22時40分 JST | 更新 2016年06月21日 18時12分 JST

【TABIZINEインタビューVol.13 写真家 竹沢うるま氏】

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)Aya Yamaguchi

2010年3月、世界一周の旅に出発。北米、南米、アフリカ、ユーラシアを巡り、2012年12月31日、1021日103か国を巡り旅を終えた、写真家の竹沢うるまさん。

現在発売中の「The Songlines」(旅行記)、「Walkabout」(写真集)、「Buena Vista」(写真集)では、 "旅の深い世界"に触れることができる。

今もなお「大地と人の繋がり」を求めて世界中の国々を旅し続けている竹沢さんに、旅について、また、写真についてのお話を伺った。

旅をすることは「生きる」こと

ー竹沢さんにとって「旅」とは、また「旅写真」とは何ですか?

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

旅と写真は切っても切れない関係ですよね。旅をすることは、写真を撮ることと同じことだと思っています。ある意味では「現実逃避」、ある意味では「挑戦」。

本当に色々な側面があって言い切れない部分はありますが、僕にとって「旅をする」「写真を撮る」というのは、1つの「生きる」という作業なんです。本当の意味で極限まで追い込まれたときに人間は生きるチカラを発揮する。僕は、そういう感覚が普段の生活では得られないんです。日本にいると、自分自身が持っている何かが溢れ出る瞬間って少ない。旅に行くことによって「今を生きないと!」という瞬間にたくさん出会うんです。自分の持っている「肉体的な可能性」や「精神的な可能性」が奥から引き出されてくる感覚。「旅をする」「写真を撮る」ことによって、自分自身の心の深さをどんどん追求していく。それが「生きている」という実感につながる。その感覚を得たいんです。

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

また、写真は自分の内面性を映し出します。それを人に見せることによって、100%ではないですが、言葉よりは遥かに多くを伝えることができると思っています。その瞬間から僕にとっての写真は言語であって、コミュニケーションをする上でのツールでもあるんです。

「旅」と「旅行」の違いは、向き合い方

ー「The Songlines」(以下本書)に「旅というより旅行といった方が正しいような日々...」といった表現がありますが、「旅」と「旅行」の一番の違いは何だとお考えですか?

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

やっていることは一緒かもしれない。パッケージで行くか個人で行くかでは無いんです。旅先で自分自身の内面性ときちんと対話しながら、自分にとっての異世界と向き合い接することによって、普段隠れている自分自身というものが表にでてくる。それを認めるかどうか、向き合うかどうかで「旅」と「旅行」は変わってくるんだと思います。

自分自身と向き合うかは、意識してすることではないし、「向き合わないと」と思う必要もないんです。異世界にいることで満足してしまうのか、そこから何か感じ取るのか、の差ですね。

「本当の世界」に触れる旅

ー本書の中に登場する、"世界地図を見たことが無い人々"は、自分自身を信じ、違う次元にいるからこその強みを持っていると思います。そういう方との出会いを経験された竹沢さんにとって、今の日本人とは、また東京とはどのようなものですか?

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

色々なものがバーチャルの中で動いていますよね。心の手触りだったり、痛み、苦しみ、喜び・・・そういった本質はどこにあるのかなと思います。

僕は、自分が旅をする前まで知っていた世界が本当の世界ではないということに気付いたんです。僕の知っていた世界は、誰かのフィルターを通した偏った情報、断片でしかなかった。日本を出るまでに見ていた世界は千分の一にも満たない。「世界はこうだ!」と思っていたそれは、実際に"表層"でしかなかったわけです。

誰しもが「旅」に行けるわけではないけれども、そういう人の代わりに覗いてきて、パッケージして、アウトプットして、行けなくても僕が撮る写真から何かしら得てもらえればと思っています。

スマホの中の世界では無く、手にとれる世界に立ち戻った方がいいのではないかな。もちろんいい面、悪い面両方ありますが、バランスが大切だと思います。特に若い人たちには、そういったリアルなものに触れる機会を増やして欲しいなと思う。頭が柔らかいうちに色々なものを取り込んでほしいですね。

「追体験の旅」から一歩踏み出した旅へ

ー本書の中に、情報を元にそこに向かう「追体験の旅」という表記がありますが、頭を使わずして容易に多くの情報が手に入ってしまう現代社会で、「自分らしさ」を見失わずに生きていくにはどうしたらよいと思いますか?

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

結局一歩を踏み出せていないんだと思うんです。例えば、ウユニを見たという事実ではなく、そこに辿り着くまでの過程を経験したということが大切なんですよ。ウユニはきっかけでしかない。ウユニを見たということで満足して、そこの過程を切り捨ててしまう・・・それが僕のいう「追体験の旅」です。それを見ることが目的になってしまっている。本当は、その過程を得るための理由であることが大切だと思うんです。自分自身の内面性の作業というものが欠けている気がしますね。内面性の作業がかけたものが「追体験の旅」、つまり僕の定義する「旅行」になってしまうんです。

ーまるでスタンプラリーみたいですね。

そう、でもスタンプラリーでもいいんですよ。「何故そこに行きたいのか」が大事。

長い旅を「過去」にするという作業

ー本書を読み終えた後、旅行記では無く小説を読み終えたような感覚になりました。この本を書き終えた後、竹沢さんの中で何か変化はありましたか?

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

「The Songlines」を書き終えたことで、長い旅がちゃんと「過去」になったんです。2〜3年長い旅をしてきた人は、それを過去にするのは難しい。「旅」が自分の日常になるから。出発する前は「日常」だった日本が「非日常」になるんですよね。それを「過去」にするために区切りをつける必要があったんです。「Walkabout」と合わせて書籍として出すことによって自分の中で整理されました。

未来も過去も今の積み重ねでしか存在し得ない。だから、僕は今のことしか考えていません。将来こうだからこうしておこうなんてわからない、5年後10年後のことは考えても仕方ないと思っています。自分自身も状況も変わる。ひとつずつ自分の面している「今」を積み重ねた方がいい。旅を終えてからそう思うようになりました。最終的に振り返ったときに「過去」ができている。それは旅もそう。

表現しているのは「旅人の心の動き」

ー本書と対になっている写真集「Walkabout」は、「静」より「動」の写真のほうが多い印象ですが、竹沢さんはどのような瞬間に心動かされシャッターを切りますか?

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

「Walkabout」に関しては、「動」の写真が多いですね。それは、旅の中の心の動きを躍動感の中に求めていたんだと思います。旅の間は自分の心が常に揺れ動いていて、定まるところがないんですよ。旅の感覚をパッケージしたかったので、動きのある写真になっています。

表現しているのは「旅人の心の動き」ですから、それを風景なりで人の中に投影しているわけです。「旅人の心はこんなにも揺れ動くものなんだよ。」と。

ー旅の中で意識してそういった写真を撮っているわけでは無く、自然とそういったものになるのですか?

そうですね。僕は意識して写真を撮らないように気をつけているんです。その瞬間瞬間に感じたことを正直に記録したいと思っているので、考えたり意識してしまうと、その時点でフィルターがかかってしまいます。そうすると、自分の心の記録ではなく、考えの記録になってしまうんです。自分が考えていることを記録するのか、自分が感じていることを記録するのか、その差ですね。僕は旅先で写真を撮るというのは、心の記録でありたいと思っているんです。それを実際の目で見ている風景や出会いに求めているんですよね。

ただ、「Walkabout」に関してはそうだったというだけで、次に出すものはまた違うかもしれない。それは良し悪しでは無く、「どうありたいか」だと思うんです。

「旅先」と「自分」とのギャップを感じるもの

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

ー旅先に持って行くマストアイテムは何ですか?

小説ですね。本が無いと旅できない。旅をするようになってから本を読むようになりました。

ーどういった内容の本を持っていきますか?

旅に関係あるものは一切選びません。文学作品、できれば字が小さいものがいいですね。1か月だと6冊くらい持っていきます。3年間旅をしていたとき、荷物自体は少ないんですけど、本は12、3冊ありましたね(笑)。

ー読み終えたものはどうされるんですか?

旅先で交換します。この人に渡したいなと思った人に出会うまではキープしますけどね(笑)。読んでいない本が手元に5冊ないと不安になるんです。本を読むことで日本語の繊細さに触れ、「旅先」と「自分」とのギャップができていく。それが旅に本を持っていく理由ですね。

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

(C)URUMA TAKEZAWA

竹沢さんは決して「安全圏」にいることを否定しているわけではない。「感じる力」を持っているかどうか。それができてさえいれば、どこにいてもいいのだと話してくれた。ただ、そういったものを捉えやすいのが"旅先"だということだ。

何も海外に出ることだけが旅では無い。隣町でもいいのだ。そこに、不安、決意、喜び、心の動きがあればそれでいい。それを素直に受け止めることで、「今を一生懸命に生きることの大切さ」に繋がるのだろう。

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「竹沢うるま」プロフィール

【インタビュー】僕にとっての旅は「生きる」という作業/写真家 竹沢うるま

1977年生まれ。写真家。

同志社大学法学部法律学科に入学。在学中、沖縄を訪れて海の中の世界を初めて見て驚き、自身が見て感じたことを記録に残そうと写真を始める。その後、アメリカ一年滞在を経て、独学で写真を学ぶ。卒業後、ダイビング雑誌のスタッフフォトグラファーとして水中撮影を専門とし、2004年より写真家としての活動を本格的に開始。

2010年3月より世界の国々を巡る旅に出発し、1021日をかけて103か国を巡り、2012年末帰国。現在に至る。

代表作は写真集「Walkabout」(小学館)とその対になる旅行記「The Songlines」(小学館)。最新作は消えゆくキューバの肖像を追った写真集「Buena Vista」(創芸社)。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2014グランプリ受賞。

* Uruma は沖縄の方言で珊瑚の島という意味

■「URUMA TAKEZAWA」オフィシャルサイト

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