世界各地の人気クラフトビールを巡る旅へ

今回は、Tabletのビール通が選んだおすすめクラフトビールと共に、それぞれのビール醸造所に近い、お似合いのホテルをご案内します。

そろそろ桜も開きはじめ、春の予感がじわじわと身に感じられる頃。きれいな桜を見ながら美味しいお酒を飲んでいると、一人だろうと、同僚や家族や友達と一緒だろうと、また一層とこの季節の醍醐味が深まるもの。

海外旅行やおしゃれなことに精通したこれを読んでいるあなたには、ぜひこの機会に特別なビールと話題を持ってお花見会に登場してもらいたいところ。

今回は、Tabletのビール通が選んだおすすめクラフトビールと共に、それぞれのビール醸造所に近い、お似合いのホテルをご案内します。

桜とビールで賑わいながら、仲間と一緒にゴールデンウィークやこの夏の旅行プランをたてるのも楽しいのでは。

ANDECHSER DOPPELBOCK DUNKEL

ドイツ|アンデックス 「KLOSTERBRAUEREI ANDECHS」のドッペルボック(アルコール度 7.1%)

ソフィテル・ミュンヘン・バイヤーポスト」、アンデックスのビアガーデン(Photo: Stefan Schuhbauer)&「フラッシング・メドーズ」

ドッペルボック好きが愛してやまない、この地とこのビール。修道士が作る深みと飲みごたえのある、ドイツビールの高峰・・・。聖なる山の聖なるビールとでも言いましょうか。

Sバーンのヘアシング(Herrsching)駅から、爽やかな森林に囲まれた上り坂ルートを約1時間強歩いた先にあるのは、アンデックス修道院。バイエルンで何世紀と受け継がれてきた、ベネディクト会修道院らしいホスピタリティの伝統を、丸のままに体験できる場所です。

隣接したレストランで、キロ単位でオーダーできるシュバイネハクセをしっかりいただき、自慢のドッペルボックをデザート代りに堪能すれば、お腹も心も大満足。

ここへは、ミュンヘンからの日帰り旅行として訪れるのがおすすめ。セントラル駅からSバーンを利用すれば、アクセスも簡単です。

泊まるのは、すっきりとしたアートギャラリーのようなスタジオ式ゲストルームと、屋上のテラスバーからアルプスの山が眺められる「フラッシング・メドーズ(Flushing Meadows)」、または「ソフィテル・ミュンヘン・バイヤーポスト(Sofitel Munich Bayerpost)」のエレガントなスパとフィットネスセンターで、贅沢な食事で吸収したカロリーをそぎ落とすのもいいのかも。

TRAPPIST WESTVLETEREN 12 (XII)

ベルギー|ウェスト=フランデレン州フレテレン 「BROUWERIJ WESTVLETEREN」のクアドルプル(アルコール度 10.2%)

ウェストフレテレン修道院、「メインストリート・ホテル」&「スポール62」

世界最高のビールは、なかなかお目にかかれないもの。「ウェストフレテレン XII」は、トラピストの伝統に従って醸造量も控えめ。しかも卸売はしないということで、ビール好きにとっては伝説的存在です。

でも、努力して手に入れれば、その複雑な味わいと飲みごたえに、(単なる高度アルコールによる酔いではなく)開眼したかのような気分になるはず。

スパイス豊かなノーズで始まり、複数種の酵母から生まれた深みを感じるフルーティーな味わいへ。アルコール度の強いビールだから、フランドルの寒い夜でもポカポカでいられそう。

とは言え、ここまで訪れる際はご注意を。ゲストハウスで味見をすることは可能だけれど、ビールは電話予約後ピックアップでの販売のみ。しかも需要をはるかに下回る製造量なので、予約連絡はお早めに。

近くの町イーペルは、第一次大戦の最前線として歴史的に知られる土地であると同時に、ホロ酔いの旅行者も優しく迎えてくれる町。

全6室の「メイン・ストリート・ホテル(Main Street Hotel)」は、スタイリッシュなプチホテル。さらにプライベート感たっぷりなのは、ギステルの「スポール62(Spoor 62)」。

古い列車の駅を造り替えた客室2室のみのこの宿は、客室内もガーデンも、爽やかでコンテンポラリーかつ、ロマンティック。二日酔いでも、こんな空間ならゆったり気分良く過ごせそう。

XYAUYÙ FUMÈ

イタリア|ローマ 「BALADIN」の"カウチビール"ことバーレーワイン(アルコール度 14.0%)

「G・ラフ」、バラデンの醸造所と創設者&「ジッリ・ドーロ・スイート」

これまでこんなビールはありえなかった・・・!かもしれませんが、あるんです、最近は。

ビール醸造のマエストロと呼ぶべきマッテリーノ・"テオ"・ムッソ氏は、これまで習った「ビールの作り方」を覆すべく、泡とガスを控え、ゆっくりと味わい楽しむための"カウチビール"を提案。

彼にルールはナシ!上面発酵させて、意図的に酸化させて、スコッチウィスキーのオーク樽で寝かせることで、ピートが効いたフレーバーなったこのビール。そして上記アルコール度数も間違いではありません。

この恐るべくダークで強力なビールをひと口した瞬間に確認できるはず。しかも「バラデン」名義でリリースされているから、イタリア国外で手に入ることも。

G・ラフ(G-Rough)」も、ムッソ氏同様、真面目な表情で多様なイタリアンスタイルを混ぜ込んだ、ルールに縛られない実験的なアプローチで知られるホテル。目まいのしそうなこのビールにぴったりなのでは。

または、ローマの人混みを避けるべく、閑静な「ジッリ・ドーロ・スイート(Gigli d'Oro Suite)」に駆け込み、デザイン性高い穏やかな客室(または客室内のジェットバスに浸かりながら)心落ち着かせて味わいましょうか。

IPA

スペイン|コルドバ 「CALIFA」のIPA(アルコール度 6.3%)

「カリファ・ビールの醸造所、「オスペス・パラシオ・デル・バイーリョ」&「オテル・ビエント・10」

このところ、印象的なIPAというとアメリカ産のものが主だけれど、そのトレンドを塗り替えるべく質の高さを競い合っているのがスペインの「カリーファ」。

地元の水と麦芽にこだわり、アンダルシアならではの味わい、いわば"テロワール"を感じさせてくれるビールを作っています。

しっかりとした麦芽のフレーバーを土台に、意外にも、希少品種のギャラクシーホップとトロピカルフルーツが特徴となった、香りも味も美しいカリファのIPA。

オレゴンをはじめとするアメリカ北西部のIPAよりももっと自由で、エキゾチックでありながら温かい親しみやすさを感じる、なんとも職人の腕が光るクラフトビールです。

コルドバ中央部にあるカリファの直営パブで、小皿料理をつまみつつ、このIPAはもちろん、その他どれも上品な個性を楽しめる彼らのビールをお楽しみあれ。

カリファ醸造所から近い「オスペス・パラシオ・デル・バイーリオ(Hospes Palacio del Baílio)」は、モロッコのリヤドを彷彿とさせるムーア式建築の美しい宿。

ほろ酔いの午後を物思いに耽りながら過ごすにも、そのままお昼寝するのにも、プールでひと泳ぎして目を覚ますにもぴったり。

一方「ホテル・ビエント(Hotel Viento 10)」は、かつてのユダヤ人居住区や有名なモスク兼カトリック教会(聖マリア大聖堂)からも近く、ちょっと飲み疲れしていても、観光スポットはしっかり回れるはず。

LA ROJA -- GRAND RESERVE

アメリカ|ミシガン州デクスター 「JOLLY PUMPKIN ARTISAN ALES」のアメリカン・ワイルドエール(アルコール度 8.0%)

「タウンセンド・ホテル」、ジョリー・パンプキン・ビール(Images by @jollypumpkindetroit)&「トランブル&ポーター」

と、言ったものの、アメリカだって質の高いビールをまだまだたくさん輩出しているのは確か。例えば、"キャプテン・スプーキー ロン・J"なるニックネームを持つ天才が手がける、自由奔放でワイルドなこのビール。

"ラ・ロハ"と名付けれらたこのエールは、アルコール度高めのフランドル式。樽で最高10カ月醸造させて生まれたのは、アメリカンな土臭ささえ感じさせるファンキーな味わい。キャラメルとフルーツのノートが特徴となった、酸味のあるビールです。

もちろん無濾過で、低音殺菌もナシ。サクラやブドウの木が辺りに並ぶ「ジョリー・パンプキン」の直営パブは、トラヴァースシティのオールド・ミッション半島にあり、フワフワしながら湖畔を散策するのも醍醐味。

ほら、ミシガン湖だっていつもより綺麗に見えるでしょう?

実際にビールの醸造所があるのは、デクスター市。もちろん、ここでもサンプリング可能。デトロイトに泊まるなら、この町の新しい風をなびかせる「トランブル&ポーター(Trumbull & Porter)」にチェックイン。

工業的要素を都会的でおしゃれに利用したインテリアと、若者が集まるビアガーデンがポジティブな成長の証拠となっています。

もっと落ち着いたスタイルがお好みなら、近くバーミンガムにある「ザ・タウンセンド・ホテル(The Townsend Hotel)」は、上品でタイムレスなオプションです。

UNION JACK IPA

アメリカ|カリフォルニア州パソロブレス 「FIRESTONE WALKER BREWING COMPANY」のアメリカンIPA(アルコール度 7.5%)

「カンブリア・ロッジ」、ファイアーストーン・ビール&「グラナダ・ホテル&ビストロ」

そしてもう一つ、西海岸はアグレッシブなホップを扱うのが上手いんです。今や、相当のビール好きじゃないと飲めないようなホップ全開の味を競うのではなく、いかにバランスをコントロールできるかがポイント。

そんな中、イギリス人創業者を持つ「ファイアーストーン」は、そのルーツを強調するかのように、自信たっぷりのユニオンジャックIPAを作っています。

クラシカルなIPAの苦味は健在ながら、麦芽の甘みも見え隠れし、時に大胆なグレープフルーツ・ビール、時にカリフォルニアの立派なマツの木を思わせる香り高さを楽しめるこのビール。

アマチュアにはわからないだろう、この繊細なバランスは、真のビール好きならじっくり堪能したいところ。

ルート101号から高速1号へと進み、「カンブリア・ビーチロッジ(Cambria Beach Lodge)」へ。

チェックイン時に、様々なアウトドア・アクティビティのツールを揃えた"アドベンチャーキット"を渡してくれるので、ユニオンジャックの味わいを体現すべく、自信を持って自然に触れ合いながらの滞在をお楽しみあれ。

または、ルート101号を直進し、「グラナダ・ホテル&ビストロ(Granada Hotel & Bistro)」の繊細なセンス光る空間で、もう少しリラックスしても。

HITACHINO NEST WHITE ALE

茨城県|那珂市 「木内酒造」のホワイトエール(アルコール度 5.5%)

「クラスカ」、常陸野ビール&「パーク・ホテル 東京」

これだけ幅広い飲み物を、一言で"ビール"と呼んでしまえるのは、ある意味すごいと思いませんか。

木内酒造」のベルギー・スタイルの白ビールは、これまでに紹介した重めなダークビールとは大違い。グラスに注がれるのは少し濁りのある黄金色に、適度な厚みの白い泡。

すっきりと爽やかな飲み口で、これぞ何にでも合う万能ビール、と言ってしまいましょうか。

オレンジピールに白胡椒、キリッとしたコリアンダーといった香りと味わいは、那珂湊やきそばや常陸牛料理にも持ってこい。今や世界クラフトビールのトップブランドとして、国内各地はもちろん、海外のこだわりのお店でも人気です。

そんなお洒落感あるコスモポリタンな雰囲気は、ご存知、東京・目黒の「クラスカ(Claska)」にも通じるものがありましょう。

高層ビル内に造られたチェーンホテルが台頭する都内でも、こんなこだわり空間が存在する余地はまだまだあるのです。もちろん、高層ビルだから悪いというわけではありません。

汐留の「パークホテル 東京(Park Hotel Tokyo)」は、未来的なセンスを感じさせるホテル。特に、オリジナルアートが彩るアーティストルームは、大手ホテルの頼れる快適性と、斬新な個性を持ち合わせた万能空間になっています。

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