【イスタンブール】世界が注目するトルコの近代アートシーン

数多くの憧れの地の中で、世界で最も旅心を強く誘う都市のひとつがイスタンブール。街の元気な発展具合を一番に反映しているのはおそらく地元作家による近代アートと、それを支える近代アートシーン。

慢性の旅行癖のある人なら、ご存知のはず。イスファハンにウユニ塩湖、マダガスカル・・・行きたい場所の名前をリストアップするだけでも、ゾクゾクと湧いてくるあの興奮感を。数多くの憧れの地の中で、世界で最も旅心を強く誘う都市のひとつがイスタンブール。コンスタンティノープル、という呼び方もできるけれど、この旧名から多くの人がイメージする町は、現在のイスタンブールとは異なるもの。過去の名残ばかりを追っていては、この街の今のエネルギーを見逃してしまいます。

街の元気な発展具合を一番に反映しているのはおそらく地元作家による近代アートと、それを支える近代アートシーン。イスタンブールの文化生活は内側から、街の表情と気風と共に変革を経ようとしているのが見受けられます。中心となっているのはベイオール(Beyoğlu)地区。かつては犯罪が溢れ、その昔は豪邸だったろう19世紀のアパートビルが老衰したまま放置されていたこのエリアも、今ではイスタンブール屈指のファッショナブルな地区となり、白熱する近代アート界に匹敵するスピードで急成長しているよう。

華麗に新装された築120年のオスマン建築の旧銀行の中にワシフ・コルトゥン(Vasif Kortun)が「SALT Galata」をオープンしたり、アートコレクター、オメール・コチ(Ömer Koç)がイスティクラル通りの豪邸を修復して「Arter」を生んだりと、この数年は地元ベースの大型ギャラリーも続々と創設されているけれど、国際的アート界がここで見つけた作品を世へ送り出すようになったのはさらにその前のこと。去年ロンドンのSaatchi Galleryで行われた近代トルコ人アーティスト・グループ展「Confessions of Dangerous Minds」に並んだ作品は、展覧会初日を迎える前に完売。サザビーズのオークションでも、トルコ・アートは近頃売値が一気に上騰していて、今では同社がベイオール・オフィスを設立するまでに。それと同時に、ニューヨークのPaul KasminやKrampfをはじめ、世界の一流ギャラリーが続々とイスタンブール支店を開設。中には拠点を完全に移転したギャラリーも。

昨年9月14日から10月20日まで行われた「第13回イスタンブール・ビエンナーレ(İstanbul Bienali)」の開催期間中は、SALTやArterはもちろん、このエリアにある複数の会場で様々な展覧会が催され、国際化が進む地元のアートシーンにますます注目が集まりました。ビエンナーレのトピックは「政治的討論の場としてのパブリックドメイン(公有物)」。昨年、タクシム広場およびゲジ公園といった公共空間で起きたデモ(および、それをインスピレーションに生まれたアート作品)のことを考えても、これ以上にないタイミングでした。実は、まさにその広場と公園も、もともとビエンナーレのイベント会場の一部となる予定もあったのだそう。基を辿れば、ゲジ公園を守ろうとデモを応援していたアーティストや若者主体の人口こそ、現在ではビエンナーレの拠点となっているベイオール地区を、今のような高級なエリアへと変化させた張本人たちなのだ、というのも興味深い点でしょう。

アート界がベイオールに注目するようになったキッカケはここに住むアーティストやギャラリーのおかげだけれど、この周辺のイメージを目に見える形で変化させたのは、次々とオープンしだした新しいレストランやバー、そして高級ブティックといったショップ。一時は暗くなったら人も寄り付かない場所とされていたここも、今では夜遅くまでお洒落なパーティーピープルが集まり、アパートの一階(!)を利用した「Wake Up Call」や、明け方から盛り上がる「MiniMüzikhol」といった人気のナイトスポットに溢れています。

もうひとつ、このエリアの変貌を目に見える形で象徴しているのは、美しくも長年放置されていた建物を修復して生まれたホテルの一群。今日では、レンガの壁と時代を感じさせないボスポラス海峡の眺めをモダンなデザインで縁取った「ジョージズ・ホテル(Georges Hotel)」のような、スタイリッシュなゲストハウスも珍しくありません。レインシャワーにロクシタンのバスグッズ、羽毛布団といった高級アメニティは当然ながら、一番の魅力はやはり、イスタンブールきってのレストランやバー、クラブが集まるホットスポットというこの立地。

それは、地元出身の勢いあるデザイン会社オートバン(Autoban)が手がけた「ウィット・イスタンブール・スイーツ(Witt Istanbul Suites)」にも言えること。近代美術館「Istanbul Modern」の近くにあるこのホテルは、木材とレザーの深みある質感を利用した、モダニズムが光る一軒。一方、古い女性修道院を改築した「トムトム・スイーツ(Tomtom Suites)」は、贅沢な大理石のバスルームとバトラーサービスを構えた住宅風のホテルになっています。イスタンブールのお洒落なデザイナー・プチホテルは、これだけではないけれど、街の成長ぶりを見るかぎり、これからますますその数は増えるのでは。

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