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ネットメディアは報道ではない? 舛添知事の取材で、東京都議会にハフポストも締め出された

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舛添要一・東京都知事による政治資金の私的流用疑惑が、都議会に攻防の舞台を移した今、知事の発言や資料を得るための議会取材は欠かせない。しかし、思わぬ壁にぶち当たった。

「ネットメディアは報道としては認めない」という都議会の規定だ。

Buzzfeedが都議会本会議で報道機関としての取材を拒否されたという記事を受けて、6月13日の総務委員会の集中審議を前に、ハフポスト日本版は都議会広報課に報道機関として取材できるかどうか、事前に確認した。

しかし結論として、やはり「ネットメディアはダメ」。

2015年3月にLGBTパートナーシップ条例を可決した渋谷区議会を取材したときは、議場の撮影を拒否されたが、これは他のメディアも同じだった。しかし今時「ネットメディアだからダメ」という理由はないだろうと思ったが、「我々は議員の決めることに従うだけ」という都庁職員に決定権はない。仕方なく一般の傍聴人として席を求め、並ぶことにした。

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午前9時、東京都議会議事堂2階。69席の一般傍聴席はすでに行列が出来ていた。18番目に案内され、傍聴席は確保できそうだ。

しかし、ここで新たな問題が生じた。一般傍聴で入ると、写真撮影や録音が大きく制限されるほか、パソコンも使えないのだ。

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写真撮影は都議会総務課の許可が必要だが、そこで「許可申請書」の記入を求められる。そこに、以下のような一文がある。

なお、撮影した写真、写真データ等については、直接、間接を問わず、これを撮影した者以外の者に鑑賞させ、或いは、提供しません。

「メディアに掲載できないということですか」と総務課に聞くと「そういうことです。個人でご利用になる場合はいいんですが」と返事が返ってきた。CDからダビングしたカセットテープのような扱いだ。

大本となる根拠は、1974年に制定された東京都議会傍聴規則に定められている。「写真、映画等を撮影し、ラジオ・テレビ等の録音若しくは録画又は中継をしようとするときは、あらかじめ議長の承認を受けなければならない」とあるのだが、総務課によれば、写真撮影以外はほぼ認められない。さらに「携帯電話等の電源は必ず切ること」と傍聴人に申し渡している。この「等」にパソコンやスマホも含まれ、今や記者会見などで当たり前になったパソコンでの記録もできない。

「テキスト中継」や「ライブブログ」と呼ばれる、活字のテキストをリアルタイムで更新していく機能や、Facebookが提供するライブ動画の中継機能など、技術の進歩で誰でも活字や動画、音声を中継することが可能になった。ハフポスト日本版も、そうした機能を活用して、都議会の生の様子を伝えようと思ったのだが、「規則を改めるような協議が議会でなされていない以上、今まで通りの運用でいくしかありません」と総務課職員は説明する。

「画像データ」という表現など、新技術を規制するような見直しは、その時々でしっかりされているような気もするが...。いずれにせよ、パソコンを使えなければ仕事にならない。

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午前11時すぎ、戻ってくると、69席の傍聴枠は埋まっていた。

新聞記者を十数年やってきて、現場取材に勝る取材はないと思っているので、ここまで来たら委員会室に入って舛添氏らの表情を間近で見届けたい...という思いは募るのだが、仕事のツールが封じられては元も子もない。悩んだ末、午後0時30分の傍聴券配布開始を前に議事堂を離れ、某所に移動してMXテレビとネット中継に頼ることにした。

ネット中継は便利だ。足場の確保に困ることもなく、エアコンの効いた部屋で楽な姿勢で見ながらできる。ただ、中継は常にあるとは限らないし、ときどき途切れるから当てにはならない。だから現場に行けるようにしないといけないのだ。

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「報道ではない」とする都議会側の根拠は何か。

都議会広報課によると、都議会議員による議会運営委員会理事会の合意事項により、都議会を取材できる「報道機関」とは、日本新聞協会、日本雑誌協会、日本映画テレビ技術協会、日本専門新聞協会、日本地方新聞協会に所属しているメディアに限られる。議運理事会は非公開のため決定事項は文書化されておらず、広報課の担当職員も、前任者からの引き継ぎとして申し渡されているだけで、いつ決まったことなのかも不明だという。

「2015年のヤジ問題のときなど、これまでも突発的に『入れてくれ』という要望はあるんですけどねえ」と担当者。根拠が明文化されていない規定に縛られるのは納得いかないが、見直しには議運の協議が必要になる。

とにかく、時代に合った対処を、早急に求めたい。

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撤収する前、ふとロビーを見ると、一般傍聴人を取材しようとするメディアが押し寄せていた。私も以前、あちら側で、当たり前に取材できることを当たり前に思っていた一人だったが、新興ネットメディアに移ってはや数年、自分たちが特別扱いされていたことを痛感させられる日々だ。