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「アリババカー」:ネット企業が主導した初のクルマとその未来

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家にログインする時代がやってくる」というポストで、個人的に非常に期待している今秋発売のGoogleのスマートホームデバイス「Google Home」について書きましたが、それよりも早く「クルマにログインする時代」が中国ではやってくるようです。

発表したのは「自動車メーカー」ではなく、中国の「eコマース」最大手のAlibabaです。自動車メーカーのSAICと組んで来月「インターネットカー」を発売することを発表しました。

今年の5月にAppleが中国最大手のライドシェアリングサービスであるDidiに出資をしたときのポスト(「Appleが中国でUBERの「10倍」のシェアを持つライバルに投資した訳」)にも書きましたが、AlibabaはDidiの株主でもあり、これまでも自動車関連のサービスには強い興味を示していました。そして今回、GoogleやAppleに先駆けて「自動車そのもの」を発表したということで、そのスペックやビジネスモデル、そしてその先にあるものについて書いてみたいと思います。

AlibabaIDで「ログイン」するクルマ

来月にも中国国内で出荷が始まるというAlibabaとして初めての「クルマ」の大まかなスペックは以下の通りです。
  • 名称:RX5
  • メーカー:SAIC
  • OS:YunOS
  • ID : Alibaba ID
  • 価格:$22,300-
  • 主な新機能
    • 予約
    • 決済
    • パーソナライズ
    • 音楽レコメンド
    • 音声コントロール
    • セルフィー360度カメラ

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そして見た目はこんなデザインです。実物を見てみないとなんとも言えませんが、一般的なミッドサイズのSUVのようです。

メーカーは「中国最大手」のSAIC


今回の発表でAlibabaがハードウェアとしての自動車の製造に乗り出した訳ではなく、パートナーである中国大手の自動車メーカーSAICが製造を担当します。

SAICは、Shanghai Automotive Industry Corporationの略で、漢字では「上海汽車」となります。「Big4」と呼ばれる中国国有大手自動車メーカーの一つで、2014年には450万台の自動車を製造しています。世界シェアを急速に伸ばしており、中国では最大、日本でいうとトヨタ、ホンダ、日産に続く規模の、世界10位のメーカーです。

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GMやVolks Wagenと提携関係にあり、元々はイギリスの有名ブランドであったMGを傘下に持ちます。今回のAlibabaとのクルマは、高級車ブランド Roeweとして発売されます。

SAICは、最近シリコンバレーのスタートアップ投資の現場でもっとも名前をよく聞く自動車メーカーの一つで、オンデマンド自動車修理のYourMechanicsやP2P中古車販売のBeepiなどにも出資をしています。最近Scrumでも一件共同投資を行ったところです。

独自「IoT OS」YunOSを採用


インフォテインメント部分のOS(おそらくパワートレインなど別。詳細不明)には、Alibaba独自のOS「YunOS」の自動車版が採用されています。

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YunOSは、AlibabaがオープンソースAndroidをベースに1,600人ものエンジニアを投入して開発をした独自スマホOSです。2011年にリリースされ、すでに多くの中国向けスマホに投入されているようです。また、スマホだけではなく、様々な「IoT」をターゲットにしており、今後テレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、ゲーム、時計、掃除機などへの導入を狙っていると言います。

サービスやアプリのレイヤーだけでなく、OSまで囲い込む戦略ですね。自動車インフォテインメント向けにはGoogleのAndroid AutoやAppleのCarPlayがすでにありますが、世界最大の自動車市場である中国においては、政府の規制の問題もあるため、AlibabaがOSレベルから独占していく可能性もあるのかもしれません。

駐車場代を「クルマの中から支払える」


今回「自動運転」のような技術的に極めて難しいものは何も発表されていませんが、Alibabaならではと言えるインターネット関連機能が多く搭載されています。

一つは「EC」機能です。

動画や実際の画面などの情報がないので、詳しい実装はわかりませんが、Alibabaの決済サービスであるAlipayを使って、自動車の中から「駐車場の料金を支払」ったり、「ガソリンを入れた代金を支払」ったりできるようです。VISAが、自動車の中での決済や契約についてのデモを昨年発表しているのでこの動画を見ると少しイメージがわくかもしれません。

Alibaba IDでログインをしているので、スマホでの利用データなどからいろいろなパーソナリゼーションやレコメンデーションが行われるのでしょう。そして、こうした「クルマ内決済」を実現するために必要なガソリンスタンド側のAlipay対応も進んでおり、今年中には30,000カ所のガソリンスタンドで展開されるようです。

また、レストランの検索、予約などもクルマの中でできるようです。どの程度Alipayと統合されているのか非常に気になるところですが、海辺をドライブしながらディナーの予約ができて、支払までできちゃったりするというのはなかなかナイスですよね。

そしてもう一つが「カメラ」機能です。

「セルフィー」をとってすぐにソーシャルメディアにアップする機能や「360度カメラ」もついているようです。どちらも詳細は不明ですが、セルフィーは、Facebook史上最高の視聴数となった「Chewbacca Mom」のようにクルマの中で撮影する人も非常に多いのでニーズがあるのかもしれません。360度カメラの方は、ARスタートアップのMagic Leapにも出資しているAlibabaなので、「自動車 x AR」なんていう世界も遠い将来ではないのかもしれません。

「水平分業」「ID/データ競争」これからのクルマ


GoogleやAppleも自動車に力を入れていますが、今回のクルマが「ネット企業が主導した初のクルマ」ということになると思います。

ニュースからだけではAlibabaとSAICの力関係は分かりませんが、何人かの中国の自動車業界関係者と話をしたところでは、ネット企業の側(Alibabaに限らず、Tencent、Baiduなど)のコネクテッドカーに対する意欲と力の入れ方には並々ならぬものがあり、自動車開発においても主導権を握って進めていると言います。

「スマホ後」のモバイル業界において、ハード / OS / アプリという水平分業が一気に起こり、アプリ / サービスのレイヤーが急速に拡大したのと同様に、クルマの世界にも水平分業の波が一気に押し寄せるきっかけになるかもしれません。もちろん、電気自動車の時代になり、クルマ時代のモジュール化が進むと、この水平分業はさらに進むことになるはずです。

そして、これまでもいろいろなところで議論をしていますが、今回クルマに「Alibaba IDでログイン」できるようになったということは、自動車の「所有の概念」に大きな影響を与えそうです。

今後、Alibabaの投資先である中国最大のライドシェアリングサービスであるDidiにおいてもアリババカーが導入されるでしょうし、C2Cシェアのクルマであろうが、レンタカーであろうが、ログインしてしまえば「自分のクルマ」となる訳で、「所有している意味は何?」となる訳です。

もちろん内燃機関の乗ったクルマは、スマホのように誰でも開発できる訳ではありません。ただ、今後、水平分業が進み、競争力がIDやデータを持つ人に移るというインターネット的な世界観が自動車の世界にも確実に押し寄せているということを強く感じさせるニュースでした。