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「進化を共有する」テスラに見るIoTの作り方

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先週、東京での勉強会Tackle!の後、コンサルタントの方からこんな話を伺いました。

ここ数年大企業でIoTの企画はたくさんあるけれど、なかなか製品化されない。10年、15年と使われ続けるハードに全く新しいコンセプトを投入することにどうしても躊躇してしまうようだ。

リリース後も頻繁にアップデートを行えるソフトウェアとは異なり、ハードウェアはリリース時に仕様を確定しなくてはならない。そして、かつ大企業の製品となると、クラウドファンディングでリリースするスタートアップのように、軽やかにリリースするというわけにはいかないという事情は理解出来る部分もあります。

話は変わりますが、私は最近モビリティ関連の市場に特に注目していることから、「自分も自動運転を使い倒さないとだめだろう」ということで、通勤用にTeslaのSUV、ModelXに毎日乗ることにしています。ちなみにオフィスまでの6-7割くらいはAutoPilotで運転しています。

これまで知人のTeslaには何度も乗せてもらったことがあったのですが、毎日自分で使ってみることで「Teslaは普通のクルマとは違う。楽しい!」ということに気づきました。これまで、日本車、米国車、欧州車と様々なメーカーの様々なタイプのクルマに乗ってきましたが、Teslaには全く違う魅力があります。

AutoPilotや、EVなどいろいろとユニークな要素があるのですが、よくよく考えてみると、私が楽しいと感じている一番のポイントは「TeslaがIoTである」ということでした。

今回のポストでは、IoTとしてのTeslaの魅力、それと合わせて、先週Teslaが発表した自動運転関連のニュースについて書きたいと思います。

「スマホのようなクルマ」IoTとしてのTesla


Teslaは、現在リリースされている全てのモデル(Model S、ModelX)で、AT&Tとのパートナーシップ契約に基づき、「無料」でモバイル通信を提供しています。

通信は、様々な場面で利用されていますが、利用者にとって大きなインパクトがあるのが「ソフトウェアのアップデート」「アプリ」「ナビ / 音楽」の3つだと思います。

一つ目の「ソフトウェアのアップデート」ですが、スマホのOSのバージョンアップと同様、ソフトウェア部分の様々な改善がネットワーク経由で提供されます

最近ちょうどv8.0にメジャーアップデートがありましたが、夜駐車場にクルマを停めている間にアップデートがダウンロードされ、朝になるとバージョンアップが終わっています。

これまで、クルマのUIは多くのハードウェア製品と同様、出荷された後に変化することはありませんでした。Teslaはソフトウェアアップデートにより、機能面だけでなくUIも大きく変化するため、大げさな言い方をすれば全く新しいクルマになったような感覚を覚えました。今日本で ApplePay x SUICAが盛り上がっているのと同じですよね。

前のバージョンとの比較動画が見つからなかったのですが、このv8.0を紹介した動画を見るとどの辺がアップデートされたのかが分かると思います。

6月に利用中に死亡事故が起きてしまったAutoPilotの機能も、今回大幅に改善されました。

6月の事故のドライバーは、AutoPilot中にDVDを見ながら運転していたようですが、アップデートされたバージョンでは、ハンドルからしばらく手を離していると音声やバイブレーションで警告したり、3度警告されると機能がオフになる、などの機能(動画 2:30あたり)が追加されています。

AutoPilotを使っていると、ついついハンドルから手を離したい誘惑にかられるのを実感しているので、安全のためにはいい改善だと思います。

冒頭にある画像は、私が撮ったv8.0のインパネの画像ですが、今回AutoPilot以外にもたくさんの機能がアップデートされています。

買い替えサイクルや価格帯も異なるので単純比較はできませんが、スマホのOSがアップデートされるのと同じ感覚で、ユーザからの声なども取り入れていろいろな部分がどんどん改善されていくので、クルマが進化していくのを一緒に体験するような感覚があります。

二つ目の「アプリ」ですが、Teslaは専用のスマホアプリを提供しており、スマホから自分のクルマをいろいろと操作できます

こちらはアプリを説明したTeslaの公式動画です。

充電、鍵の状況などの確認、設定をしておければ自動でクルマを車庫から呼び出す「Summon」もスマホからできます。

私は「リモートエアコン機能」を最近毎日使っています。

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スマホから車内の温度を確認して、事前に暖房/冷房を入れておくことができます。最近は朝晩冷えてきたので、自宅を出る少し前にスマホからクルマを温めてから乗り込みます。NESTと同じノリですね。

これは地味に嬉しい機能です。

あと、Teslaが設置している高速充電スポットで充電をしていると、「もうすぐ充電が完了します」とか「充電が完了したのでクルマを移動してください」という通知がスマホにくるというのも、スマートデバイスらしくていい機能です。

これもクルマに通信機能が付いているおかげですが、まさにスマホやスマートホーム製品を使う感覚でクルマを使えます

そして、「ナビ / 音楽」です。

最近はVolvoなども追随していますが、17インチの大きなタッチパネルもTeslaの特徴です。

私はこれまでスマホでWazeを使っていましたが、最近はTeslaのナビを使っています。

Bluetooth経由でスマホと接続すると、スマホのスケジューラがモニターに大きく表示されるため、次の予定をクリックするだけで、簡単にルートが設定されます

Wazeもカレンダー連携はありますが、スマホと大画面モニターのスムーズな連動感は非常にいいです。音楽も、インターネット経由で膨大なライブラリーをストリーミングできます。

美しいデザイン、AutoPilotなどの先進的な機能が注目されるTeslaですが、モバイル通信があることでこれだけの魅力が実現されています。

冒頭にあったように、ハードウェアとしての仕様は出荷時に決めないといけないのは当然です。Teslaも後から追加のハードウェアが届くわけではありません。しかしながら、通信機能を提供し、OTAでソフトウェアをアップデートし続けることで、「ユーザと進化を共有する」というのはIoTの一つの成功の鍵のような気がします。

全てのモデルに自動運転用ハードを搭載するテスラ


とここまで、Teslaのいいところと書いてきたのですが、既存のTeslaユーザにはある種ショッキングなニュースが先週ありました。

2016年10月18日までに製造されたTeslaは、半自動機能であるAutoPilotが搭載されていますが、10月19日以降に製造されるクルマには、なんと「将来的に完全自動運転を実現するのに必要なハードウェアを全て搭載」すると発表しました。

その概要を簡単にまとめると以下のようになります。

  1. 8つの光学カメラ、12個の超音波センサーが搭載。最大250mまで認識可能。
  2. 全てのモデル(ModelS, ModelX, Model3)に搭載。
  3. 車載コンピュータの能力は従来の40倍に(Nvidia製)。その場でニューラルネットワークを走らせて、センサーからの入力を処理。
  4. 完全自動機能が完成するまでも、"Shadow Mode"でテストを続ける。
  5. 完全自動機能が完成した場合、追加費用($8,000)を支払うことでアップグレード可能。

もはや同じ車種とは思えないほどのアップグレードです。悲しいことに私のように直前のバージョンを購入したユーザは、ハードウェアのアップグレードなどのオプションはなく、完全自動運転を体験するには、また新しいクルマを購入するしかありません。

今回市販車に搭載されるのは「ハードウェア」だけで、完全自動運転用の「ソフトウェア」が提供されるのは将来で、まだ時期も発表されていません

ただ、すでに一般道でのテストには成功しており、動画も公開されています。

Full Self-Driving Hardware on All Teslas from Tesla Motors on Vimeo.

動画では、ドライバーは乗っていますが、ハンドルに手を添えているだけです。一般道、高速道路を自動的にハンドルを切りながらすいすいと進んでいきます。

私が乗っているバージョンはカメラは1つで、高速道路の白線をトラッキングしながらレーンキープをするため、白線が鮮明でなかったり、暗くなってきたりするとすぐに白線が認識できなくなり、AutoPilotモードが解除されてしまいます。一方の、新しいバージョンは、カメラは8個で全方向を見渡し、コンピュータの性能は一気に40倍です。短い動画だけでは性能はわかりませんが、コントロールされた環境ではなく、他の自動車もたくさん走っている一般道をちゃんと自動で走っています

また、動画の最後が見もので、ドライバーが降りたあとに、Teslaが自分で駐車場の空きスポットを探して自動で駐車します。この機能はすぐにでも欲しいですね。

しかも、来年の終わりまでに、Los AngelsからNew Yorkまで完全自動のデモ走行をすると言っています。

Googleがマウンテンビューで、UBERがピッツバーグで自動運転のテストを行っていますが、特定の都市でのテストと、大陸横断は必要となるデータの量も難易度も大きく異なるはずです。今後発売されるすべてのTeslaから全米のマップデータが集まってくることになりますし、ここで発表したということは勝算ありということなのでしょう。

さらに、大陸横断には「充電も含めて一度も触る必要がない」と言っているので、自動運転だけでなく、充電も自動(道路から充電?)を想定しているのかもしれません。

いずれにしても、市販車のハードウェアという意味ではまたTeslaが頭一つ抜け出したことは間違いないので、今後の動向、発表にさらに注目です。

先週Wedgeに自動運転の記事を寄稿したと思ったら。。


先週、発売された雑誌Wedgeに「Uberが抜きん出た「自動運転」開発 先行者Googleに訪れた〝試練〟」というタイトルで、最新の自動運転の開発状況について寄稿しました。

UBERが自動運転カー開発において、抜きん出つつあるという現状とその理由。一方で、GoogleがUBERの取締役会から外れ、UBERと競合する道を選びつつあるという話、などを書いています。詳細にご興味がある方は、ぜひ雑誌をお買い求めください。

最新の情報を元に、自動運転カー開発の状況について書いたつもりだったのですが、それからたった一週間で今回のTeslaの完全自動運転の話がでてきました。とにかくみんなが先を争って、自動運転カーの開発を進めているということがよく分かります。

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今回のTeslaの発表を受けて、定期的に作成している「自動運転関連トレンドマップ」もアップデートしました。

そして、このブログを書いている途中に、UBER傘下の自動運転トラック開発のOTTOが、Budweiseのビール5万缶を載せて、120マイルの商用走行に成功したというニュースが入ってきました。一般向けよりも先に実用化がされそうなのが、トラック、バスの自動運転です(ちなみにTeslaもトラックとバスの開発を今年表明しています)。

最後は自動運転の話になってしまいましたが、冒頭に書いた通り、「IoTしてのTesla」は、クルマに限らず、様々なハードウェアのIoT化の参考になるのではないかと思います。スマホやTeslaのように、買った後もどんどん進化していく、そんなハードウェアが増えたらいいなと思っています。