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"クルマから育児まで無償の助け合いを" 生活を支えるヒッチハイク型SNS

2013年12月04日 18時46分 JST | 更新 2014年02月02日 19時12分 JST

先日、発展目覚ましいヤンゴンに取材がてらの旅行に行ってきました。その際に利用したのが、現地に住んでいる方の家に無償で泊めてもらえるカウチサーフィンという旅行者向けのSNSです。(ホテルはあらかじめ予約していたので泊まりはしなかったのですが、)サイト上で知り合った方の家までお伺いして一緒に食事し、現地の情報を色々教えて頂きました。

最近ネット上では旅行者が現地在住の方のサポートを受けられるサービスが多数生まれていますが、その中でも原則的に無償のカウチサーフィンはユニークな存在です。カウチサーフィンでは、泊めてもらいたい旅行者が旅行日程を公開し、その日程で泊められる現地の人がリプライをする、というシステムになっています。手を挙げた"助けてほしい人"と"助けてあげられる人"を結びつけるという意味で、ヒッチハイク型のSNS、ということができるでしょう。

ヒッチハイクという意味では、欧州ではそのものズバリ、SNSを通して目的地までクルマに相乗りさせてくれる人を探すライドシェアが既に定着しています。日本でものってこ!が同様のサービスを運営しています。

このサービスも基本的にはもちろん無償。ただし、高速道路料金やガソリン代などかかった実費は割り勘なので、相乗りを受け入れる側にとってもメリットがあるわけです。

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ネットに息づく互助の文化

利用者同士がヒッチハイクのように無償の助け合いを行うSNS(ヒッチハイク型SNS)は、海外で始まったものが最近になってようやく日本にも入ってきたようにみえます。しかし、あらためて考えてみると、例えば日本で既に定着しているQ&Aサイトは、分からないことがある人が質問を投げかけ、分かる人がそれに答える訳ですから、これも立派なヒッチハイク型SNSです。更に言えば、交流サイトといえば掲示板しかなかった時代から、ネットにはそのような互助の文化が息づいていました。『電車男』などはまさにその例です。

『電車男』に似た事例として、twitterでは2010年に『秋葉原トイレ男事件』がありました。これは、秋葉原の男子トイレで紙が無くなってしまった男性がtwitterで助けを求めたところ、RTが繰り返されて20分後には見事、見知らぬ誰かからトイレットペーパーが投げ入れられたという事件で、海外でも大きな話題になりました。

今年のtwitterは多くの炎上事件がとかく注目を集めてしまいましたが、その少し前に『京都教育大学プリン誤発注事件』があったのを皆さんは憶えていらっしゃいますか?大学の購買の方が誤ってプリンを4000個誤発注してしまい、やむなく山積みにして売っていたところを学生がtwitterに投稿した事件です。多くの学生がRTで「みんな買ってあげて!」と呼びかけた結果、わずか数日で4000個全てが完売してしまいました。

この2つの事件はtwitterの互助精神を表す美談として語られていますが、そもそも最初に投稿された「救助要請」自体がネタとしてかなり面白かったから拡散した、という側面は忘れるわけにいきません。それほど拡散もされず、闇に葬られてしまった救助要請もたくさんあるはずです。しかし、RTが繰り返されれば互助の輪が急速に拡がり、思わぬ大きな力になりえるという点は、ヒッチハイク型SNSとしてのtwitterの大きな特徴です。

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生活基盤化する無償の助け合い

このようなSNSを通じた無償の助け合いは、時代の要請を受けてこれから更に多様化していくと考えられます。しかも、単にSNSの種類が増えるというだけでなく、人々の日常生活になくてはならないものになっていくはずです。

生活総研では毎年、『生活動力』という今後の生活者の動きを提言するレポートを発表しており、12月4日に発表した生活動力2014では『インフラ友達』というキーワードを提示しました。今回「友達」に注目した背景には、個人化による血縁・地縁の希薄化や、国の社会保障への信頼低下があります。これまで家族や地域の支え合い、あるいは行政サービスが担ってきた生活の根幹をなすインフラ的な役割を、今後は信頼できる友達同士の支え合いが担っていく必要が出てくると考えたのです。病気になった際の看病、災害時の避難先、あるいは育児や介護などについて、家族や地域に代わって、友達がその役割を果たすということです。

しかし、いくら交友関係が拡がったとしても、自分の友達だけではどうしても担える役割に限界が出てきます。そんな時、見知らぬ人同士が互助の関係を結ぶ媒介としてのヒッチハイク型SNSが、これからのネットの大きな可能性となってくるはずなのです。

そのようなフェーズの社会では、旅行の際に宿を借りる、相乗りを頼むと言った非日常的な役割だけでなく、より日常生活に根差した役割について、見知らぬ人同士が助け合いを行うはずです。

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育児については、既にヒッチハイク型SNSが誕生しています。アズママの子育てシェアサービスは、同じ地域・学校の人や友達と子育て支援のネットワークを作ることができるサービスです。急な仕事で送り迎えができなかったり、一時的に子供を預かってもらいたい時に、自分のネットワークにSOSを投げかけることで支援が得られる仕組みです。1時間500円程度の謝礼をやり取りすることがルールとなっていますが、このワンコインは無償ではお願いしにくい助け合いを活性化させるための潤滑油としての意味合いが大きいのでしょう。また、冒頭でご紹介したライドシェアも、欧州では旅行の際だけでなく日常の通勤に相乗りが推進されており、通勤時間帯の渋滞緩和に貢献しているようです。

今年、世の中で話題になったSNS関連のニュースはtwitterの炎上騒動やSNS疲れなどネガティブなものも多かったですが、その裏側で、次の時代のニーズに応える取り組みも少しずつ拡がってきています。