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マーケット、次の一手

2014年12月12日 00時59分 JST | 更新 2015年02月10日 19時12分 JST

世界のマーケットが少し動揺しています。そこでその理由を整理し、次の一手をどう打つべきか考えてみたいと思います。

市場参加者の不安を煽っている一因は原油安です。原油はドル建てで取引されます。するとドル高になると貧乏な国は原油が買いにくくなり購買量が減る......それが原油価格の下落に拍車をかけるという逆相関の関係が生まれるわけです。

これだけ急速なペースで原油価格が下がると、業者の中にはヘッジ戦略を間違えたなどの理由でもう息していない犠牲者が必ず現れるものです。言わば、四谷怪談シナリオ。

寂しい夜道を歩いていると、柳の下にうずくまっている男の姿。「もしもし、そこの旦那、どうなさいました?」と肩に手をかけると、白目を剥いた死体がゴロンと転がる......

まあそういう風なホラーストーリーの株式市場版が、近く演じられることを米国の投資家は身構えているわけです。具体的には借金しまくってシェールオイルの採掘権を買い漁った中小の業者が危ないです。

オイルメジャーから高値で油田を買戻し、国威高揚のシンボルとしてチヤホヤされたロスネフチなんかも経営的にはかなり苦しい筈です。ロシアの民間企業だけで6,000億ドルものドル建て対外債務があります。その大部分はエネルギーや素材関連企業です。もし「ルーブル危機パート2」が今後起こるのであれば、注意を払うべき対象はソブリン(国家債務)ではなく民間負債です。

ブラジルも過去5年くらいでドル建て対外債務が激増した国のひとつです。国営石油会社、ペトロブラスには検察のガサ入れがあり、経営幹部約20名が投獄され、監査法人は「やってられない!」と捨て台詞を残して去りました。9月決算の決算発表は、まだ帳簿を〆ることができていません。もう60日経っているので、いつテクニカル・デフォルトが宣言されてもおかしくないです。また決算報告の提出ができないと、一定の猶予期間の後、いずれニューヨーク証券取引所から上場廃止を言い渡される展開にならないとも限りません。

現在の、60ドルくらいの原油価格ではシェールオイルでは採算に合わない油井が続出しています。そこで油井の休止のニュースがだんだん聞かれるようになってきています。ただ生産調整には時間がかかるし、最もローコストで効率の良い油井は最後まで生産を続けるため、リグ休止のニュースが増える割りには生産量は落ち込まないと考えるのが自然でしょう。

マーケットがギクシャクしているもうひとつの理由は、いよいよ来週の連邦公開市場委員会で声明文の中から「とうぶんの間」利上げはしないという表現が削除されるという観測が出てきているからです。

過去の経験では、アメリカの政策金利が引き上げられるときは、かならずマーケットは一回、嫌気しています。だから乗り心地の悪い局面が来ることは、仕方ありません。

ただお風呂の湯に熱湯を足すのと同じで、「あちち!」と感じるのは最初だけで、慣れてしまえばもう何とも感じません。つまり利上げによる市場の混乱は、一過性のものであることをわきまえておくべきです。

そもそも利上げが必要なのは米国経済が強いからです。しかも最近のガソリン価格の急落は消費者のフトコロに現金をねじこむのと同じ効果があります。1¢全米平均レギュラー・ガソリン価格が下落するごとに10億ドルのキャッシュが消費者に入るわけです。

だから今年のクリスマス商戦はそれなりに好調になると思います。

加えて雇用市場も安定しています。

つまりアメリカ経済は「エンジン全開」状態になっているのです。問題は、この好景気が持続可能か? ということでしょうが、僕は未だFRBは利上げすらしていないので、この時点で米国経済の勢いが利上げによって殺がれると考えること自体、馬鹿げていると思います。むしろノリノリの佳境に入って行くのは、これからです。

欧州に目を転じるとドイツでは相続税の税法の改正が中小企業オーナーにとって大きな不透明感を醸成しています。ドイツの中小メーカーはドイツ経済の屋台骨です。今年の夏のロシアに対する経済制裁で、そうでなくても打撃を受けているところへもってきて、今度は親から子へ家業を譲る際、大きく課税される可能性が出てきたということでオーナー経営者の設備投資意欲は冷え込んでしまっています。

中国は、慎重で、安定感のある金利政策を根気強く継続するタイプの国でしたが、ここへきて千鳥足風になってきています。先日発表された物価統計でもデフレ圧力が確認されています。デフレは借金を整理し、資産を処分した後の人たちにとっては怖くありませんが、キャッシュフローを生まない休眠資産を抱え、借金のロールオーバーに苦しんでいる人々にとっては恐ろしい現象です。

つまりアメリカ以外のどこの国へお金を置いていても、今は不安なのです。

これらの事を総合すると、世界の中でセーフ・ヘイブン(避難港)となりうる唯一の国がアメリカであることは明白です。それは海外の市場からアメリカの投資資金が引き揚げられるリスクが高いことを意味します。

これは1997年から1998年頃の状況と似ています。

当時のアメリカはインターネットの登場でハイテク・セクターのリーダーシップを握りました。

現在もアメリカはテクノロジー分野で世界をリードしています。インターネットなどの世界では、むしろ寡占は強化されている観さえあります。iPhone、Facebook、Starbucksなどのブランドには、グローバルな競争力があり、世界の消費者がアメリカン・ブランドを欲しています。

つまり世界の投資資金は今後アメリカに飛び込んできてミニ・バブルを引き起こすと考えるのが自然なのです。

例年、12月15日前後では年末のタックスロス・セリングで最近IPOされた株や小型成長株がこっぴどく売られます。今年も例外ではありません。それが過ぎてしまうと「ウォール街で唯一のタダ飯」と言われる、年末年始の小型株ラリーが来るわけです。

今週、来週あたりがそれに向けての仕込み場というわけ。

(2014年12月11日「Market Hack」より転載)