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南シナ海における大型石油リグ操業は外交の「流れを変える」既成事実づくり ニューヨーク・タイムズ

2014年05月10日 22時20分 JST | 更新 2014年05月10日 22時22分 JST

土曜日のニューヨーク・タイムズに南シナ海パラセル諸島付近でのベトナムと中国の船舶の小競り合いに関する記事が掲載されました。

「外洋で中国が一方的な動き(In High Seas, China Moves Unilaterally)」と題されたその記事では、まず今回の衝突の直接の原因を作った、中国海洋石油有限公司(CNOOC、ティッカーシンボル:CEO)所有の大型石油リグの説明がされています。

40階建てビルほどの高さで、サッカー場がすっぽり収まるこの石油探索リグは総工費10億ドル以上をかけた、CNOOCの旗艦で、HD-981という名称で呼ばれています。

HD-981はパラセル諸島から17マイル離れた南シナ海に据えられました。はじめ単にこのリグはベトナム近海を通過中なのだろうと考えていたベトナム政府は、リグが据えられたことに驚いたそうです。

僅か半年前に中国のトップがベトナムを訪れて、友好的に、共同でこの地域の石油、天然ガスの開発をすすめようと確認したばかりでした。

中国が単独で一方的な動きに出たことで、ベトナムはHD-981の近くに船舶を派遣し、四日間に渡って中国、ベトナム双方の船舶数十隻がにらみ合う、緊迫した状況になりました。

中国が南シナ海の領有権を主張することは別に今日にはじまったことではありませんが、旗艦大型石油リグを据えるという行為は、ニューヨーク・タイムズに言わせると「明らかに先ず既成事実を作り、それから鷹揚に外交交渉に入る作戦であり、究極的には米国がどう出るか試すものだ」としています。

ジョージW.ブッシュ政権時代に国家安全保障委員会のメンバーを務め、現在、ハーバード大学ケネディ行政大学院のベルファ・センターのフェローであるホリー・モロー氏は「中国はこれまで徐々に南シナ海でのプレゼンスを高める方法をとってきたが、今回は一気に一線を越える作戦に出た」と解説しています。

南シナ海では、中国はフィリピンに対しても示威行動をしていますが、フィリピンは米軍基地が無くなって以来、防衛力が弱まっており、中国の脅威の前に退却せざるを得ませんでした。

しかしニューヨーク・タイムズは「ベトナムは中国にとってフィリピンよりずっと手ごわい相手だということが証明された。事実、この4日間でベトナム船舶は171回も中国船に体当たりを喰らわした」と報じています。

今回の事件が、中国によるオバマ大統領の決意の強さを推し量る、意図的な作戦であることは疑いの余地もありませんが、アメリカとベトナムの関係は、日米関係とは違います。まずアメリカとベトナムの間には安全保障条約はありません。

またベトナムはハノイを中心とした北ベトナム(共産軍)とホーチミンシティを中心とした南(アメリカが支援)に分かれ、ベトナム戦争を戦った歴史があります。この関係で、ハノイと中国の人民解放軍との間には、今日でもホットラインがあるそうです。

つまりベトナム自身の態度が、ハッキリしていないという面もあるわけです。

(2014年5月10日「Market Hack」より転載)