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新国立競技場の建設コンペをめぐる議論について(14)

2014年03月25日 16時50分 JST | 更新 2014年05月24日 18時12分 JST

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今日のTwitterのTLに数多く流れていたのが

東京五輪メイン会場「新国立競技場」何をもめてるの?

と題して以下の記事

2020年の東京五輪でメイン会場となる予定の新国立競技場ですが、デザイン、安全、費用などの面で論議が沸き起こっています。なぜでしょうか。

・・・争点の一つは、「こんなに大きな施設が必要なのか」ということです。

槇文彦さん(85)も、産経新聞(10月9日付)のインタビューに応え、「無論、私は五輪そのものに反対なのではない」としたうえで、次のような疑問を呈しています。

「華やかな五輪の17日間の後も、競技場は50年、100年と世代を超えて維持管理し続けなければならない」

「なにしろ東京ドームの約1.5倍の人数、恒久的に8万人を収容できる巨大施設である。東京ドームならプロ野球試合をはじめ一定の需要が見込めるが、8万人を満たすパフォーマンス(ロックコンサートなど)はそう頻繁に行われるとは思えない」

 槇氏はこのほか、周囲の道路アクセス能力などから、災害時に8万人の観客をスムーズに周縁に誘導できるのかといった、安全性の問題についても言及しています。・・・

・・・また、オリンピックのメイン会場という国家的なプロジェクトであるにもかかわらず、情報公開や国民の声を反映させる手続きが不十分な点についても疑問の声が上がっています。・・・

・・・国立競技場を管理運営する独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)は、2012年3月、計画の内容を検討するため、「国立競技場将来構想有識者会議」を設置しました。メンバーは佐藤禎一元文部次官をトップに、猪瀬直樹東京都知事や竹田恒和日本オリンピック委員会会長ら政界、スポーツ界関係者ら14人で、建築関係の専門家は、建築家の安藤忠雄さんだけでした。・・・

THE PAGE

http://thepage.jp/detail/20131121-00000001-wordleaf

えっ?建築関係の専門家は安藤さんだけ?

これもビックリする記事でした。

なんか、昨日のTLで建築家の難波和彦さんの日記の一部なるものが流れていたんですが、

いわく

神宮前日記より

「安藤忠雄さんから電話が入る。新国立競技場の件について質問する。当初のプログラムは文科省からの天下りで審査員が口を挟むことはできなかったそうだ。だとすれば安藤さんには何の責任もないはずだ」

さらに

神宮前日記より

「僕としてはそもそも新国立競技場問題は賛成派か反対派を問わず公開で議論すべき問題であり建築界だけでなく広く社会に伝えるべきだと考えたのだがそのことに抗議するとは槇さんも意外に狭量である。陳謝のメールを送ってはみたものの何となく腑に落ちない対応になった。」

なに言ってんだ?この人

安藤さんから電話で愚痴を言われるほどの自分です、、とか言いたいのか

意図的に、すべては文科省のせいです、、とリークしようとしているのか、、

「だとすれば安藤さんには何の責任もないはずだ」

だとしても安藤さんには何らかの責任はあるんだよ!

それを放棄するから日本の建築家制度が成熟しないんじゃんか。

みなさんは、日本の建築士制度の中で設計者責任がどうなっているかご存知ないと思うんです。

少し、ややこしい話になるので、事例にそくして至極簡単に述べますが、

建物で分かりやすい問題点として「雨漏り」があります。

その原因としては、通常以下の三つ

1.施工不良---確定している雨仕舞の作業にミスがあった。

2.材料不良---作業ミスはなかったが素材に問題があった。

3.設計ミス----設計図どおりに作業したが雨が漏った。

たいがい、上記の複合要因で起きます。

1.はきちんと直せばいい、2.も取り換えればいい、

問題は3.の場合なのです。

3.が起きてもほとんどの場合、ほぼ設計者責任は問われません。

3.であっても施工者が適切に現場で処理すべき問題として片づけられていきます。なぜなら設計者には責任遂行能力がないから!なんです。

あるわけないんです。1億円の建物の設計料が500万円くらいとした場合、

その手直し工事が発生するとすぐに400~500万円、1000万円くらいは、

平気でかかってしまうから、建築士事務所など速攻で瞬間に破産します。

こう聞くとビックリしますよね。

ただし、安心してください。

普通の建物ではまず起きません、施工者側も設計者側も雨漏りさせたくないですから、そこはかなり真剣に検討します。

施工者と施主の請負契約ですから、最終責任は施工者にあるので、現在は住宅における保険制度なども完備されています。

さらに、建築は枯れた技術の応用ですから、多雨な日本の気候では雨が漏らない設計ディテールの蓄積がものすごくあります。

多少吹き込みにより雨水が浸透したり、枠の隙間に雨水が入ったり、

一部のへこみに水が溜まったりはしますが、まず、漏らない。

ただし、それは現場の職人さんや施工者とも綿密に話し合い、なおかつ設計にフィードバックされている場合です。

しかしながら、設計者がデザイン優先で施工に無理目なディテールを強いた場合、どうしてもそうしろ!と危険なおさまりをごり押しした場合に、よく漏れています。

雨漏りの原因になりやすい場所は建築関係者ならみんなよく知っています。

その場所は、建物のトップ部分とガラスの継ぎ目と異種材がぶつかり合うところです。

ところが!なんです。

この漏りやすい場所を漏りやすく処置した方が、結果としてデザイン的にカッコいい、評価が高いという矛盾が起きてしまっているのです。

それは、モダニズム建築以降、建物ジャンル特有の庇や屋根の形状を、建築家という人たちは、なるべく抽象的な純粋形態とか、プロダクトデザインのように一見継ぎ目なしに見せたい!と考えているからなのです。

その場合、どうしても機能的リスクも工事費用も跳ね上がるんです。

その意図を施主側も納得していればいいのですが、そこまでの説明も評価軸の意図もたぶん示されていないケースがほとんどだと思います。

たとえば、こんな感じです。左も右も建物機能としては大差ないと思うんですが、

デザイン的意味と評価は業界基準ですが、雲泥の差なのです。

default

また、これを成立させるための設計にかかる労力も数倍違います。

参考:アンドウ?イトウ?本当に凄いのは谷口吉生

もちろんわたくしも右側の建物の方がカッコいいとは思いますが、

その価値が何年続くのか?が問題なんです。

で、やったもん勝ち。

漏水責任は施工者側なのだから、無理やりでもやらせて建築家として有名に偉くなってしまえばこっちのもの、という行為もこの業界では合理性があるのです。

諸外国を引き合いに出して日本批判をするのは、

わたくしの大嫌いな論法なのですが、ここではあえてやりますが、

欧米では建築の設計に起因する建築の問題点は建築家の責任です。

そのために、設計者に対する保険制度が完備されています。

設計者はライセンス取得と同時に保険に入ります、次に開業する州や街の建築士組合の保険に入ります、そしてプロジェクトごとに保険に入ります。

3重に保険加入して、自分の設計に問題があった場合は保険で補修や補填をおこないます。そのために危険なデザインをすれば保険料も上がります。

だから、フランク・ゲーリーなどものすごい額の設計保険料払っていますが、

結果、自己責任で過激な設計デザインに走ることができるんです。

しかしながら、日本では設計者に責任がないため、綿密な設計が出来る人か、声のデカイ人か、運のイイ人しか過激で危険なデザイン設計はできません。

いずれにしても現状の日本の設計者は責任について、施工者、ゼネコンにおんぶにだっこ状態なのです。

なので、たいがいの外人建築家は日本で設計すると、施工会社が全部面倒見てくれるんで、ビックリして、ここは建築天国や~と、すごく喜びます。

このあたり詳しくやると、論点がズレるので、また別の論でやりますが、

「岐阜県のマルチメディア工房」

「新見南吉記念館」

でググってみてください。大事件がありました。

どちらも業界では大きな賞を与えてしまっています。

運のよかった人が前者で、運の悪かった人が後者です。

前者は逃げて逃げて逃げまくり大成しました、

後者は逃げなかったけど押しつぶされてしまいました。

前者はゼネコンや行政側の諸関係者の政治的力学で守られた。

後者はゼネコンや行政側の諸関係者の政治的力学で切られた。

前者のケースではその施工ディテールや設計趣旨の危うさを、

長谷川逸子さんだけが指摘し、強硬に受賞に反対していましたけど、

伊東豊雄さんや竹中工務店の村松映一さんに抑えこまれていましたね。

後者の新家さんは新聞一面の意見広告とかも出されていましたけど、

実情はよくわからないままだったし、建築家たちも誰も擁護しなくて、

誰も助けなくてかわいそうでした。

結果、建築士の保険制度の整備がされないままで、

本当の意味で建築家の独立したポジションが取れていないんです。

だから!日本の建築家の代表みたいな安藤さんが、

またここで責任がない、と逃げてしまうと、

今後の公共建築のコンペでは、益々建築家の声は無意味なもの、

存在価値の無いもの、ただの名前貸しになってしまうんです。

本当に日本の建築家業界がバードカフェになってしまうんです。

だから、設計士もサムライ業のひとつとして、もののふを目指しているのなら、

個人的に安藤さんに恩顧のある設計士は全力で彼を支えてもいいんですが、

雰囲気だけで擁護したり、ねたみやそねみで批判したり、

風向きをみて事後判断しようとしてはいけないんです。

すでに賽は投げられています。

さて、コンペ審査の前にそもそも建て替えか改修かも含めて審議したという

「国立競技場将来構想有識者会議」なるものがどういう組織なのか、

そのメンバーは、文部科学省HPから過去報告書をさんざんあさっても、

なっかなか資料が見つからなかったのですが

やっとそのメンバーを見つけることができましたよ。

文部科学省の予算報告書を見るとこの会議に、

予算1億ついてたみたいです。

独立行政法人日本スポーツ振興センター 2/2 (PDF:846KB)

独立行政法人日本スポーツ振興センター (PDF:1341KB) - 文部科学省

設計料なんかも決まってるみたい。

10-1 平成26年度 概算要求主要事項1 (PDF:1465KB)

国立競技場将来構想有識者会が発足

東京都が招致を目指す2020年夏季五輪のメーン会場に想定されている国立競技場の将来的な活用策などを検討する「国立競技場将来構想有識者会議」が2012年3月6日発足した。

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委員長には佐藤禎一国際医療福祉大大学院教授が就いた。施設を運営する日本スポーツ振興センターが設置した組織で、委員には建築家の安藤忠雄氏、石原慎太郎都知事ら14人が名を連ねる。同競技場は19年のラグビーワールドカップも視野に、改築して大規模化される予定。会議ではこれらの大会終了後も見据え、有効利用のあり方を検討していく。

国立競技場(新宿区霞ヶ丘町10-2)は、収容人員を現在の5万4000人から8万人以上の規模に拡大するため、改築が検討されている。

所管する文部科学省は、12年度予算案に調査費1億円を計上。

20年五輪の東京招致委員会は、改築費用を1000億円と見積もっている。

改築に当たっては、全天候型ドーム構想も浮上している。

現在の敷地面積は約7・2ha。

スタンド規模はRC一部S造5階建て延べ2万5346㎡で、1958年に竣工した。

設計は建築家・片山光生が手掛け、大成建設が施工した。

有識者会議の委員は次のとおり(敬称略