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地方創生の取り組みに求められるPDCAサイクルの確立 ~地方創生を契機とした地方公共団体の行政評価の見直し・再構築の可能性~

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1.はじめに  地方創生への取り組みが行政評価見直しを促すと考えられる理由


■総合戦略と地方創生交付金事業に求められるPDCAサイクルの確立

まち・ひと・しごと創生法にもとづき、昨年度中に一部の例外を除くすべての地方公共団体において、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下、総合戦略)」が策定された。総合戦略は、その推進にあたり、透明性の高いPDCAサイクルを確立することが強く求められている。また、総合戦略にもとづいて実施される、地方創生推進交付金を活用した事業(以下、地方創生交付金事業)についても、同様の取り組みが求められている。

PDCAサイクルとは、計画(P)-実施(D)-評価(C)-改善(A)の4段階を繰り返すことで、計画の進行管理を適切に行い、その成果を高める仕組みである。

■地方公共団体の行政評価の仕組みの地方創生を契機とした見直し・再構築の可能性

地方公共団体がPDCAサイクルを確立するためのカギとなるのは、行政活動の実績と成果を適切に評価し、改善の方向性を検討する仕組みである。従来からこうした役割を担うものとして、地方公共団体においては、行政評価の仕組みが整備されてきた。しかし、総合戦略や地方創生交付金事業に求められている水準の、PDCAサイクルに活用できるだけの内容や、精度を有する仕組みを構築している団体は決して多くない。

このため、今後、総合戦略や地方創生交付金事業の進行管理への取り組みが、地方公共団体に対し、改めて行政評価の仕組みの見直しや再構築を促すこととなると考えられる。

2.総合戦略と地方創生交付金事業に求められるPDCAサイクルの具体的内容


総合戦略については、内閣審議官が地方公共団体にその作成を要請した平成26年12月27日の通知の中で、また、地方創生交付金事業については、内閣府地方創生推進事務局がその取扱について説明した「平成28年度における地方創生推進交付金の取扱いについて」の中で、それぞれ、その進行管理に求める要件が示されている。それを整理したものが以下の表である。その内容は、かなり厳しく高い水準での進行管理を求めるものであり、地方公共団体のPDCAサイクルの現状に照らすと、さまざまな課題を内包している。

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3.行政評価の概要と総合戦略、地方創生交付金事業の進行管理への活用の可能性


前述の通り、地方公共団体において、行政活動のPDCAサイクルを確立するにあたり、最も一般的に用いられている手法として行政評価があげられる。行政評価とは、地方公共団体の政策、施策、事務事業のいずれか、またはすべてを対象としてその実績を評価し、必要に応じた改善の方針を策定するものである。一般に、各評価対象に対し数値目標を設定し、これを活用し客観的な評価を行うことが望ましいとされている。

総務省が地方公共団体に対し定期的に実施している調査によれば、行政評価の普及率は既に高水準にあり、平成25年10月時点で、町村では34.9%に留まっているものの、市区及び都道府県では約9割の団体が行政評価の仕組みを導入済みである。

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地方公共団体の施策、事務事業を網羅的に対象として、評価を実施する仕組みが確立されていれば、総合戦略の施策や交付金事業も、この仕組みにより評価(C)と改善(A)を行う事が可能であり、これらのPDCAサイクルを容易に確立可能と考えられる。

しかし、行政評価の現状が、必ずしもこうした期待に応えられるものとなっていない地方公共団体が少なくない。

4.地方公共団体の行政評価の実態と活用に係る問題点


総合戦略及び地方創生交付金事業の進行管理の要件と地方公共団体の行政評価の実態を比較すると、以下のような点が課題となると考えられる。

■一部の施策、事務事業しか評価対象となっていない団体が少なくない

施策については、導入済み団体の25.8%が一部の施策しか評価していない。また、事務事業については、公営企業会計も含めた全部を評価している団体は導入済み団体の約4割に過ぎず、公営企業会計を除く全部を含めても56.1%である。このため、総合戦略の施策や地方創生交付金事業が行政評価の対象となっていない場合は、その結果を活用できず、新たに評価を行う必要が生じる。

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■アウトカム指標が設定されていない団体が少なくない

施策や事業が、その目的にそった成果を上げたかを適切に評価するためには、何をどれだけ行ったかを示すアウトプット指標ではなく、行ったことの影響によりどのような成果が地域や人々にもたらされたかを示す、アウトカム指標で目標を設定する必要がある。

総合戦略や地方創生交付金事業においても、総合戦略の基本目標に係る数値目標、地方創生交付金事業のKPIはアウトカム指標でなければならないとされている。これに対し、地方公共団体における行政評価では、アウトカム指標を設定している団体は導入済み団体の約6割弱に留まっており、導入済みだが定量的な指標による目標は設定していない団体も15.1%見られる。

こうした団体では、行政評価の仕組みとは別に総合戦略や地方創生交付金事業のために改めて指標を設定し管理することが必要となる。

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■過半の団体は外部機関による評価を行っていない

評価の客観性を担保するためには、第三者の目で評価を行うことが必要であり、総合戦略、地方創生交付金事業とも外部機関による成果の検証を行うことが必須とされている。これに対し、行政評価において、外部機関による評価を行っている団体は導入済み団体の約4割にとどまっている。

行っている団体においては、総合戦略や地方創生交付金事業の進行管理にも行政評価の外部評価機関が活用でき、そこでのノウハウ活用によりスムーズな運用が可能である。しかし、行っていない団体においては、総合戦略や地方創生交付金事業の進行管理のため、外部機関を新たに設置することが必要となる。

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■改善の実効性を担保する仕組みが不十分

PDCAサイクルの実効性を担保するためには、評価結果にもとづく改善の方針が適切に策定され、これが計画や事業の次の展開に確実に反映されることが必要である。そして、施策や事業の内容を本格的に見直すためには、次年度の予算編成にその見直し方針を反映することが必要である。しかし、行政評価の結果を予算編成に原則として反映することとしている団体は導入済み団体の約4割に留まっている。改善の実効性を担保するためには、評価の結果を確実に次年度の予算編成に反映するよう、地方公共団体内での基準やルールなどの整備が必要である。

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5.地方創生を契機とした地方公共団体のPDCAサイクルの質の向上への期待


総合戦略及び地方創生交付金事業による取り組みはまだ始まったばかりであり、これらの実績を評価する進行管理は今後本格的に行われることとなる。それに伴い、多くの団体が本稿で指摘したような課題に直面し、それを契機として、行政評価の見直しや再構築に取り組む団体が少なくないと考えられる。

地方創生交付金事業の進行管理の結果は、公表するとともに国に報告することが義務づけられている。また、複数年度にわたる事業の場合は次年度の交付金申請にあたって進行管理の結果を踏まえることとされている。こうした取り組みにより、PDCAサイクル確立の重要性に対する地方公共団体の意識は高まると考えられる。

厳しく高い水準が求められる、総合戦略及び地方創生交付金事業の進行管理に取り組むことが、地方公共団体のPDCAサイクルの質の向上につながることを期待したい。

2016年5月10日「サーチ・ナウ | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング」より転載