高校生ジャグラー、難病の父に全国準優勝のプレゼント

「パーキンソン病」の父親をはげましたいと、小学生からジャグリングの練習を重ねてきました。

滋賀の高校2年生が、大道芸の全国大会でプロを破って準優勝しました。「パーキンソン病」の父親をはげましたいと、小学生からジャグリングの練習を重ねてきました。

滋賀短大付属高校2年の木下洸希さん(16歳)の特技は、いくつものボールや輪を自在にあやつる曲芸「ジャグリング」です。昨年12月に開かれた大道芸の日本一を決める「芸王(ワン)グランプリ」の大阪地区大会に出場。4回目の挑戦で最年少優勝を果たし、今年10月、東京で全国大会に出場しました。

全国大会には、4カ所の地区大会で勝ち抜いた大道芸のプロら7組が参加。大会は11回目で、ソロ出場の16歳は史上最年少です。マイケル・ジャクソンの曲に合わせて、曲芸と踊りを組み合わせたオリジナルの技「ジャグリングダンス」を堂々と披露。七つのボールや輪を空中で操る技などを約30分間続けました。

(全国大会で複数のボールを自由自在に扱う木下洸希さん=東京都江東区)

審査員からは、「独創的であり、王道の技もしっかりできている。これからの進化が楽しみ」と評価され、結果は準優勝でした。木下さんは「家族をふくめ支えてくださった方がいたから、最高の演技ができた」と感謝の思いをこめて話しました。

(準優勝のトロフィーを持ち、応援してくれた人たちへの感謝を言葉にしました)

闘病中の父・輝人さん(53)は客席から見守りました。演技中、車いすから手をたたいたり大きくうなずいたり。最後は涙がこぼれました。「ここを目標にしていましたからね。メンタル面で動じなくなった。よく成長しました」。進行性の病気のため、「東京にいける状態のうちに全国大会に行ってほしい」と願っていました。

(車いすから見守っていた父・輝人さんに準優勝を報告)

洸希さんがジャグリングを始めたのは小学4年のときです。きっかけは輝人さんが「若年性パーキンソン病」を患い、体が不自由になったことです。ものを取ることや話すことが思うようにできなくなった姿を見て、「お父さんに笑顔になってもらいたい」と芸をすることを考えました。

(琵琶湖で練習にはげむ当時小6の洸希さんと輝人さん=2010年)

練習は親子二人三脚です。洸希さんは琵琶湖でプロの動画などを参考に、夢中になって練習しました。輝人さんはそのようすを見守り、薬の副作用で寝られない時間に練習用の動画を探しました。病気で震える手で皿回しを練習して技を完成させ、「頑張ったらできる」と教えたこともありました。

記者は洸希さんが小学6年のときにも取材しました。当時は「新しい技ができるようになるのがおもしろい」と話していました。成長とともに大道芸の大会で活躍し、ショーの依頼も受けるようになり、「喜んでもらえるのが楽しくなりました。応援してくれる人のためにもうまくなりたい」とジャグリングに別の魅力も感じるようになりました。

中学、高校で部活や勉強などさまざまなことに触れてきました。でも、ジャグリングをやめたいと思ったことはなく、毎日1時間ほどの練習を続けています。「ジャグリングをしているとき、お父さんは明らかに元気ですしね」。高校卒業後、大学か大道芸人を目指すか悩んでいますが、「ジャグリングは続けて将来的には海外の大会にも挑戦したい」と夢を語ります。

これからも親子での挑戦が続きます。

朝日小学生新聞10月22日付に掲載した記事に加筆し、写真を加えました。新聞についてはジュニア朝日のウェブサイト(http://asagaku.com)へ。

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