シンクロ中学生男子選手の大きな希望に、男子初の代表メダル届かずも

シンクロの男子選手は国内外の大会への道が開けました。

シンクロナイズド・スイミングで初の男子の日本代表が水泳の世界選手権に出場。メダルには届きませんでしたが、数少ない子どもの男子選手たちに希望を与えました。

大分シンクロクラブのショーン先右さん(中3)=左=と後藤志勇さん(中2)=大分県別府市

ロシアで開かれている水泳世界選手権のシンクロの新種目「男女ミックスデュエット」に安部篤史選手(32)と足立夢実選手(26)が出場。7月26日のテクニカル・ルーティン決勝を5位、30日のフリー・ルーティン決勝を7位で終えました。

大分シンクロクラブに所属する別府市のショーン先右(しぇんよう)さん(中3)と後藤志勇(しゆう)さん(中2)は、テレビを通じてあこがれの安部選手の演技を目に焼き付けました。「世界の壁の高さを感じましたが、やっぱり格好よかったです」(ショーンさん)、「男子でもあそこまできれいでしなやかになれるとわかった。自分も世界の大舞台に立ちたい」(後藤さん)と、夢をふくらませました。

女子中心のスポーツのシンクロ。ショーンさんと後藤さんは5年ほど前に始めました。大分シンクロクラブのメンバー20人のうち、男子中学生は2人だけ。全国でも同世代の男子のシンクロ選手はめずらしいです。

夏休みは市内の高校のプールで週5回、練習にはげみます。矢野直香コーチから厳しい指導の声が飛ぶなか、足を水面から天井に向けてつま先までピンと伸ばし、全身運動で体力的にきつくても豊かな表情を保ちます。

はじめは水泳を習っていましたが、コーチのすすめでシンクロに挑戦。「水中は陸上よりも自由度が高く、ありえない動きができる」(ショーンさん)、「球技などにはない表現力が魅力」(後藤さん)と、のめりこみました。

競技に夢中になる一方で、2人は物足りなさも感じていました。シンクロの大会は基本的に男子選手の出場が認められておらず、いつも正式な記録がつかないオープン参加だったからです。

今年、世界選手権で男女ミックスデュエットが採用されるという話が舞い込みます。2月の国内選考会にショーンさんは最年少で出場し、5人中3位に入りました。1位の安部選手が男子代表に選ばれました。

「プレッシャーとの戦いで、結果も出せず悔しかった。足を上げる高さも、シンクロで大切な体幹の筋肉もまったく足りないとわかった」とショーンさん。結果には満足できませんでしたが、世界の舞台という目標と、安部選手というあこがれの選手もできました。

コーチに教わるだけでなく、女性の五輪選手の映像も見て体の動かし方などを勉強します

日本水泳連盟は、世界選手権に男子が出場することなどを受けて、国内の男子選手の育成に力を入れることを決定。2016年度から日本選手権など主要な大会で男子の出場を認めると発表しました。男子選手は国内外の大会への道が開けました。

矢野コーチは「2人の技術はまだまだ」とした上で、「ライバルも目標もないなか、よくここまで続けて頑張ってきた」と評価。今後の公式大会への出場に向けてきびしい指導を続けていく考えです。

ショーンさんは、世界選手権の選考会のときに安部選手から「男子のシンクロを次につないでいこう」といわれたことを覚えています。「まだまだ人数は少ないですが、盛り上げられるように期待に応えたい」とショーンさんは意気込みます。

日本水泳連盟によると、国内のシンクロの競技者登録数は女子800人ほど、男子は10人前後です。日本水泳連盟シンクロ副委員長の齋藤由紀さんは「男子選手の出場をきっかけに、多くの人にシンクロのおもしろさを知ってもらいたい」と話します。

7月9日の公開練習でインタビューに答える足立夢実選手=左=と安部篤史選手。安部選手は「世界選手権が終わっても、男子シンクロは続く」と話していました

この記事は、「朝日中高生新聞」7月12日号に掲載した記事に加筆しました。ジュニア朝日のホームページ(http://www.asagaku.com)では、「朝日小学生新聞」「朝日中高生新聞」のサンプルや記事の一部も見られます。

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