G20 租税問題でリーダーシップを発揮せよ

経済危機によるドナー国の財政事情から、開発援助の世界総額も過去15年で初めての減額傾向に入っており、毎日、世界人口の8人に一人が空腹のまま寝床に就き、それよりもさらに多くの人々が極端に貧しい暮らしを強いられている。このサミットでG20の首脳たちが手にしているのは、これらの人々に対し、「これ以上、最も儲けを上げている企業が納税という社会的責任から逃れることを許さない」という、世界の指導者として重要なメッセージを発信する機会なのだ。

シリア情勢を巡る米ロ対立が話題をさらうG20サミット(9月5-6日、ロシア・サンクトペテルブルク)だが、首脳たちの意見がほぼ一致している議題が一つある。企業に対する国際租税ルールを改革する必要性についてだ。

今年2月にOECD(経済協力開発機構)が認めたように、古いもので1920年代まで遡るものもある現行のルールは、グローバル化された今日の経済に対応しておらず、目的を果たせていない。本来、複数国で活動する企業が「二重課税」されることのないようにという目的で作られたはずのルールが、「二重非課税」を狙う多国籍企業に乱用されてしまっている。

この問題は昨年来、先進国を中心に政治問題になっているが、最も大きな被害を受けているのは最貧国だ。クリスチャンエイドの試算によると、最貧国の税喪失額は年間1600億ドルほどにもなるとみられ、貧困対策や景気対策のための貴重な財源を失っている。このサミットが開かれる2日間で、ケニアとタンザニア両国の年間教育予算に相当する金額が、途上国から流出する。

世界的な経済危機の影響で、家計から政府財政までが厳しい緊縮や増税を余儀なくされる中、同じく社会の構成員であるはずの、そして社会が必要とする富を生み出す大企業(及び富裕層)だけが国際的にお金を動かすことで納税義務を逃れ、庶民に負担を押し付けている構造に対し、世論が抗議するのは当然の流れだ。これを受け、6月のG8サミットで議長を務めた英国政府は、税を巡る不透明性を克服するための国際プロセスに端緒を付けることに成功した。

しかし、すべての経済大国が集うG20でこそ、大きな政治的決断が合意される必要がある。

この問題について、G20も動き始めている。G20財務大臣は今年4月、税逃れが疑われる個人や法人に関する情報提供を税務当局が相手国に求めることができる税務行政執行共助条約への支持を表明。先週、中国がこれに署名することで、すべてのG20諸国がこの条約に加わることになった。

しかし、今のところこれらの取り組みは、OECD加盟国(先進国)と、G20のメンバー国である新興国だけに限られている。アフリカなどの貧困国は、経済規模に対してG20よりも深刻な被害を受ける(多国籍企業の租税回避によるサブサハラ・アフリカの被害額はGDPの1.7%に上り、これをG20のGDPに当てはめれば1.2兆ドルの損失に相当する)だけでなく、解決に向けた議論からも排除されている。「国際経済協力の第一のフォーラム」を自認するG20が、このような内向きな姿勢で二重基準を許してしまったら、国の南北を超えて無差別に襲いかかる租税回避問題への対策として効果を損ない、G20の信頼性にも傷を付けることにもなる。

経済危機によるドナー国の財政事情から、開発援助の世界総額も過去15年で初めての減額傾向に入っており、毎日、世界人口の8人に一人が空腹のまま寝床に就き、それよりもさらに多くの人々が極端に貧しい暮らしを強いられている。

このサミットでG20の首脳たちが手にしているのは、これらの人々に対し、「これ以上、最も儲けを上げている企業が納税という社会的責任から逃れることを許さない」という、世界の指導者として重要なメッセージを発信する機会なのだ。

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