50年後に1億人

50年後に人口1億人を保持するというのは、なんとなくの数字ではなく、政府が真剣に目指す数字なのだ。
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政府の骨太の方針2014の文案の中に、下記の一文がある。

「人口急減・超高齢化に対する危機意識を国民全体で共有し、50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを目指す」

そしてさらに

「人口急減・超高齢化の克服に向けた諸課題への対応にスピード感を持って取り組んでいく時である。とりわけ、地域の活力を維持し、東京への一極集中傾向に歯止めをかけるとともに、少子化と人口減少を克服することを目指した総合的な政策の推進が重要であり、このための司令塔となる本部を設置し、政府一体となって取り組む体制を整備する。」

つまり、50年後に人口1億人を保持するというのは、なんとなくの数字ではなく、政府が真剣に目指す数字なのだ。

政府の推計では、現状のままでいくと2060年(50年後の目標年)に人口は8674万人まで減少する。2013年と比較して、なんと32%減だ。

さらに問題なのは、高齢化率が40%まで上昇し(2013年では25%)、生産年齢人口(15-64歳)は現在の7901万人から4400万人まで減っていく。

最近では新生産年齢人口(20-70歳)というのも使われているが、それでみても現状の8329万人が、2060年には4777万人まで減少する。

厚労省の社会保障審議会の中の特別部会の議論によると、50年後に人口を1億人で維持するためには出生率を早期に2.07まで上げることが必要になる。

現在の人口推計によると2055年の出生率は1.26。これは

次の式で導かれる。

(1-23.6%)x1.69x0.98

23.6%は生涯未婚率。1からこれを引くと結婚する人の割合が出る。1.69は夫婦が産む子供の数。0.98は離婚、死別の影響。

これを

(1-10%)x2.4x0.96

に引き上げれば、出生率は2.07になる。

厚労省の特別部会の試算では、2013年に1.43だった出生率を一直線に引き上げ、2030年に2.07を実現、その後、一定で推移すると、2060年にめでたく1億545万人を維持できる。

その場合、高齢化率は33%、新生産年齢人口(20-70歳)は5555万人となる。

ただし、そのためには生涯未婚率を現在の半分以下に抑え、夫婦間の子供の数は2.4人まで引き上げなければならない。

たしかに現在の若年世代の夫婦の予定子供数は2.0だが、希望子供数は2.4。つまり、何の制約もなければ2.4人の子供がほしいが、教育や収入などいろいろ考えると予定数は2.0まで下がっているのを、希望する数だけ産めるようにしましょうということだ。

生涯未婚率を引き下げるのは、どうするのかわからないが。

つまり結論は、少子化対策だけでは50年後に人口1億人は維持できないということだ。

(あと17年間で、未婚率が半分以下に減り、夫婦が希望するだけ子供を産むということが現実に起こりうると考えるならば、少子化対策で人口を維持することができるといえるが。)

50年後に人口1億人を維持することが必要だというならば、少子化対策はもちろんやらねばならないが、移民政策を真剣に考えなければならない。

今回、建設業を中心に、外国人実習生の拡充をやりますということになったが、実習生は現在15万人。仮に倍にしても30万人にしかならない。

外国から高度人材を積極的に受け入れますというのは、今のままでは数百人でしかない。

骨太の方針の中には唐突に「外国人材の活用は、移民政策ではない」という一文が出てくる。

しかし、人口問題の解決は、本気で取り組むならば、移民政策を抜きにはできない。

まさに人口急減・超高齢化に対する危機意識を国民全体で共有し、人口問題にどう取り組むか、幻想なしに議論を始めなければならない。

(2014年6月27日「ごまめの歯ぎしり」より転載)

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