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年金再検証への疑問

2014年03月08日 23時46分 JST | 更新 2014年05月08日 18時12分 JST

年金再検証が行われている。

2004年の「100年安心年金」までは、5年に一度、年金の財政状況を再計算し、つじつまが合わないと給付と負担の見直しのための法改正をやることになっていた。

しかし、2004年に年金は100年安心だと言ってしまってから、見直しは行わず、年金財政の計算だけしてほら大丈夫というだけのものになった。

それで2009年の再検証は、年金は大丈夫だと外向きに言うために数字の捏造に近いことが行われた。

厚労省は、2009年のこの再検証の数字があまりに現実的でなく、かつ、政府の他の試算と数字の整合性が取れていないという批判を受けた。

そこで、今回、厚労省は内閣府の出した「中長期の経済財政に関する試算」をベースに経済前提をつくろうとしている。

しかし、内閣府の「試算」は、アベノミクスがうまくいったケースを描いたものになった。

一橋大学の小塩隆士、日本総研の西沢和彦両氏をはじめ、内閣府の数字に疑問を呈する声が専門委員会でも相次いでいる。

例えば、この二人は内閣府は全要素生産性(TFP)を1.8とおいて経済成長率を計算したことに疑問を呈している。

全要素生産性とはなにかというと、実質経済成長率を計算するときに、資本や労働では表せない「残り」のこと。

つまり

実質経済成長率=労働投入量の伸び率x労働分配率+資本の伸び率x資本分配率+TFPの伸び率

ということになる。

労働投入量は人口が減少するなかで伸ばせない。資本の伸び率も現実的には低い。

だから実質経済成長率を伸ばそうとすればTFPの伸び率を高く設定するしかない。

内閣府の「試算」の「経済再生ケース」では、2014年度までは0.6と低いTFPの伸び率が2024年度以降には1.8まで高まるという前提になっている。

1.8というのは、バブルのころのTFPの平均値であり(小塩隆士氏)、あの2009年の再計算でも1.0という数字を使っていた。(2004年の再検証では0.7を使っていた)

TFPが1.8だと成長率は高くなり、公債残高のGDP比も安定する。

内閣府が参考ケースとして出した試算はTFPが1.0、成長率も低くなり、公債残高のGDP比は安定せず、発散する。

1.8を年金の再計算に使えば、みかけは当然に年金の姿も健全なものにみえる。

しかし、それは現実から乖離した数字になる。

東京財団の亀井善太郎氏らが提唱し、松井孝治前参議院議員、林芳正参議院議員が議員立法を目指していたように、さまざまな議論の前提となる将来推計を作成する組織を、政府から独立させ、立法府のもとに設置するということが必要だ。

西沢和彦氏は、「厚労省を批判しても始まらない。現実的、保守的な年金再検証をやらせて、ダメなら年金制度を改革するという政治のリーダーシップが欠けている。」と訴えている。

スタートしたときには決して間違っていなかった政策が、世の中の変化についていけなくなっているにもかかわらず、政策を変えてこなかったという点では年金問題は、まったく原発と同じである。

そしてやはり自民党がその責めを負わねばならない。だから、小手先のごまかしではなく、過ちを認め、抜本的な制度改革をやらねばならない。

(2014年3月9日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載)

「長生きにつながる性格」