現在、自民党の中には政調会長をトップとした財政再建のための特命委員会が立ち上がって議論が行われている。

現在、自民党の中には政調会長をトップとした財政再建のための特命委員会が立ち上がって議論が行われている。

一部のマスコミから、この特命委員会はどこまで本気なのかという声も聞かれるなか、委員会の中でも、政調会長に対して、この委員会は適当に流すのか、本気で財政再建をやるのかを問う声が出た。

それに対して、稲田政調会長が、本気で財政再建をやりきる、プライマリーバランスを2020年度までに黒字化するとはっきり言い切った。

さて、我々、自民党の行政改革推進本部は、先に内閣府が提出した中長期の財政見通しについて検証するように、この特命委員会から依頼を受け、行革推進本部の中に財政の中長期見通しの検討チームを立ち上げて内閣府の推計を検証した。

内閣府の試算では、このままでは経済成長ケースでも9.4兆円のプライマリーバランスの赤字が2020年度に残る。

「9.4兆円の歳出削減」という言葉があちこちで踊るが、内閣府の試算では、2020年度までに現時点から約20兆円の歳出増が見込まれている。

そのうち、消費税引き上げに伴う社会保障の充実分と国、地方の重複支出を差し引いた歳出の純増は15兆円。そこから9.4兆円の削減が必要だということ。現在の歳出規模を小さくするわけではない。

国民にその必要性をきちんと説明し、理解を得たうえで、政治の覚悟があれば、これを実現し、プライマリーバランスを黒字化することは可能だと我々は述べた。

特命委員会では、経済成長が更なる税収増をもたらすので、9.4兆円という数字は過大ではないかという意見も出た。

しかし、そもそも内閣府の経済成長ケースは、政策的には現政権と整合性が取れているとはいえ、全要素生産性がバブル期並みになるなどの非現実的な前提も盛り込まれている。

要するに、現実的にはかなり厳しいと思われるほどの成長を遂げても9.4兆円のプライマリーバランスの赤字が残るという推計なわけで、これよりも大きな赤字が残る可能性もあれば、内閣府の試算よりも税収弾性値が大きくなり、税収が増える可能性もある。

だから9.4兆円というのは一つの目安だ。

しかし、プライマリーバランスが黒字化しても、その外側に国債の利払いがある。

経済成長が実現し、日銀の異次元緩和が出口を探り始めれば、金利が上がり、国債費が増えていく。

プライマリーバランスを黒字化するというのはあくまでも一里塚であって、それがゴールではない。

もし、現実の税収弾性値が内閣府の試算に盛り込まれた1.1よりも高い値になって、税収が増え、プライマリーバランスの黒字化が早まったとしても、その先には財政収支の黒字化というより大きなゴールが待っている。

だからまず、プライマリーバランス赤字にきちんと対処する方策を考え、同時にその先の財政支出そのものの黒字化への対応を考えていくことが大事だ。

「9.4兆円」というのは、そういう数字だ。

さて我々の検証では、内閣府の推計では、明文化されていないが、独立行政法人、特別会計、地方公営企業が2020年に相当なプライマリーバランスの赤字を抱えることになっているのがわかった。

つまり、政府が公約しているプライマリーバランスの黒字化はSNAベースなので、その対象には国と地方の一般会計に加えて、独立行政法人や特別会計、そして地方の公営企業も定義上、含まれる。

ところが我々の報告後、政府の一部から、独立行政法人をSNAベースから切り離せば、見かけ上のプライマリーバランス赤字を小さくできるという発言が漏れ伝わってくるようになった。

独立行政法人が、真に国から独立して業務を遂行するようになるならば問題はないが、独立行政法人の位置づけをいじって、あたかもSNAのルール上独立したように見せかけて、やるべきことをやらないで済まそうという動きには反対だ。

(2015年4月24日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載)

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