選挙投票率だけじゃない?スウェーデンと日本の若者の社会への関心の違いがわかる6つのデータ

スウェーデンと日本の若者の違いは選挙の投票率の他にもいろいろあったので、ここにて共有します。

大学院の課題に取り組む中で面白いデータをみつけました。スウェーデンと日本の若者の違いは選挙の投票率の他にもいろいろあったので、ここにて共有します。情報源は、内閣府の子ども・若者白書と世界価値観調査(World Value Survey)からです。どちらもスウェーデンと日本を含んでいたので比較が可能になりました。

社会への意識

内閣府の子ども・若者白書(平成26年)によると、「社会をよりよくするため、私は社会における問題に関与したい」という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた満13~29歳の若者の割合は、日本は44.3%に対してスウェーデンは52.9%という結果になりました。最高は調査対象7カ国中でドイツで76.2%で、日本の若者が最低

こちらの質問では、「私の参加により、変えて欲しい社会現象が変えられるかもしれない」という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した若者の割合は、日本では30.2%で、スウェーデンでは43.4%。最高はアメリカでで、こちらも日本は最低値。

政治活動への参加

続いて政治参加です。ちなみに投票率を復習をしておくと、日本の2012年の衆議院選挙では20歳代の投票率は37.89%だったのに対し、スウェーデンの総選挙(2010)の18歳から29歳のスウェーデンの若者の投票率は79%でした。詳しくはこちらの記事をどうぞ。

世界価値観調査 ウェーブ6(2010- 2014)のデータには、様々な政治活動への関わりを29歳以下の世界の若者に対してアンケート調査していました。

まずは、政党への参加率について。この調査項目では複数のボランティア団体の活動から、それぞれの団体への参加度を聞いています。調査によると、日本もスウェーデンも9割以上の若者が加わっていないと回答していますが、"Inactive member"(加わっているが非活動)の若者の割合は、日本では0.7%に対してスウェーデンでは6.9%と、約10倍近くの差があります。この「加わっているが非活動」とは、おそらく会員ではあるが、中核の積極的党員よりは、やや受動動的な関わりをしている人とということでしょう。"Active member"(加わって活動している)若者は、日本の0.7%に対してスウェーデンは2.7%と、約4倍近くの差があります。

つづいて、同じデータからインフォーマルな政治参加に関するデータです。

こちらの調査項目では、平和的なデモ活動への参加に関して問うています。調査によると、これまで平和的なデモ活動に参加したことがある、と答えた若者の割合は、日本では0.7%、スウェーデンでは18.8%となっています。また、参加したことはないがするかもしれない、と答えた若者は、日本では26.7%、スウェーデンでは54.9%と差が開きました。おもしろいことに、日本の若者で「決して参加することはない」と答えた若者の割合は、約50%とスウェーデンと大差をつけています。

ちなみにフィンランド中学校の現代社会の教科書では社会を変える方法として、政治的なデモ活動の仕方を教えています。上記の教科書に普通に書いてあり、驚嘆したことを覚えています。

政治的な署名をしたことがあるかどうかを問うた質問(上記画像)でも、署名への参加回数がスウェーデンの若者の方が多いです。以下の別記事でも書いてありますが、スウェーデンの若者の政治への参加度は全体的に増えているとレポートは報告しています。

政治好きな若者が「増えている」国、スウェーデン | Tatsumaru Times

政治的な参加以外のアンケート項目も抽出してグラフにしてみました。

この質問では、「ある人は、自分自身の人生に対して完全に自由な選択肢があると感じており、またある人は自分の行動が自分自身に対して何の影響力もないと感じています。1を『全く自由にならない』、10を『思い通りに自由にできる』として、この指標を使って1〜10でどの程度自分の人生を自由にできると感じるかを答えてください」と質問をしています。結果は、上の画像からもわかるようにスウェーデンの方が日本よりも、自分の人生を思い通りにできると感じている若者の割合が多いです。とくに指標10の「思い通りに自由にできる」と答えた若者はスウェーデンでは20%に対して日本では6.8%になります。

日本もスウェーデンも同じ民主主義の価値に基づいた国なのに、どうしてこんなに社会に対する意識が異なるのでしょうか。以下の記事では、スウェーデンの様々な若者向けの施設や、若者団体の取り組みなどを紹介した記事などもまとめられています。

【保存版】スウェーデンの若者の選挙の投票率が高い理由 10記事 まとめ | Tatsumaru Times

それ以外にもスウェーデンは、先進国の脱工業化・リスク社会化が進行した早い時期から包括的な「若者政策」を推進したことなども宮本みち子教授らが指摘しています。日本でも2009年の子ども若者育成支援推進法からそれまでの健全育成政策から「若者政策」へシフトし、以降、その必要性が繰り返されて議論されています。

引きこもり、ニート、うつ病...社会的困難を抱える「若者」を総合的に支援する政策が、今求められている

先日、東京大学とストックホルム大学の比較教育研究科でジョイントセミナーがあり、拙くもプレゼンさせていただいたのですが、その際にスウェーデンと日本の若者政策の「参加概念」や、参加を推進する取り組みの違いについて話しました。例えば、スウェーデンの若者政策はその主要な目標がそうであるように「若者の社会的影響力を高める」ことを掲げています。一方で、内閣府が2010年に施行した子ども・若者ビジョンでは、参加に関しては「社会形成・社会参加支援. ・社会形成への参画支援 − 社会形成・社会参加に関する教育. (シティズンシップ教育)の推進」としています。若者の社会への参加の結果として生じるのが社会への影響力だと考えると、影響力という言葉を使っている若者政策とそうではないのでは、「参加」への認識が違うと言えます。

このブログでも様々な記事でスウェーデンの若者の参加の機会の豊富さについて触れてきましたが、先日あるおもしろい数字を発見しました。スウェーデンの若者の半数がなんらかの組織活動に参加しているという統計があるのですが、それを支えるのは大規模な政府による若者の団体活動への補助金制度があげられます。スウェーデン若者市民社会庁によると2015年は、2億1200万 スウェーデンクローナ(約3億円)が106の子ども・若者団体へ付与されました。この補助金を活用することで、オフィスの運営や人を雇ったりすることができます。スウェーデンの人口規模が日本の10分の1であることを考慮すると、これはなかなか太っ腹じゃないでしょうか。補助金はこちらから申請できます。丁寧に申請の仕方も動画で解説してますね。

さらにおもしろいのはこの補助金を申請する際には様々な条件があります。若者団体への条件のひとつが、「6割のメンバーが16歳から29歳でないといけない」という条件があるのです。こうすることで団体の若さを保っているのです。さらに、この補助金を分配する際には、LSUというスウェーデンの全国の若者団体の代表から構成されるの若者団体のための圧力団体が、どのような種類の団体にどのくらいの補助金を充てるかということを決定するのです。

スウェーデンのこういった取り組みを発見するたびに、「若者の社会参加」とはなんなのかを考えさせられます。

【引用した記事】

政治好きな若者が「増えている」国、スウェーデン

【保存版】スウェーデンの若者の選挙の投票率が高い理由 10記事 まとめ

スウェーデンの教育・子ども若者政策の今と日本への提言

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