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日本・スウェーデンと比較してわかった韓国の若者の今

2017年04月10日 14時24分 JST | 更新 2017年04月10日 14時24分 JST

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日本と似ている韓国の暮らしの状況

最近の韓国の若者の状況は、2015年ごろに流行語にもなった「ヘル朝鮮」という言葉が体現しているという。「ヘル」とは英語の「地獄」を意味する単語"Hell"を意味する。激しい受験競争、高い失業率さらには自殺率の高さなど、韓国社会の生きづらさがこの「地獄(ヘル)のような朝鮮」という言葉として20代、30代の若者の間で使われるようになった。

若者の現況をつかむ前に、まずは韓国社会の全体の状況を俯瞰してみる必要がありそうだ。

せっかくなのでスウェーデンの若者政策とも比較してみたい。

OECD より良い暮らし指標

OECDの「より良い暮らし指標(Better Life Index)」によると、OECD加盟国38カ国のなかで韓国は、市民参画、教育と技能、安全、雇用の面において平均以上であるが、収入と福祉、幸福度、環境、健康、社会的な繋がり(コミュニティ)そして、ワークライフバランスにおいては平均以下をマークしている。

以下の表では、日本と韓国、スウェーデンのより良い暮らし指標(2016)のそれぞれの指標における38カ国中のランキングを落とし込んでみた。

より良い暮らし指標(OECD2016)による日本・韓国・スウェーデンの社会状況の比較

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出典OECD より良い暮らし指標 (Better Life Index 2016) 参照

全体的にみて韓国社会は、スウェーデンよりも日本に近い状況にあることがよくわかる。日本が良い点数を出していない分野では、ほとんどが韓国でも同様にいい点数を出していない。例えば、健康、生活満足度、ワークライフバランスなどだ。

その中で例外的にも韓国が日本よりも良好な状況である分野は、教育と市民参画の分野であることがわかる。韓国の教育の点数が高い理由の一つには、指標の一つである大学進学率の高さがあげられる。

韓国では25歳から64歳の85%が大学レベルの第三次教育を修了している。これはOECDの平均値である76%よりもはるかに高い数字であり、日本の78%、スウェーデンの56%と比べもて非常に高い。

また国際学習到達度調査(PISA)でも、韓国は優秀な成績をおさめていることは周知の事実だ。ちなみに就学歴年数(5歳から39歳の間に公的な教育機関で就学する平均年数)では、17.5年と、日本の16年、スウェーデンの19.1年の間に位置する長さだ。

市民参画の指標の内訳はどうだろうか。韓国では選挙投票率76%という、OECD平均の68%をはるかに上回る高さが記録されている。選挙投票率は、経済状況が投票率に影響するが韓国では底辺層20%の投票率も71%である。

若者発達度調査

韓国の市民参画度の高さは、若者に焦点をあてた別の国際調査でも同様に報告されている。若者の社会的な状況を指標化した、若者発達度指標(YDI:Youth Development Index)と世界若者幸福度指標(The Global Youth wellbeing Index) で日本と韓国を比較しても、市民参画は韓国の方が日本よりも優れていることがわかる。

以下、若者発達度調査において市民参画(Civic Participation) の項目では大差が開いている。

若者発達度調査 (YDI)

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出典 若者発達度調査

上のグラフで日本の政治参加(Political Participation)の指標が韓国よりも高いのはなぜだろうか。

おそらく、この指標の①内訳に若者政策の有無と、②国政選挙においてどのくらいの頻度で投票のための教育がされているか(ACE Electoral Knowledge Network提供)、という指標のみをカウントしており、実際の選挙投票率は反映されていないためだと推測できる。

ちなみに若者発達度調査の全体のランキングでは、日本:10位、韓国:18位、スウェーデン:13位という結果である。

世界若者幸福度調査

別の調査、CSISがおこなった世界若者幸福度調査においても似たような傾向がみられる。

世界若者幸福度指標 (The Global Youth Wellbeing Index)

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市民参画の点数は日本よりも韓国の方が高いことがわかる。以下の項目別のランキングでも、市民参画(Citizen Participation)においては日本:23位、韓国:11位、スウェーデン:12位という結果である。

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出典 世界若者幸福度調査

ちなみに、世界若者幸福度調査においては全体のランキングで韓国は、トップのオーストラリア、2位のスウェーデンに次いで3位にランクインしている。日本は7位である。

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このランキングの中で、日本が韓国とスウェーデンよりも劣っている項目の一つが「ICT」である。といっても市民参加ほど差は大きくないが、トップは韓国、2位はスウェーデンで、日本は6位である。

以上、3つの調査を串刺しにして明らかになったのは

  • 全体的にみて若者の状況も社会的背景は、韓国と日本社会はスウェーデンよりも重なる部分が多い
  • 日本と韓国で状況がよくないのは、健康、生活満足度、ワークライフバランスであるが、教育のレベルは高いと評価されている
  • 市民参加の項目においては、韓国がどの調査でも日本よりも良好な状況であると報告されている

ということだ。

量的なデータではみえない韓国の若者の現状

3つの国際調査を俯瞰しみてたが、順位表のみの比較だけでは概況はなんとなく掴めても、現実社会における若者が抱える社会的状況を想像することは難しい。「ヘルコリア」に現れる若者の深刻な社会状況は、これらの数字だけ追っていては決してみえてこない。

2017年3月下旬、韓国(主にソウル)の若者支援の取り組みを視察した。若者の抱える問題とそれを解決するために活動している若者当事者から話を聞くことができるのは、大変貴重な機会であった。

この記事を韓国の若者政策の下地として、以降数回にわけて視察で伺った話を紹介していく。