生徒も学校の意思決定に参加できる?スウェーデンの学校制度

スウェーデンの若者には様々な形で社会に関わる機会があることを、様々な団体を紹介することでこのブログでは扱ってきました。びっくりするくらい色々あるのですが、先日、「え?まだそれでも満足してないの?」というような記事を見つけました。

スウェーデンの若者には様々な形で社会に関わる機会があることを、様々な団体を紹介することでこのブログでは扱ってきました。びっくりするくらい色々あるのですが、先日、「え?まだそれでも満足してないの?」というような記事を見つけました。スウェーデンのニュースを英語で提供しているTheLocal の記事のタイトルが以下の通りでした。

「若いセルビア人、スウェーデンの学生の声を訴える(Young Serbian shouts for students in Sweden)」

右側がDejan Bojic | Youth Delegates raise their hands for education | Flickr

デヤン・ボヤニッチ(Dejan Bojanic)は24歳のセルビア人で、現在はストックホルムのセーブ・ザ・チルドレンでインターナショナルコーディネーターとして働いており、その他にも若者主体のチャリティー団体の国際的なネットワークを構築する新しいプロジェクトにも関わっているようです。また以前には、国連国際教育施策部門の若者アドバイザリーグループにも参加し、事務総長の潘基文やノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイと直接会ったりもしています。

その彼は、スウェーデンの学力の低下の理由を「学習者が教育制度の意思決定過程へ参加できていない」からだとしているのです。スウェーデンらしい考え方だなと思いながらも、スッキリしませんでした。というのも、スウェーデンには若者が意思決定の過程に参加でき、声を届ける様々なチャンネルであるからです。中学では生徒会の連合であるスウェーデン全国生徒会 (SVEA) 、高校ではスウェーデン生徒会組合(Sveriges Elevkår)、大学では各大学に学生組合(universitetet studentkår) 、全国の若者団体を束ねるプレッシャーグループのスウェーデン若者協議会(LSU)、地方自治体の若者会 (ungdomsråd)があることを知っていたからです。これらの団体はただのボランティア団体ではなく、政府から補助金をもらって人を雇って(だいたい20代前後の若者)、ワークショップやイベント開催、出版、啓発、それぞれのグループの若者の声を政府に代弁したりしています。

これらの団体に訪問してインタビューを行ってきた身としてはどうしても腑に落ちなかったので、ちょっと調べてみました。

おそらく彼は、スウェーデンでかつて存在したLSEの必要性を主張しているのかもしれません。LSEとは"Lokal styrelse med elevmajoritet"の略で、 英語に直訳すると"Local bord with student majotrity"、つまり日本語だと「生徒が多数を占める地域評議会」で、1997年から2006年までの間存在したようです。97年に政府は、地方自治体の高校でLSEのトライアルを実施することを決定。これにより最終的に学校評議会によって取って代われる地域評議会に一定の責任と決定権を付与する権利を自治体に与えることになりました。

学校教育庁のレポートによると、これは子どもの権利条約に基づいており、子どもの意見表明の、スウェーデンの教育法(1985年:1100)、カリキュラム(Lpf 94)でも、生徒が学校の活動の制度編成と計画にどんなことであろうと生徒が積極的に参加できる権利があることを強調しています。この評議会の目的は、学校において人権と民主主義教育を保障することだそうです。学習に対するモチベーションを高めることが教育の質の向上につながり、生徒自身の専門性を活用することがこの評議会の効果であると、このレポートで述べられています。しかし、2006年に中道派連合が政権を奪還しその1年後に廃止が決まりました。それまでに様々な議論があったようですが、相変わらずスウェーデンらしい発想だなと感心しました。今後、より掘り下げていきたいです。

(2014年11月22日「Tatsumaru Times」より転載)

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