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質屋アプリCASHが開始16時間で査定停止に陥った理由

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2017年6月28日にリリースされた、質屋アプリ(らくちん買い取りサービス)CASH。

このサービスは、いろいろ物議を醸し出した末に開始16時間で査定のサービスが停止になってしまいました。

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法律面や倫理面、そもそもビジネスモデルとして成立するのかまで、各地でいろいろ議論されているわけですが、ここでは、オペレーションの面でどうかということを考えてみたいと思います。

このサービスを提供している光本勇介氏(バンク社 代表取締役兼CEO)のtwitterによると、たくさんのモノが送られてきており、処理が追いついていない状況のようです。

これ、ヤバくね?

私なんかは、このサービスを見た瞬間

「背面にヒビが入っているなどの写真には写らないダメージがある気がするけど私にはよくわかんない、ボロiPhoneを安く大量に集めてきてアカウントたくさん作って送ればいいじゃん」

「香港で「コレ、ホンモノ。香港人、嘘ツカナイ」という店員が1000円くらいで売ってくれた「ホンモノ」のヴィントンのバックを送ればいいじゃん」

なんてことを思いました。

このサービスの肝は、モノの買い取りというのはどーでもよくて、お金を貸して、貸したお金以上のお金を返してもらうことだと思うので、私みたいなことを考え、実行する人がたくさん現れると破綻します。

そういう人を排除するためには、きちんと送られてきた製品を精査し、壊れてたり「本物」じゃないモノを見つけ、対応をする必要があります。

これには、大量の人員と場所が必要になります。

金融業が儲かる理由

ソニーや楽天が最近金融業に力をいれて、そこで大きな利益を生んでいるように、金融はスケールすると非常に儲かる商売です。

その理由のひとつに、情報だけを扱う商売なので、規模が大きくなってもかかる手間があまり変わらないということがあります。

10万円貸して、11万円返してもらって、1万円利益を得るのと、1000万円貸して、1100万円返してもらって、100万円利益を得るのとではかかる労力は大きく変わりません。

だから、大きなお金を動かせるなら、金融はものすごく儲かるわけです。(超絶はしょった文章なので、ツッコミ不要です)

このCASHのサービスも、このように情報だけをやりとりするサービスであれば、莫大な利用者が使ってくれたことで、大きな利益を生み出せるということになります。

しかし、残念ながら、このサービスにはモノが介在します。

モノを介在させると話は変わってくる

「送られてきた写真を元に、お金を支払って、後日支払った以上のお金を返してもらう」

これだけであれば、モノは介在しません。主催者の人もここで完結してくれる人が多いということを想定してサービスを作ったのだと思います。しかし、実際は16時間で7500個ものアイテムが送られてくることになりました。

先ほどのtweetに「数日後に相当数のアイテムが私たちのオフィスに届くことになっており」と書いてあるように、アイテムの送り先は倉庫などではなく彼らのオフィスになっているようです。どんだけ広いオフィスなのかはわかりませんが、7500個ものアイテムを保管するスペースはあるのでしょうか?

また、「いっしょにさばいてくれるバイトの人を募集します」と書いてありますが、そんなバイトの人に「香港人が「ホンモノ」と言って売っている1000円くらいのヴィトンのバッグ」と、「銀座で売っている数万円の本物のヴィトンのバッグ」の見分けはつくのでしょうか?
(玉石混合のまま、買い取り業者に送りつけたら、買い取り業者が処理出来ずに、バンク社との取引を停止すると思います。なにせ「ホンモノ」のアイテムの割合が非常に多くなりそうな案件ですので)

私の個人的な推測ですが、このビジネス、情報のやりとりだけで終わるビジネスに必要な処理能力と、モノを介在させるビジネスに必要な処理能力を混同させてしまったことが、今回の取引停止の原因だったのではないかと思うのです。

やってみなくちゃわからない

こういうことは、やってみないとわからないことが多々あります。我々も、カンボジアのカレー屋で年中こんな課題にぶつかります。

はじめてカンボジアにきた大学生のインターンシップ研修生が、現地で調査を行い、意気揚々と「コレなら売れますよ!」と言ったモノが平気で空振りしたり、オペレーションが回らなかったりします。

例えば、とあるサッカーの試合での販売権を得て、リサーチをした結果、「この試合は金持ちがたくさん来るので、ビールが売れますよ!カレーなんか売らないでビール売りましょう!」といって、ビールを大量に仕入れて会場に行きました。

思惑通りビールはバカ売れだったのですが、試合場に缶の持ち込みは禁止です。

全てのビールをコップに移し替えて売るわけですが「ビールの缶を開ける→コップをとりだす→コップにそそぐ(泡が・・・)→お客さんに渡す→お金を受け取る(おつりが・・・)というオペレーションが予想以上に時間がかかり、お客さんをさばききることができませんでした。

モノを動かすことへの想定が甘かったが故に、目標の売上に届かなかったのです。

このように、商売ってやってみないとわからないことだらけです。

CASHのサービスも想定外のことだらけで大変だと思いますが、この失敗を元に学んで(法律面とかもちゃんとクリアして)人の役に立つ様なサービスになってくれたらなと思います。

私は、こういう失敗(および成功)を短期間、安価で体験できるサービスとして、カンボジアでカレー屋やっています。私自身もいろいろ学習しながら、カリキュラムを整え、多くの研修生の宿泊や安全確保、教育体制を作りながら、徐々に規模を拡大している状態です。

情報はサーバーを増やせばスケールできますが、モノは地道に拡大していかないと上手くいかないんです。