BLOG

ラブホテル?古民家?東京ゲストハウスムーブメント最前線

2015年01月22日 15時50分 JST | 更新 2015年03月22日 18時12分 JST

海外の観光地では、低予算で旅行するツーリストの受け皿といえばゲストハウスです。日本ではあまり一般的ではありませんでしたが、北海道や京都、沖縄など元々あった場所だけでなく、ここ数年、全国で急速にゲストハウスが増え続けています。

東京はそんなゲストハウスムーブメント激戦区のひとつ。外国人観光客を中心に、安い宿を求めるツーリストの間で一般的になりつつあります。

今週のタビイコムは、東京の歴史ある下町で人気を集める2つの代表的なゲストハウスから、ホテル宿泊では決して体験できない東京観光の「新しい形」をご紹介します。


●ゲストハウスってどんなところ?

日本ではまだあまり馴染みのない宿泊施設ですが、要は「サービスが極限まで簡略化された素泊まりの宿」のことです。

掃除はハウスのスタッフが行いますが、基本は何でもセルフサービス。布団の上げ下ろし、シーツ交換などは各自自分で行い、食事もついていません。通常の宿と同じく個室もありますが、特徴は「ドミトリー」と呼ばれる相部屋があること。一番安いタイプは、二段ベッドがずらりと並んだような部屋であることが多いです。歯ブラシなどのアメニティーグッズはなく、風呂トイレも共同が基本。そのかわり、宿泊費が格安なので、バックパッカーなどの長期旅行者に人気があります。

ゲストハウスの一番の特徴は、宿泊者が交流できるリビングスペースがあることです。各国から集まったツーリスト達が日々会話を交わし、友人になれる。そこがバックパッカーから愛されてきたもう一つの理由なのです。

このようなタイプの宿は、日本ではユースホステルが有名です。宿泊する側にとってユースホステルと大きな違いはないですが、日本に限って言うと、ユースホステルよりもゲストハウスのほうが海外からの宿泊者が圧倒的に多いので、国際交流できる点が魅力となっています。


●東京のゲストハウス1:草分け的存在の「カオサンゲストハウス」

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_1.jpg

現在東京を中心に全国で13店舗が営業中の、業界最大手のひとつカオサングループは、2003年に開業した草分け的存在。2013年にはJapan Backpackers Link Award大賞も受賞し、常に業界をリードしてきたゲストハウスです。

それぞれの施設でコンセプトが異なることが大きな特徴で、なかでも注目株は「カオサンワールド浅草」です。エントランスを入ってすぐに目に飛び込んでくるのは、スイッチのついた部屋の内装写真が並んだ、あのボード。

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_2.jpg

こちらのゲストハウスは、なんとラブホテルを改装したものなのです!

お話を聞いたカオサングループの東京店舗ゼネラルマネージャー馬込将日児さんによると、カオサンゲストハウス設立の契機は日韓ワールドカップだったそうです。

「ワールドカップで外国人が東京に集まった時、山谷の簡易宿泊所がゲストハウスの代わりになったんですよ。それを見た初代社長が、『東京にもバンコクのカオサン地区のような場所を』と考えて作り始めたのがこのカオサンゲストハウスです」

ラブホテルという特殊な施設をゲストハウスにした理由は、建物の特性にあったとのこと。通常のゲストハウスでは水回りは共同ですが、ラブホテルを使えば各部屋に水回りを確保できるし、エレベーターもある。宿泊者によりよい環境を提供できる価値が、ラブホテルにはすでにあったというわけです。

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_3.jpg


2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_4.jpg


2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_5.jpg


2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_6.jpg

それぞれの部屋には、ガラス張りの壁やシースルーの浴室をそのまま活かした内装の部屋もあるのです。知ってる日本人が見れば、なるほどラブホテルそのもの!

稼働率は常に9割を超えており、そのうち95%以上が外国人。高いホスピタリティーで外国人ツーリストからの絶大な支持を集めています。しかし宿泊するツーリスト達は、常に性風俗と一緒にあった日本有数の繁華街である浅草の歴史も、ラブホテルという施設のことも知りません。

「やはり日本文化の一面を知ってもらうという意味でも、ラブホテルの色を残したいと思いました」

目のつけどころがさすがに草分け的存在です。一種猥雑なバンコクのカオサン地区を思わせるような、独特の個性には思わず唸らされました。

カオサンワールド浅草

http://www.khaosan-tokyo.com/ja/world/

東京都台東区西浅草3-15-1

03-3843-0153

※オンライン予約のみ


●東京のゲストハウス2:下町の古民家で日本文化を満喫「toco.」

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_8.jpg

もうひとつご紹介するのは、カオサンワールドとは正反対の雰囲気を持つゲストハウス「toco.」。同じく下町・入谷にあり、現在東京で最も勢いのあるゲストハウスのひとつと言われています。2010年開業の新鋭ながら、カオサンワールドと同じくJapan Backpackers Link Awardの大賞受賞歴がすでにあるところでも、人気の高さが伺えます。

カオサンワールド浅草が効率化と猥雑さで日本のゲストハウス文化を表現するとすれば、「toco.」は古民家を改装した小規模の施設という正反対のアプローチで、東京のゲストハウスムーブメントの1シーンを担ってます。

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_9.jpg

創立メンバーのうち数人は元々バックパッカーでした。ゲストハウス作りのコンセプトは「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」。海外のゲストハウスを周りながら旅してきたからこそ出てくる、ストレートなコンセプトです。下町の住宅街にある、人の温もりが息づいた古き良き建物こそ、旅で得られるものや異文化体験を共有する場に相応しい。toco.の扉をあけると、そんな感覚がしっくりと心に落ちてくるのです。

そこは日本らしさと聞いて人々が持つイメージそのままの、初めて来たのに懐かしさを感じてしまう場所でした。居心地がよく、いつまでもその場にいたい気持ちになれる。リビング&バースペースで顔をあわせる旅人たちと、知らぬ間に話も弾みます。

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_11.jpg


2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_12.jpg

お話を聴かせてもらったのは、ほっとする笑顔で旅人を迎えるスタッフのケイラ・コソバックさん。高校時代に初めて日本へ留学し、大学で日本語を学んだアメリカ人だそうですが、日本生まれかと間違うほどの見事な敬語に驚きます。日本の結婚式場で働いた経験もあり、着物の着付けもできるという、本物の日本通なのです。そんなコソバックさんのマルチカルチャーな雰囲気そのものが、このゲストハウスの「色」を表しているようでした。

客層は外国人がメインで、オーストラリア人、韓国人、台湾人など。日本人も2~3割はいるそうです。韓国人や台湾人は日本文化をよく知っている。彼らが惹かれる東京の景色への憧れに、存分に応えられる美しさとホスピタリティーがこの宿にはあります。

2015-01-13-taviicom_20151013_37asdfasd_10.jpg

リビング&バースペースではギャラリーショップの企画展など、宿泊者以外も参加出来るイベントが行われることもあります。toco.はただの宿泊施設ではなく、やはり熱い盛り上がりのあるクラフトブームにも通じる「おしゃれで洗練されたゲストハウス」のお手本のような場所です。ものづくりの街・蔵前に、江戸時代から続くおもちゃ屋さんの倉庫を改装した姉妹店「Nui.」もオープンしました。toco.とNui.のコンセプトは、今後の日本のゲストハウス作りに大きな影響を与えるものと思われます。

ゲストハウスtoco.

http://backpackersjapan.co.jp/

東京都台東区下谷2-13-21

03-6458-1686


*****

「カオサンワールド浅草」と「toco.」は、これからさらに日本で増えていくゲストハウスの2大潮流となるでしょう。都市部を中心に、多くの低予算ツーリストのニーズを的確に満たすことで高い満足度を与える大規模施設と、観光で地方再生を目指す地域でも人気の、クラフト感のあるおしゃれさを追求した小規模のゲストハウス。どちらも日本ならではの、個性豊かな新しい宿の形ながら、英語での交流もできる新しい「日本の宿」の形態です。

ゲストハウスが発展することで「日本は費用がかかりすぎて旅行しづらい国」というイメージが変わり、世界各地の観光客に愛される国になれるはずです。そしてそれは、日本人のツーリストにとっても嬉しい変化であることに間違いありません。

(写真・文 松下祥子)