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働くママの助けとなるか?シンガポールに学ぶ「外国人メイドのいる暮らし」の現実

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女性が働きながら子育てをする環境を作るため、外国人メイドの受け入れが関西圏の国家戦略特区で始まろうとしています。しかし、住み込みメイドを雇う生活とはどういうものなのか?メイドに馴染みのない日本人にはピンときません。
そこで今週のタビィコムは、メイド大国シンガポールの「リアルなメイドさん事情」をご紹介します。果たして、これが遠くない未来の日本の姿となるか否か?

●メイドのいる風景
夕暮れ時になると、プレイグラウンドで子どもたちが遊んでいる横で、器用に子どもたちを監視しながらもおしゃべりに夢中のメイドさん達。片手に持つ携帯電話でさらにおしゃべりを上乗せをするなんて人もいます。フィリピンやインドネシア、タイそしてミャンマーなど、広く東南アジアからやってきたメイドさんたちは、おしゃべりが大好きな人々です。

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子供や老人の夕涼みに付き添って、自分たちも休息するメイドさん達


彼女たちは雇用主が起きる1時間から30分前に起き、食事の準備、子供たちの送迎、掃除、洗濯、買い物、幼児や老人の世話などをこなし、夜9時から10時の間にその日の仕事を終え、自室で自由時間を楽しみます。休みは通常週に一度。雇用主が出かける時は荷物持ち兼ナニーとして付き従い、旅行先にも雑用係としてついていくこともあります。
シンガポールの銀座と呼ばれるオーチャード・ロードは、土日になるとおしゃれしたフィリピン人メイドさんで埋め尽くされます。バングラデシュ辺りから来た肉体労働のお兄さんからのナンパを楽しんだり、あちこちに座り込んで持ち込んだお弁当を食べたりセルフィー(自撮り)を楽しんだり。露出度の高いファッションに長いストレートヘアーの女性たちがひしめく様子に最初はぎょっとするのですが、慣れてみるとそれもシンガポールのほのぼのとした景色に見えてきます。
各国のメイドさんのなかでも一番人気はフィリピン人。仕事もできるしこども好き、なにより英語でコミュニケーションをとれることが人気の理由です。5世帯に1世帯の割合でメイドさんを雇っているシンガポールでは、HDB団地やコンドミニアムの中をTシャツ短パン姿で闊歩するメイドさんの姿は日常風景そのものなのです。

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フィリピン人のメッカ「ラッキープラザ」の前は、休日になるとフィリピン人女性たちでごった返す


●メイド普及の背景にあるもの
シンガポールでメイドといえばほぼ「住み込みの外国人労働者」を意味します。ファミリーで住める物件には、多くの場合、3畳程度で窓もエアコンもない「メイド部屋」というスペースがあります。そんな状況下でも、貧しい本国での暮らしを思えばシンガポールでの住み込みメイドの仕事は大変魅力的で、現在21万4500人(2013年調べ)の外国人メイドがシンガポールで働いています。
この国では男女共働きが普通で、2014年の統計によるとシンガポール国民の平均世帯月収は1万503シンガポールドル(以下SD)。現在のレートでおよそ96万円です。超学歴社会のため高騰する教育費をまかないながら、高価な外食や旅行も楽しめる収入を得たいと思ったら、夫婦でしっかり働くことは必須なのです。1978年に始まった外国人メイド政策は、そんなシンガポール人のニーズに応える柱となってきました。

近年、メイドの仕事で比重が高くなってきているのは老人介護です。日本と同じく少子高齢化が進むシンガポールですが、「老人介護は家庭でするもの」という社会通念があるため介護施設が極端に少なく、老人介護をメイドに担ってもらわなくては立ち行かない現状があります。メイドなしには、シンガポールの主流層の生活は成り立たないのです。

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犬がいる場合は当然、散歩もメイドさんの日課です。


●メイド受け入れシステム
シンガポールで働く外国人メイドの賃金は月におよそ400SDから600SD。それだけを聞くと手軽に雇える感じがしますが、実際に雇うためにはもう少し費用がかかります。まずは月々国に払う「使用人税」。これが200~295SDで、その他メイドの食費や里帰りのための航空券代などを入れると、そう安いとも言えない額です。さらにエージェントへの支払いや政府に払う保証金、メイドの医療保険など、高額の初期費用がかかります。
メイドの受け入れにも様々な手順を踏まなくてはなりません。
まずは政府の行うオリエンテーションで、メイドに関する様々な法的規制を学びます。その後エージェントと契約し、紹介されたメイドを面接、決定したら労働ビザを申請、この手順を経てやっと採用となるのですが、実際にはもっともっと煩雑な手順や決まりがあります。簡単なようでいて、意外と簡単じゃない、それがシンガポールのメイド事情のようです。しかしシンガポール人や欧米人家庭だけでなく、専業主婦の日本人家庭でも、子供が複数になると雇う人が増えてきています。最近メイドを雇った日本人の友人が「いつも家がきれいなの!」と感動していました。そのくらい、メイドのいる生活は楽だということなのでしょう。

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出会いを楽しむ若いメイドさん達


●とはいえやっぱり大変なこともある
メイドを雇えば確実に女性の社会進出の後押しとなり、発展途上国の人々の大きな収入源にもなる。その点だけを見ると、この制度はいいとこずくめのようにも思えます。しかし現実には、多くのトラブルを含んでいるのも実情です。
よく聞くのは、メイドが家族のものを勝手に使う、勝手に食べてしまうという話。家族の旅行中にボーイフレンドや友人を家に呼び込んでしまうという話も聞きます。他には盗難、メイドの妊娠、雇い主の生活(食事や衛生概念など)に合わせられない、雇い主との性格の不一致、雇い主の子供への虐待等々。フィリピン人以外のメイドを雇う場合は、いつまで経っても英語を話せるようにならない場合も困ってしまいます。そういった明らかな問題でなくても、新人メイド、特にミャンマーの山奥などから来る人の場合は、日本人の生活(電化製品の取り扱い方から料理まで)を教育するだけでも一苦労です。
また、メイドのほうが虐待に遭う場合も多々あります。休みを取らせない、食事を与えない、過重労働、肉体的(性的含む)暴力など虐待の形は様々で、特にフィリピン人以外のメイドは英語が話せないという理由だけで激しい虐待に遭うことも。ガラス面の外側の窓拭きを強要されたメイドの転落事故が相次いだため、現在では法律で禁止されています。ミャンマーはメイドの待遇改善のためこの9月にシンガポールへのメイド派遣を停止するなど、メイドの虐待問題は国家間の問題へと発展しています。


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メイド大国シンガポールで起こっていることは、日本で外国人メイドが普及した時に起こる問題を先取りしているかもしれません。そもそも外国人が身近に住むことに対して狭量な日本人が、家の中だけでなく近所中にアジアからの外国人が闊歩する状態を許せるかどうか?言葉の問題を乗り越えるのも大変でしょう。メイドが日本語を話せるようになるまで、どのようにしてコミュニケーションを取っていくのか?
しかし、メイド受け入れで生じる様々な問題を乗り越えたその先には「本物の国際交流」が待っているはずです。日本での外国人メイド受け入れの今後を、興味深く見守っていきたいと思います。

(松下祥子)

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