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これがマーライオンの性格?シンガポール人の国民性「キアス」とは何か

2014年12月18日 02時07分 JST | 更新 2015年02月14日 19時12分 JST

地球の歩き方調べによる「2014年海外旅行人気ランキング」でアジア5位にランクインしているシンガポール。高まる注目度の一方で、その国民性についてはあまり知られていません。果たして、華僑がメインの多民族国家であるシンガポールの人々は、どんな気質を持っているのでしょうか?

今週のタビィコムは、そんなシンガポーリアンの国民性を一言で表す「キアス」をご紹介したいと思います。


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Photo by Luke,Ma / Abroad - Back on Dec 01

●絶対勝ちたい!

今から遡ること14年前、シンガポールでは日本のとあるキャラクターを巡って大変な事件が起きました。名づけて「ハローキティ暴動」。マクドナルドが販促キャンペーンで限定版ウエディング仕様のキティとダニエルを特典にしたところ、評判が評判を呼び数万人規模の人々がマクドナルドに殺到、当然行列は恐ろしいほどの長さになり、そのうち殴り合いの喧嘩や店長への脅し、店内破壊など、文字通りの「暴動」へと発展してしまったのです。そしてこの騒動は2013年にも再燃。やはりマクドナルドのキティキャンペーンで黒い骸骨キティの苛烈な争奪戦の結果、行列への割り込みを巡って大喧嘩になる事件が起こりました。

筆者のシンガポール人の知り合いにも、このキティを手に入れた写真を誇らしげにフェイスブックに投稿する人がいたのですが、日本ではまず考えられないこうした騒ぎの根底にあるのが、シンガポーリアンの持つ「キアス(KIASU)」なのです。キアスとは「負けたり失敗するのが怖い」という意味で、それが「絶対負けたくない、人より得をしたい」という価値観となって定着しています。たとえばこのキティ暴動でいうと、限定版キティが話題となれば、それを絶対ゲットしたい、持っている人に負けたくないと強く思う。暴動となるほどの熱狂を呼んだとなると、なおさら「持たざるものになるまい」という競争心を煽られるわけです。


●キアスなシンガポールの日常風景

このキアスという言葉は、シンガポール華人の故郷である福建省の言葉から来たシングリッシュ(中国語に似た文法やアクセント、マレー語や中国語由来の単語が入ったシンガポール特有の英語)で、漢字で書くと「驚輸」。シンガポーリアンが自身の気質を自嘲気味に表現する言葉です。そんなシンガポーリアンの日常には、日本では見られない特徴的な風景があります。そのいくつかをご紹介すると......

その1 行列

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Photo by JasonDGreat


日本人もよく行列を作りますが、これは流行しているもの、皆がいいと思うものを自分も得たいという横並び文化や、○時間も並んで買ったという「苦労」から非日常感を得たいからなんて価値観が影響していると言われていますが、同じく行列好きのシンガポーリアンが並ぶ動機は全く別。行列や長いウェイティングリストを目にすると、「その行列に並ばなければ、皆がほしがるようなものを自分だけ手に入れ損ねる」と競争心が煽られるのだとか。結果、ある店の列だけがどんどん長くなって周りの店から人が消え失せるなんて現象が、ランチ時などに日常的に見られるのです。


その2 BUY ○ GET ○ FREE

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「○個買えば○個おまけでついてくる」というよくある販促で、これ自体はどこの国にもあるものです。しかしシンガポールでは数が違うのです。スーパーやコンビニに入れば常に何かしらの「ついてくる」キャンペーンがあり、数に届かない量を買おうとすると、「あとひとつ買えばもうひとつタダでつくよ。ほんとにいらないの?」と何度も聞かれたりするのです。

「ただでおまけがついてくる」以外にもシンガポーリアンのKIASU気質が刺激されるのは「特売品」です。すごく安い商品が特売で出ると、必要もないのに大量に買い込んだりするようです。安いものをたくさんゲットしたことで、より勝った感が増すのでしょうか?


その3 値段を聞く

知り合いのシンガポーリアンは、筆者の持ち物で新しいものを見つけると「いくらだった?どこで買った?」と必ず聞いてきます。たとえば部屋を探す時にも「家賃をあと100ドル下げられれば、次の更新の2年後までには2400ドル得できるから絶対下げる」と頑張ったり。同じものを買うならなるだけ安いものを探し、その差額から得る「得した感=勝ち」や、人より高いものを買ってしまった「損した感=負け」に敏感に反応する様子も、シンガポールのよくある風景です。


その4 タダのものは何でももらう

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シンガポールでファストフードなどをテイクアウトで買うと、袋のなかに大量のケチャップやチリソースの小分けパックが入っていたりします。これはシンガポーリアンの「タダのものは何でももらう」という気質にお店側が配慮したもののようです。一方で、紙ナプキンのフォルダーに「取るのは使う分だけに」と書いてあったり。ごっそりにとっていく人がいるからです。

キアスの例で代表的なものに、「ビュッフェに行くと皿から溢れそうなくらい、山盛りに料理を取る」というものがあります。とにかく取れるものは取れるだけ取る。このお得感が、シンガポーリアンにとって何とも言えない心地よさとなっているようです。


●キアスの背景にある競争社会

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シンガポーリアンの持つ「他人に負けたくない」という強烈な競争心の背景には、日本とは比べ物にならないほど苛烈な競争社会があるようです。シンガポールは超がつくほどの能力主義の国。「小学校卒業試験の結果でエリートになるかガードマンになるかが決まる」と言われるほどで、赤ちゃんのうちから能力開発の習い事をさせる親もいるくらいです。

国家のために有能な人材を育てることに注力するため作られた「国としての生き残り戦略」でもあり、シンガポールの奇跡の発展の礎となった、と言われているのですが、全てが自己責任であるシンガポーリアンとして生きていくのは、日本人として生きるよりもずっと過酷なことは間違いありません。キアス気質になるのも頷けます。

シンガポールを旅する方は、きらびやかな現代建築やローカルフードだけでなく、是非シンガポーリアンの人間観察もしてみてください。国民性に触れられて、より意義深い旅になることでしょう。

(文:松下祥子)