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冬にこたつで楽しみたい『バーチャルトラベル』読書7選

2016年01月13日 23時45分 JST | 更新 2017年01月12日 19時12分 JST

旅に出たいけど時間もお金もない。世の旅好きが常に直面している悩みですが、世の中には世界中を旅してまわれる羨ましすぎる人たちもいます。旅そのものを目的に、または何かを探しながら、それぞれの旅をしてまわる彼らは、時に良質な旅行記を出版します。間違いないのは「大変面白い」こと。その旅に、想像のなかで乗っからない手はありません。

今回のタビィコムは、冬の極楽・こたつ読書で楽しみたい「バーチャルトラベル」向けのオススメ本を7冊ご紹介します!



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『チャーリーとの旅』ジョン・スタインベック

スタインベックといえば、ノーベル文学賞作家であり文句なくアメリカ文学界の巨匠なわけですが、その重い肩書からは想像がつかないほど軽妙な紀行文がこの『チャーリーとの旅』です。

特注キャンピングカー「ロシナンテ号」で、愛犬であるスタンダードプードルのチャーリーをともない「祖国アメリカを知る旅」に漕ぎだしたその総走行距離なんと16000キロ。ニューヨークからアメリカ北部を横断し、シアトルからカリフォルニアを下って南部まわりで帰ってくるという、アメリカのあらゆるシーンを網羅した夢のような旅の模様には、「人はなぜ旅に出るのか」という問いへの答えがあふれています。間違いなく、アメリカ最高の旅文学作品です!


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『日本ばちかん巡り』山口文憲

香港の旅行記で有名なノンフィクション作家・山口文憲が「日本のなかにある小さなバチカン(宗教の聖地)」を訪ね歩いた紀行文です。宗教の聖地というのは、いわゆる新興宗教の総本山がある地のこと。他の宗教の聖地と同じく、新興宗教の小さな聖地にも独特の文化がある。山口氏はそんな場所を「日本のなかの小さな外国」ととらえ、たくさんの「異文化」を内包する日本を多文化国家として体験するのです。北は青森から南は沖縄まで渡りあるいたユニークすぎる紀行ルポタージュは、モノカルチャーで堅苦しい日本というイメージを一新してあまりあるものです。


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『空へ』ジョン・クラカワー

こちら、旅と行っても行き先は世界最高峰の山、エベレスト。作者のジョン・クラカワーは映画『Into the wild』の原作者としても知られていますが、この『空へ(Into the air)』は、エベレストで流行していたガイド登山隊の実態をルポタージュするために雑誌記者として参加したクラカワーが、日本人含む12人の犠牲者を出した大量遭難に巻き込まれた顛末をまとめた作品です。

世界一高い山でありながら「初心者でも登れる山」と揶揄されるガイド登山の様子がつぶさに描かれています。インドからエベレストへのベースキャンプへ至る旅から徐々に高度を上げ惨劇に見舞われる様子は、まるで自分がエベレストへトライしているような錯覚に陥るほどのリアルさ。2015年9月29日に、ネパール政府は初心者のエベレスト登山を禁止したため、エベレストに登る夢を持っていた初心者の方には、その苛酷さを知るためにも強くおすすめしたい登山旅行記です。


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『辺境・近境』村上春樹

ファンの間ではよく知られたことですが、村上春樹は小説だけでなく翻訳や紀行エッセイも大変おもしろいのです。なかでもおすすめがこちらの作品。無人島からモンゴルまで、国内外の7箇所を違うテーマで巡った紀行文は、それぞれ独立した別の作品としても読めて充実感満載。なかでもノモンハン事件の戦場跡や不穏な空気漂うメキシコ、さぬきうどんブームの先駆けとなったディープスポット巡りは引き込まれる面白さ。旅行をよくする人でも羨ましくなるバラエティーに富んだ旅の記録は、バーチャル旅行のネタとして超一級なことうけあいです!


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『ベトナムぐるぐる。』ムラマツエリコ/なかがわみどり

今でこそ女子旅の行き先として有力候補に上がるようになったベトナムですが、この『ベトナムぐるぐる。』で描かれた90年代は社会主義色が色濃く残るハードな地でありました。そんなベトナムに女子2人で乗り込んで、カルチャーギャップと暑さにぐるぐるに翻弄されながら悪戦苦闘するさまは抱腹絶倒!ベトナムに対して持ったネガティブな印象も描かれているので、「苦労も旅の楽しみのひとつ」という言葉を真実味をもって体験できます。しかしベトナム旅行の参考になるかというと全くなりません。今のベトナム、特に都市部は別の国レベルで違うのでご安心あれ。


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『世界屠畜紀行』内澤旬子

「食卓にのぼるお肉って、誰がどんな風に作っているの?」という疑問をもとに、世界各国の食肉事情を訪ねあるいたイラストエッセイがこちらの衝撃的タイトルの本。日本では「屠殺場」と呼ばれ、働く人に対して差別がある食肉加工の現場ですが、あえてこの本では殺すという字を使わず「屠畜」と表現することでも分かる通り、食肉産業への差別感情もあわせてルポにしてあります。驚くべきは内澤旬子氏のあくなき好奇心。普通ならちょっと腰が引けそうな屠畜の現場にどんどん分け入っていっていく様子には驚嘆します。訪れた国は韓国、エジプト、チェコ、モンゴル、インド、アメリカなど。真面目だけれどライトでポップ。異文化探訪記としても十分楽しい作品です。


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『ザ・ビッグイヤー』マーク・オブマシック

2012年に公開されたコメディー映画『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』の原作であるこの本は、アメリカで毎年行われる世界最大の探鳥競技会「ザ・ビッグイヤー」に参加した3人の男性を追うノンフィクションです。この競技会、世界最大と言われるだけあって規模が度を超えています。舞台は北米大陸全体、期間は一年間。元旦をスタートに、一年でどれだけ多くの鳥を見つけられるか、それだけを競う競技なのです。バーダーと呼ばれる参加者たちは、頂点の栄誉を獲得するためだけに、騙し合い、仕事を辞め、引っ越し、ヘリを飛ばし、北の荒波を乗り越え、風向きと気候を読みながら、縦横無尽に北米大陸を駆けまわり、命がけの旅を繰り返すのです。バカバカしいほど本気で鳥を追い回す男たちはある意味「プロの旅人」でもあり、その圧倒的な機動力に驚愕しながら一気読みしてしまいます。


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いかがでしたか?

実際には絶対行きたくないような場所でも、想像のなかでなら興味深く探訪できてしまう。それが旅行記を読む楽しみのひとつです。行ってみたいところだけでなく「こんな旅は一生しない」と思う場所の旅行記を、家から一歩も出たくなくなる冬にこそ、ぜひ読んでみてください。

(松下祥子)