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3Dプリントが可能にする誰もが義肢を設計する未来

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【編集部注:本稿の執筆者、Jonathan Schwartz は、Voodoo Manufacturingの共同ファウンダー・最高製品責任者】

昨今の3Dプリンターの普及と人工装具のデザイン、製造、流通の革新は、世界中の四肢を失った数百万の人々ために実現可能な解をもたらすものだ。米国だけでも、毎年20万以上の四肢切断術が行われているが、5000~5万ドルという人工装具の価格から、それを持つことが贅沢とさえ考えられている。

従来、義肢の制作には数週間から数ヵ月を要した。人工装具は極めて個人的なものであり、装着者の形状や要件に合わせるために、一つひとつオーダーメイドで作る必要があるからだ。しかし、3Dプリンターが手頃な価格になり、200ドル以下の製品も出てくるようになったことで、誰もが自宅や地域コミュニティーで義肢を設計しプリントすることが、急速に現実味を帯びてきた。

義肢の価格を実感するために、それを必要としている子供のいる家族の経済を見てみよう。義肢の寿命は平均して約5年間だが、日々成長し、物を壊しがちな小さな子供であれば、交換の頻度はさらに高くなる。

義肢の購入およびその後の交換にかかる費用を計算すると、必要な生涯費用は家計に著しい負担となることがわかる。毎年の費用を保険会社に請求することもほぼ不可能だ ― CNNの最近の報道によると、新しいMedicareの提案では義肢の利用に制限が加わるという(現在保険対象者には15万人の四肢欠損者がいる)。

3Dプリンティングによる、人工装具の設計、制作の民主化によって、世界で何百万人もの人々が、新たに普及しつつある製造テクノロジーの恩恵を受けることができる。The Enable Community Foundationをはじめとするオープンソースのプロジェクトによって、3Dプリンターを持っていれば誰でも、義手のカスタマイズや制作が可能になった。意欲的なボランティアによる国際ネットワークであるEnableのチームでは、3Dプリンターを使って世界に救いの手を差し延べており、費用はわずか50ドルだ。

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Enableの義手、 “Raptor Reloaded” 作動中。

3Dプリンティングのおかげで、子供たちは要件に応じて、例えば床にある物を楽に手を伸ばして拾える伸長可能な腕を作ることができる。文書をプリントするのと同じく、人工装具のプリント作業は、「プリント」ボタンを押すだけで、あとは3Dプリンターがレイヤーを次々と重ねていくのを見ているだけでよい。

近い将来、人工装具は人々の毎日の暮らしに、最小限の努力でスムーズに溶け込んでいくだろう。Body Labs等の会社による身体のスキャンやモデリングの最新テクノロジーによって、自分たちをスキャンして体に合わせた人工装具を作ることが可能になり、装着感も見た目もより自然なものになる。

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3Dレーザースキャナーによって、デジタル3Dモデルの作成が可能になり、人工装具のデザインと3Dプリントに利用できる。

MITのHugh Herrをはじめとするイノベーターたちによって、駆動システム、内蔵センサー、関節の自然な動きを自動化する高度なアルゴリズム等を組み合わせた新しい技術が開発されている。人工装具の予測的動作によって、使用者は装置の制御について深く考える必要がなくなる。近いうちに、人工装具はさらに滑らかで自然な動きをするようになり、使用者は脳やタッチ入力システムによる直接操作によって装置を制御できるようになるだろう。

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MITのHugh Herrが、自分の義足でその場駆け足をするデモを見せている。

さらに3Dプリンターは、様々な新しい材料にも対応するようになり、例えば軽量なチタンを使って耐久性や強度を高めることもできる。複数素材による3Dプリンティング技術を使い、関節部のへこみを自然にして体との結合を良くすることによって、人工装具はさらに使い心地がよくなる。義足をつけることが、クローゼットの奥にしまわれたあの恐ろしく履き心地の悪い靴を履くように感じられるところを想像してほしい。

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Hugh Herrの研究式で作られたこのマシンは手足の「組織適合性」を測定する。これによってソフトさとハードさを兼ね備えた、より自然で心地よくフィットする人工関節の3Dプリントが可能になる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

(2016年6月28日Techcrunch日本版「3Dプリント人工装具の未来」より転載)

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