黒人への無意識な差別行動が、警察のボディカメラから明らかに

黒人たちと話すときには、礼儀正しさが抑えられた言葉を使っている傾向がある。

警察のボディカメラは、ただ銃撃戦やその他の危機を記録しているだけではない。それらは毎日終日記録を続けている。このため警察官と人びとのやりとりに関して、前例のない詳細な観察結果が示されることになる。もしその膨大な量のデータを処理できるなら、本当にそれが可能になる。スタンフォード大学の研究者たちは、こうした事を可能とする手法を開発した。そして程なく研究者たちは、オークランドの警察官たちが、黒人たちと話すときには、礼儀正しさが抑えられた言葉を使っている傾向があることを発見した。

とはいえ、これはそれほど大きく目立っていた違いではなかった。オークランドの警察官たちの何千にも及ぶ会話で使われた、50万にも及ぶ単語が分析の対象になったのだが、量が集まる事で引き出すことのできる結果が示されたのだ。もしそうでなければ、この違いというのは、おそらく気のせいだろうと片付けられていたことだろう。

しかしそれは事実なのだ。もし職務質問で呼び止められた人物が白人の場合には、57%以上の警察官が、呼び止めたことに対する謝罪や感謝の意を表明する傾向にある。そして呼び止められた人物が黒人の場合には、61%以上の確率で、相手に対し手をハンドルの上に置き続けるように言ったり、"dude"とか"bro"(どちらもタメ口っぽい2人称)という呼びかけをしているのだ。このパターンは、研究チームが人種と不法行為の重大さを考慮して集計方法を調整しても相変わらず存在していた。

「全体として、黒人コミュニティメンバーとの警察官の対話は、白人コミュニティメンバーとの対話に比べてより困難の大きいものになっています」こうスタンフォードニュースの中で語っているのは、調査の共同著者であるJennifer Eberhardtだ。しかし彼女はまた「私たちの調査結果は、個別の警察官の偏見や良くない行いを証明するものではありません。礼儀正しい話し方に関する人種間格差の要因となるものには、多くのものが考えられます」と指摘している。

しかし違いが微妙であるということだけで、それが重要でないという結論にはならない。

「皆善良な警察官たちでした」ともう1人の共著者Dan Jurafskyは言う、「しかし、コミュニティメンバーとの会話の中で積み上げられた小さな違いが、広範な人種間格差となっていたのです」。

対象となった極めて長時間の職務質問を精査するために、研究チームはまず一般の人びとの会話記録を用いて、礼儀正しさ、フォーマル度、そして敬意などの指標を計測した。そして、それらの質に相関するフレーズが同定され、記録された会話の中からそれらのフレーズが探された。

図から読み取れるように、安全への気遣いや手間を取らせたことに対する謝罪は、白人を止めたときにより多く行われている。一方インフォールな呼びかけや「法的な権利の説明」(これは注意を喚起するという意味でネガティブな意味合いである)が黒人を相手にしているときにはより多く見受けられている。またそれほどはっきりとはしていないものの、警察官はどちらの側対しても、どちらの表現も使っていることはわかる。しかし時間が経てば統計的に有意なパターンが生まれてくるのだ。

しかしこの発見は、このパターンの起源を明らかにしている訳ではない。

「警察官による扱いの人種間格差は明らかで統計的に安定しているものの、この格差の原因はそれほど明らかではない」という報告がNational Academy of Sciencesのジャーナルに掲載されている。「これらの格差の一部がコミュニティメンバー自身のことば遣いや振舞いに起因していることは確かであろう。特にオークランドに於ける歴史的緊張関係や、警察の正当性に対する先入観が、恐れや、怒り、あるいはステレオタイプの脅威を引き起こしている可能性がある」。

私たちが今ここに手にしているのは出発点だ。別の言葉で言うなら、ボディカメラが生み出した雑音の多い膨大なデータから、入念な調査で徐々に明らかにされて来た検証可能なパターン(大事なことは、恣意的な選択ではないということ)だ。次は何だろう?より深い分析によって、声のトーンやスラング、あるいは居合わせた人や場所といった他の要因を取り込んで、他の側面を掘り下げることも可能かもしれない。

事実を軽視すること、全ての人種の警察官の会話に於ける負の傾向、ある人種の人びとへの偏り、こうしたことはいずれも私たちが議論を始めるためのきっかけとして十分だ。これまでに気が付いた人はいるのか?そうした人たちはこれを問題にしたのか?警察官たちは自分たちの行為に気が付いているのか?警察の行動をデータでコントロールすることは可能だが、警察の活動は最終的にはコミュニティサービスであり、こうした問題を真に解決するためにはコミュニティの中で取り組まなければならない。

「私たちが作ったもののような、情報処理ツールが開発されることによって、さらに多くの法執行機関がそのボディカメラの映像を、有罪無罪の証拠として使うだけでなく、理解のためのデータとして取り扱うようになることを希望しています」とEberhardtは語った。

(翻訳:Sako)

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