Instagram、1秒(無限ループ)ビデオを撮影するアプリをリリース

Instagramの新機能Boomerangで、お楽しみ目的の写真を、狙い通りに面白く撮影することができる。

Instagramは自らのサービスを陳腐化させたいとは思ってないが、しかし機能を盛り込みすぎてアプリケーションを肥大化させたいとも考えていないようだ。そこで今回も新機能を別アプリケーションとしてリリースしてきた。名前はBoomerangで、iOS版Android版がある。

Boomerang by Instagram

とてもシンプルなアプリケーションで、1秒間に5枚の写真を撮影し、その写真をオートリバースのムービーとして再生するものだ。保存はスマートフォン内に行われるが、FacebookやInstagramなどで簡単にシェアすることができる。Boomerang自体には、写真を共有するソーシャルネットワークとしての機能はない。そのためBoomerangの操作にはInstagramのアカウントも必要なく、またアプリケーションにログインする必要もない。

Boomerangの動作は、連続写真を撮影してGIF化するPhhhotoと同様なものとなっている。ちなみにこのPhhhotoにはInstagram内の友だちを検索する機能がついていたのだが、Instagramは4月より、この友だち検索の機能を利用させないようにしている。またGoogleフォトにもアニメーション機能がある。違いは、Boomerangの方は専用のアプリケーションから撮影したもののみがアニメーション化されるということだろうか。Instagramは流行を取り入れ、自社プロダクトとの親和性を試すためであれば、他プロダクトのコピーと呼ばれることも恐れていないということなのだろう。ちなみにBoomerangは無音声のループビデオとなるもので、その点でVineやApple Live Photosなどとは異なるものとなっていることは記しておく。

IntagramはこれまでにもHyperlapse(タイムラプス動画を撮影)やLayout(コラージュ製作)といったスタンドアロンアプリケーションをリリースしている。これらのアプリケーションに続いて、Boomerangもリリースして5年となるInstagramのフィードを賑わす一助となるのかもしれない。

なお、ティーンエイジャー世代について、InstagramはSnapchatとライバル関係にある。Snapchatの方はセルフィー用のレンズ機能やジオフィルターなどの新機能を次々に追加している。BoomerangもInstagramユーザーに新たな楽しみを提供したいという狙いをもってリリースされたものであることは間違いない。

BoomerangのプロダクトマネージャーであるJohn Barnettによると、このアプリケーションはInstagram内で6月に行われたAndroidエンジニアのハッカソンにより生み出されたものなのだそうだ。「チーム内のメンバーで遊んでみようとして作ってみたものでした」とのこと。しかしInstagramメンバーの多くがとても気に入ってしまったらしい。そこでプロダクトとして世に問うてみようとする考えが生まれてきたようだ。Boomearngを最初に開発したのはほんの5人のメンバーであったとのことだ。

Boomerangを初めて使う人は、ボタンの少なさに驚いてしまうかもしれない。画面遷移も2つしかない。ログインも必要なく、ただ単に写真を撮るだけでアプリケーションでできることはすべて完了するのだ。

撮影画面には通常モードとセルフィーモードがある。シャッターボタンをタップすると、1秒間ほどの間に5枚の写真を撮影するようになっている。Barnettによると、iOS版では手ブレ防止の機能を実装していて、撮影した写真もやや見やすくなっているはずだとのことだ。Android版の方では、注意しないと目眩がしそうなビデオになってしまう可能性がある。撮影した写真は無限ループ形式で再生されるのだが、再生速度は倍速となっていて、1秒間で5枚撮影した写真を一往復1秒で再生するようになっている。これにより写真をより面白く、刺激的なものとしているのだ。

標準でInstagramないしFacebookで共有するためのボタンが用意されている。もちろん「More」ボタンをタップして、他の手段(訳注:LineやTwitterなど)で共有することもできるようになっている。ビデオは撮影した写真を5往復4秒で再生する画像としてまとめられいる。撮影した写真はカメラに保存されるので、1シーンを撮影したのち、直ちに次の撮影を行うこともできる。撮影した写真をあとで好きな場所にアップロードすることができる。Instagramにアップロードすれば、いつまでもループさせて見ることができるので、見栄え的にははこれが一番面白いかもしれない。

まとめるならば、Boomearngは手軽に面白い作品を残すのに適したツールだということがいえると思う。お楽しみ目的の写真を、狙い通りに面白く撮影することができる。オートリバースモードで写真シーケンスを繰り返すことで、ループ再生もとてもおもしろくなっている。ビデオでは間延びしてしまうような、瞬間の楽しさを味わうことのできるツールともいえそうだ。

ただひとつ問題は、「ちょっとした愉しみ」を与えてくれるツールだけに、利用者からうっかり忘れられてしまう存在になるかもしれないということだ。「必需」のツールではなく、あくまで「ボーナス」として存在するものだからだ。ただ、個人的にはInstagramを使おうとするときには、きっと「Boomerangを使ったらどうか」と思うようになるのではないかと考えている。またFacebookの動画プロフィールを作成するのにも便利なのではないかと思う。

個人的にはタイマー撮影が欲しいようにも思った。Barnettによれば、近々実装される可能性があるらしい。また、フラッシュ撮影に対応すればさらに便利かもしれない。

ともかく、Boomerangのシンプルさはすなわち利用者の迷いをなくすという意味で非常に有益であると思う。年令が若く、またあまり他のアプリケーションを利用していない人や、あるいはアメリカ外に住んでいる人にも迷いなく使ってもらえるものになっているようだ。敢えてMixbitのような巨大アプリケーションとは一線を画そうとしたものなのだろう。確かにMixbitの機能の中には、ほとんどの人が利用しないようなものも含まれている。

ところで、Instagramは、このBoomearngにどれほどの「本気」を投入してくるのだろうか。たとえばLayoutについては、月間4億ユーザーを集めるInstagramの編集ページからダウンロードページにリンクすることにより、ダウンロード数を増やすことができた。このBoomerangでも同様の仕掛けが為されることになるのかもしれない。

Boomerang SelfieInstagramはどうやら、親会社のFacebookよりも「スタンドアロン戦略」で成功を収めているように見える。Facebookもいろいろな新機能をスタンドアロンアプリケーションで試してはいるが、しかしFacebookの成長に繋がるような成功は収められないでいる様子。そして結局はアプリケーションの機能をFacebook本体に加えるというような動きを繰り返しているようにも見えるのだ。魅力的な機能は備えつつも、結局RiffやSlingshot、ないしRoomsなどは失敗に終わってしまった感がある。

Instagramの方は、別アプリケーションで作成したコンテンツが、結局オリジナルアプリケーションを潤すという戦略を立てて、それが成功しているように見える。Instagramに用意されたフィルターなどの機能をふやして利用者を混乱させることなく、基本的な機能をわかりやすく利用者に提供することに成功しているといって良いだろう。Instagram自身にさまざまな機能を追加して鈍重にするのではなく、基本的な機能のみを実装するにとどめているのだ。この方針により、オプションの機能を使いたくない人は、ただたんに以前からのツールを使えば良いという形になっている。そうした方針により、利用者は他の人々の投稿した写真を眺めつつ、同時に表示される広告なども消費し続けてきているのだ。

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(翻訳:Maeda, H

(2015年10月23日 TechCrunch日本版「Instagram、1秒(無限ループ)ビデオを撮影するBoomerangをリリース」より転載)

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