社長がやらないことは全部やる----スタートアップ企業の"右腕"たちの想い

表現は4人で異なるものの、共通していたのは、「No.1にはビジョンを描いていて欲しい」ということだ。

左からグロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパルの東明宏氏、メルカリ取締役の小泉文明氏、CAリワード取締役の児玉悠佑氏、エウレカ共同創業者で取締役副社長COO兼CFOの西川順氏、サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈氏(Photographed by 小林俊仁)

TechCrunchにしても他のメディアにしても、スタートアップがサービスをローンチしたり、資金調達の発表をしたりする際、いつもフォーカスされるのは起業家、すなわち「No.1」であることがほとんどだ。

しかし組織はトップがいるだけでは成り立たない。トップを支える「No.2」の存在あってこそ。だがそんなNo.2について語られることは極めて少ない。2015年12月にエウレカが主催した「ベンチャーNo.2サミット」では、そんな"縁の下の力持ち"たちが集合。トップとの接し方、組織の中での役割などを語った。

登壇したのはフリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリ取締役の小泉文明氏、マッチングサービス「pairs」などを運営するエウレカ共同創業者で取締役副社長COO兼CFOの西川順氏、リワード広告を手がけるCAリワード取締役の児玉悠佑氏、クラウドファンディング「Makuake」を運営するサイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈氏の4人。グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパルの東明宏氏がモデレーターを務める中、3時間半にわたるセッションが繰り広げられた。

イベントは2部構成になっており、1部では登壇者4人が現在の会社に参画することになったきっかけや、各社の社長の性格、自社の特徴、現在に至るまでの苦労話などが赤裸々に語られた。そして第2部では、東氏が質問を投げかけ、4人が回答するかたちでセッションが進めらられた。

東氏はまず、それぞれの会社のNo.1とNo.2の関係性についてひと言で表すとどうなるか?と尋ねる。4人の回答はそれぞれ次のとおり。

メルカリ(山田進太郎氏×小泉文明氏)

「無茶」と「無理」(無茶を言うNo.1とその無茶な話を「無理そう...」くらいにして現場に落とし込むNo.2ということ)

エウレカ(赤坂優氏×西川順氏

「子供」と「大人」

CAリワード(堂前紀郎氏×児玉悠佑氏)

「マイペース」と「規律」

サイバーエージェント・クラウドファンディング(中山亮太郎氏x坊垣佳奈氏)

「ざっくり」と「細かい」

表現は4人で異なるものの、共通していたのは、「No.1にはビジョンを描いていて欲しい」ということだ。むちゃくちゃなことを要求したり、漠然としたビジョンを語ったりして、トップには「心」で組織を引っ張っていって欲しいとメルカリの小泉氏は話す。

「No.2」は意識しないし、独自の仕事があるわけではない

「自分はもともとNo.2気質だったか?」という質問に対しては、小泉氏以外の3人が「はい」と回答した。だが仕事をする上では、役職としてNo.2のタイトルを持っているだけで、"No.2だから"やる仕事はない、と全員が答えていた。

「(立ち上げ期に)実際社長と(自分の)2人しかいなくて。それで会社が伸びていったら...気付いたら『役員やってよ』と(言われるような)感じだった」とCAリワードの児玉氏。一方でエウレカの西川氏は「赤坂より会社のこと考えてるっていつも思っている。創業当時は......No.2かどうかと定義されればNo.2だが、2人ともフルマックスで働いていたので社長とかNo.2とかは関係なかった。今は赤坂に社長業に専念してもらって、私の役割は赤坂のやりたくないことを全部やるっていうことかな、と思っている。赤坂はやりたくないことが多すぎるから(笑)」

バランスの悪さが社長の良さ、だからこそNo.2が計画を遂行する

東氏からの質問の中で、表現の仕方は違えど、回答が全員一致したものがある。それは「No.1とNo.2の役割の違いを一言で表すと?」というもの。これには全員が、「No.1は理想や夢を語る人、ビジョンを描く人」と答え、一方でNo.2は、「現実を見る人、理想を実現化する人、アクションを起こす人」と答えた。

「社長は大体オペレーション能力がない。だから社長をやっている。そこをどう上手くハンドリングさせるのかがNo.2の腕の見せ所だと思う」(小泉氏)

「(No.2は)通訳。(No.1は)ふわっとしたことを言うんですよ。『なんかヤバい!』とか。そういうことを具体的に言葉に落としていって、ちゃんとプロジェクトにするのが仕事」(西川氏)

理想のNo.2像とは

「(No.1は)自由にやっていたい。そして(No.2は)これをやっておきました、と(No.1に報告してくれる)。そういうのをやってくれる人は(No.2として)すごく欲しいです。」(児玉)

「No.1はざっくりでいい。No.2の私たちは細くないといけない。逆に(No.1に)細かいところ言われるとちょっとイラッとしますね(笑)」(坊垣)

イベントを通じて感じた「No.2のあり方」とは、トップ、あるいはファウンダーと同じくらいにサービスやプロダクトのことを考えると同時に、社長との組み合わせを考え、組織の構成の中で自分のできることを120%やりぬく気概を持っている、ということだった。

個性が強く、理想を語るトップの考えをいかに実行に移していくか、社員とのコミュニケーションをどのようにつないでいくか。時に柔軟に、時に強く、仕事を遂行している気鋭企業のNo.2たちの姿を垣間見ることができた。

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