献立アプリ「タベリー」 が5600万円調達、原体験は震災の中で感じた“安心”

アプリが提案するのは、主菜に合う副菜、主菜・副菜に合う汁物なのだそう。

クックパッドが登場して間もなく20年が経ち、インターネットでレシピを投稿・検索することが当たり前になり、この数年ではkurashiruやDELISH KITCHENが登場し、料理の作り方までもを動画で知ることができるようになったし、作った料理の写真をシェアして楽しむSNSもある、食材を購入できるネットスーパーやECサイトも立ち上がってきた。

「料理×ネット」のサービスのおかげで料理の作り方や食材の買い方は飛躍的に手軽になった。それでも毎日の献立、つまり主菜に副菜、汁物までの組み合わせを1週間分考えて、その献立に沿って買い物をするなんていうのは、まだ人力での意思決定が必要だ(もちろん、レシピサイトならトップページで新着やオススメのレシピを表示したりして、意思決定の手伝いをしてくれているが)。今回紹介する10X(テンエックス)の「タベリー」は、そんな日々の献立作りを手伝ってくれるアプリだ。

タベリーは「10秒で献立作成ができる」とうたう献立アプリだ。主菜、副菜、汁物の順に、アプリから提案される複数の料理から1つを選択するだけで、手軽に献立を作ることができる。アプリが提案するのは、主菜に合う副菜、主菜・副菜に合う汁物なのだそう。また使いたい食材や用意する人数なども学習していく。このあたりのアルゴリズムに関しての詳細は聞けなかったが、機械学習を用いて、よりテイストの合う組み合わせや、ユーザーの趣向に合ったレシピを提案していくよう開発を進めるとのことだった。レシピは料理教室のベターホーム、きょうの料理(NHKエデュケーショナル)などから提供を受けており、6000件以上だ。最近使った食材をもとに、「あまりものから作る」といった機能も用意している。

また作成した献立とそのレシピは、カレンダー形式で保存、閲覧できるほか、選択した献立の食材をまとめて「買い物リスト」を作成することができる。将来的にはこのリストとネットスーパーなどの連携を構想中だ。さらに、ユーザーが実際に作った献立の写真を投稿できる画像SNSも用意。今後はコミュニティ機能も強化していくという。現在iOSでのみアプリを提供。今後はAndroidにも対応する。

サービスを手がける10Xは2017年6月の設立。今回、エウレカ共同創業者の赤坂優氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、Connehito代表取締役の大湯俊介氏、フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介、Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏ほか1名の個人投資家を引受先とした総額5600万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。

10Xの代表取締役社長の矢本真丈氏は、青森県の出身。東北大学の大学院に進学したところで東日本大震災を経験した。「自分の住んでいる地域は(津波は)無事だったが、それでも1週間くらいは家に帰れず、PTSDで眠れなくもなった。それでやっと家に帰って、当時の彼女で今の妻と一緒にコンロの火を付けて、料理をしてやっと安心した。料理は日常や安心の象徴だと思ったのが、サービス立ち上げの原体験になっている」(矢本氏)

そんな矢本氏の経歴だが、卒業後は商社の丸紅でカザフスタンの資源投資ビジネスの立ち上げを経験。その後は大震災の復興支援を行うNPOの一般社団法人RCFにて、グーグルらと、東北のビジネス復興支援を行うプロジェクト「イノベーション東北」を立ち上げた。さらに今度は子供服のECを手がけるSmarbyの立ち上げに参画。同社がストライプインターナショナルに買収されたタイミングで離れ、その後はメルカリに入社したのち、自身のプロダクトを作るべく10Xを立ち上げた。

「解こうと思っているのは、『料理は続けるのが大変』だということ。日々の料理を要素分解すると、3つの課題がある。1つめは意思決定が大変ということ、2つめは買い物の時間や非効率さといった手間、3つめは料理を作ったということへの承認」(矢本氏)。冒頭に触れたように、これまでレシピ(やその手前の意思決定)、買い物、写真投稿による承認欲求の充足など、料理を軸にさまざまなサービスが提供されてきたが、それを一気通貫で提供することで、1年(365日、毎日3食で計算して)1000回以上の意思決定を手軽にするというのがタベリーの狙いだ。同社は今後、調達した資金をもとにプロダクトのブラッシュアップを進めるとしている。

「育児休暇で家事全般をやって苦労を知ったので、最初は僕自身を助けたいと思って作った。女性の社会進出と言われるが、男性の家庭進出も重要。タベリーはそのためのプロダクトでもあると思っている」(矢本氏)

10Xのメンバーら。中央が代表取締役の矢本真丈氏

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