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中国上海市の高齢化対策 高齢者フレンドリーな静安区〜健康で幸せな我が家

2015年08月12日 00時56分 JST
ASSOCIATED PRESS
A woman walks past a wall painting depicting an old woodblock print Thursday, June 7, 2012, in Shanghai, China. (AP Photo/Eugene Hoshiko)

静安区は上海市街の中心部にあり、仏教のほとりとして鎮座し千年の歴史を有する静安寺に因んで名付けられた。地域面積は7.6平方キロメートルで、行政区管轄下に5地区、69個の自治体が設けられている。2014年の全区の戸籍人口は29.5万人で、そのうち60歳以上人口は9.3万人に上り、総人口の31.5%を占めている。高齢化率は上海市全体より2.6%高く、その進行度合いが最も高い行政区であり、平均寿命は84.1歳に達している。静安区は高齢者の生活保障と改善を重視し、健康を意識した街づくりと高齢者フレンドリーな区内環境を育む社会インフラプロジェクトの展開を通じ、高齢者が健康で幸せな老後の生活を享受できるよう努めている。 

一、 都市計画と業界横断的な提携

2002年に健やかな街づくり計画を開始し、区政府は5年ごとに健康な街づくりの建設要綱を発表しており、「健康な社会、健康な環境、健康な人々」を全体の目標として、「政府のリーダーシップ、各部門間の提携、専門指導と市民の参与」を働きかける体制を構築している。区の自然・社会環境の向上に注力し、衛生環境の改善や、市民の健康に影響を与える主要な問題の解決にも取り組んでいる。2008年からは、「高齢者フレンドリーな静安区」の建設が、健やかな地域構築にとって重要な要素であることが明記された。区政府は「健康な地区建設オフィス」や「高齢化業務オフィス」を担当し、高齢者の心体能力と生活スタイルに適した住宅環境、緑化と公園、市場とスーパーマーケット、劇場と映画館、病院、学校という6種の社会インフラを建設することで、高齢者フレンドリーを理念とする当該プロジェクトを静安区に根付かせた。  

二、開発評価における高齢者参加

静安区の高齢者フレンドリーな環境作りは「高齢者に基づき、高齢者へ返す」を原則として堅持し、間断なく高齢者の現実的な需要に応じ業務を展開する。プロジェクトの作成、企画、遂行と改善はいずれも高齢者の意見を傾聴した。静安区における高齢者フレンドリーな居住地の建設開始前に、その需要と意見を参考として聴取しその要望に応えた。

活動プランの設定においては、中高齢層が提案した具体的な要望により、屋外のベンチや紫外線及び雨よけ設備を増設し、高齢者や障害者が室外で活動する際の休憩所を設けた。実践的効果の面からは、静安区の高齢者が自ら参加する双方向性システムは、より高齢者に寄り添った形で現実的な問題の解決に繋がることで、好意的に受容されることがと証明された。

三、衛生面の向上と外出に便利な環境作り

静安区は都市計画上、建設設計と環境管理等の面で品質を重視している。2010年に開催された上海万博以来、上海の各行政地区の環境整備に関連した社会評価では、静安区は常に上位を争ってきた。道路と公衆環境は衛生的で、緑化とビジネス環境も整備されており、屋内外の休憩所と公衆トイレも清潔で利便性が向上している。歩行者通路のバリアフリー化と通行標識も入念に整備され、高齢者住民の外出に好ましい環境作りを行なった。去年末に静安区の高齢者を対象に実施した調査では、居住地域内での通行の利便性について79.8%に上る好評価が得られ、また、公共空間と建築物が高齢者と障害者にとってバリアフリーであることを89.7%が認知していた。また都市の交通手段として、地下鉄や、タクシーが、高齢者や障害者などの要介助者にふさわしい乗車サービスを提供していることを95.3%が認めた。

四、高齢者向けサービス、便宜の提供

静安区で実施されている高齢者向けサービスには、老人ホーム(3%)、自治体による介護(7%)、家庭内生活(90%)という三つのモデルがある。現段階では、独立に生活する能力を完全に失った高齢者の養護は11個の介護施設が担っている。また5つの自治体では、部分的に生活能力に欠ける高齢者に看護を提供するデイケアサービスが設営されている。多数を占める家庭内介護を受けている高齢者には、2ないし3個の自治体、約2000から3000人の高齢者毎に1つの「楽々生活サークル」を設置した。これは、家庭内セルフサービス、自治体内の相互扶助、社会上の援助、政府の資金補助、商業的な仲介助成、という計「五つの助力」方式を提供するものである。高齢者に政府補助金で飲食、美容室、浴場サービスを提供、生活困難な老人に住宅訪問と入浴補助や食事の配達などを行い、徒歩15分圏内に医療施設を完備、予防保健と健康教育等のサービスを設けている。自治体内では、各種の文化・体育・その他趣味サークルを組織し、高齢者が見て聞いて楽しむ文化体育活動を展開した。高齢者の独居家庭では、電子インターホン等の装置を設置し、定期的にホームセキュリティの点検を行った。独居高齢者の外出時には同伴者が付き添い、自治体内に高齢者対象の学校を設け、通信教育内容を充実させた。さらに、自治体の職員またはボランティアが、高齢者との心理的な交流を図るよう対話し、精神的な不安や健康状態の観察をする。静安区の老人ホームにより近い場所で創設された「楽々生活サークル」では、自治体の担当範囲内で高齢者の日常生活上の困難と基本的な医療保健および精神上の文化生活需要等の問題を解決することができた。 

五、弱者や低収入高齢者の救済、安定した生活の確保

静安区の高齢者は、上海市経済保障システムを受ける権利があり、社会保障は基本的に「助けるべきは的確に助け、手伝うべきは即ちに手伝う」の理想を実現している。2015年現在、高齢者とその家庭1人当たりの平均収入が1580元(約3万1千円)より低い場合は、民政、教育、医療と住居面に関わる保障制度を受給することができる。そのうち、収入が790元(約1万6千円)を下回る「低収入世帯」は、低保障家庭としてさらに1人毎月22から65元の経済補助を受給できる。労働不能、無収入や介助者がいない高齢者に対しては、政府が給付して老人ホームに入居させ、安定した生活の確保に関する問題を解消できた。そのほか、高齢者は他の「補助型」生活支援補助制度も受給できる。例えば、90歳以上の老人は毎月長寿手当てを受給できる、年金額が月2239元(約4万4千円)を下回る80歳以上の高齢者では、在宅介護費用は政府の養老手当てで50%割引される等である。静安区は「ハイエンド」都市に向けた発展に伴い、「より低い立場」にある市民の生活を保護するよう問題提起した。地域政策は、高齢化に直面する状況により深く適合し、高齢者の給食手当、近隣の浴場、生活困難老人に対する医療無料サービス等、住民の生活改善と都市の発展が同時に向上し歩み得ることを現実化している。

六、高齢者保健と医療予防

高齢者のカルテ履歴と健康影響の要素に対して、静安区はいくつかの無料保健予防サービスを提供している。主に65歳以上の高齢者を対象に、健康診断と大腸がん、糖尿病、婦人科、乳腺疾患スクリーニング等疾病の早期発見・予防のプロジェクトであり、高血圧、糖尿病、腫瘍および脳卒中と心筋梗塞等の疾病管理などである。また太極拳の伝授、気功での体の健康、漢方療養、健康的な食事療法、自宅生活における健康管理の知識とスキル、万が一転倒した際の予防知識等、健康教育並びに健康促進サービスを目指した。高齢者の視力保全、心理的健康サービス、認知症の予防、肺炎球菌ワクチンの接種、障害者の在宅介護サービス等の老年保健が含まれ、専門家が提供又は指導する地域予防保健サービスは、高齢者の比較的良好な参加率と受け入れ率のフィードバックが得られた。

七、認知症に対する区域の予防管理

2013年静安区は老年認知症に対し、予防プロジェクトを始動させた。モントリオール認知評価検査(MoCA)の測定を通して、得点がそれぞれ24点と22点より低い高齢者を軽度認知損害(Mild Cognitive Impairment)と早期認知症の二組に分け、自主的参加の上で当該2組の者に対し、各自認知機能訓練、酸素訓練、情緒管理等3種の形式による医薬品によらない取り組みを行う。当該プロジェクトを実施し2年経過以来、地域の認知症に対する認知度が向上し、認知症に対する地域の関与モデルが定着した。取り組みを受けた高齢者の認知機能が改善し、認知症の発症・進展にとって一定的の予防効果が示された。地域高齢者は当該プロジェクトに90.9%の参加率があった。  

復旦大学による静安区60歳以上の市民の健康希望寿命に対する調査に示されるように、健康希望寿命は2002年度の14.6歳から2011年の18.9歳に増加し、静安区における高齢者健康水準の上昇を反映している。2014年の静安区老人好適度の調査では、高齢者の自己評価にて、生活クオリティの満足度が93.4%に達し、心理的な満足度を十分に反映していた。

健康と幸福は高齢者の生活クオリティを向上させるために必ず通る道であり、静安区が呼びかけた高齢者フレンドリー政策も主要な目標である。静安区政府は世界各地と日本の経験を充分に学び、独自の状況と合わせて吸収し、「高齢者にフレンドリーな静安」は高齢化社会においてより良い福祉をもたらすことができるであろう。