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カジノ解禁、シンガポールと韓国に見た「明と暗」

2014年11月06日 02時57分 JST | 更新 2014年11月06日 02時57分 JST
AFP via Getty Images
TO GO WITH SKorea-Asia-society-gaming-casino,FEATURE by Giles Hewitt (FILES) This file photo taken on April 11, 2012 shows casino workers at the Sands Cotai Central casino before the opening of the resort in Macau. The casino industry is booming across Asia, offering anyone looking for high-stakes action a wide choice of venues, from high-tech South Korea to the Himalayan nation of Nepal and communist Vietnam. Macau, now the world's largest gaming hub, saw its gaming revenue jump 13.5 percent to a record 38 billion USD in 2012. AFP PHOTO / AARON TAM (Photo credit should read aaron tam/AFP/Getty Images)

安倍政権が成長戦略の目玉にと意気込んでいる、「カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」。CMなどで有名になった、巨大プールが最上階にあるシンガポールにあるマリーナベイ・サンズみたいな統合型リゾート、つまり国際会議場や、ホテル、ショッピングモール、劇場・映画館、といった施設に、カジノを含んで一体となった複合観光集客施設を日本にも作って、たくさんの観光客を呼び込み、経済の起爆剤にしましょうよ、という法案ですね。日本では現状カジノは違法ですから、カジノをOKにするかどうかに注目が集まり、「カジノ法案」とも呼ばれています。

どうやら今国会の成立は厳しいようですが、早晩この議論は本格化するでしょう。で、みなさんは日本にカジノ、賛成ですか? それとも反対でしょうか?

その経済効果は波及効果も含めて7兆7000億円(!)とも試算されているカジノ。本当かしらと「報道ステーションSUNDAY」では、まずマリーナベイ・サンズを経営する世界最大規模のカジノ運営会社、ラスベガス・サンズ社開発事業責任者のジョージ・タナシェビッチ氏に話を聞きました。

ジョージ氏はすでにこの7月に大阪を訪れています。「大阪に統合型リゾートを実現するよう日本政府にも働きかけていきます」というジョージ氏。彼が手がけたマリーナベイ・サンズ建設の際も、カジノのある統合型リゾート建設には賛否両論、議論があったといいます。シンガポールも独立以来およそ40年間賭博を禁じていたからです。しかし、2005年にはカジノ導入を決断しマリーナベイ・サンズが誕生。結果、この施設だけで、地元におよそ9000人の雇用が生まれ、観光客数で6割、観光収入でなんと8割の増加を実現しました。ジョージ氏は言います。

「カジノの収益があることで、そのほかの投資ができるのです。たとえば、利益を生み出さない施設であってもカジノからの現金収入があれば施設を支えることができるし、施設全体の使用料も安く抑えることができる」

ジョージ氏は日本でカジノが認可されれば、シンガポールを上回る5600億円以上の巨額投資を考えているといいます。

一方、カジノについては依存症などが懸念されています。韓国でもカジノは解禁され、現在17のカジノがありますが、唯一、韓国人の入場が許されているのが「江原(カンウォン)ランド」という統合型リゾートです。私もソウルから車で3時間半ほどかけてその様子を見に行ってみました。

江原ランドは人里離れた山の上にあるのですが、まず印象的なのは入口周辺にギラギラと輝くネオン街。これ、すべて24時間営業の質屋なんですね。地元の人たちはまず江原ランドに入場する前に質屋に立ち寄り、宝飾品や車などを担保にお金を借りて、いざカジノへと向かうわけです。私が取材しているときにも、ちょうど40代半ばの男性が乗ってきた車を質入れし、およそ30万円を借り入れました。男性は建設会社の経営者といいます。

「金に困るたびに、しばらく車を預けてカジノに行って、また取り戻すんです。大したことじゃありませんよ。負けたときには家から送金させたり、会社の金を使ったりします。ストレス解消にいいんです」

と、男性。

江原ランドの入場料は700円と安く、年間およそ300万人が訪れます。質屋の駐車場にはメルセデスやアウディといった高級車を含め、質入れされた車が何台も置かれていました。自身もカジノ依存症で破たんし、質屋をはじめたという店主は「何を言っても、中毒者には通じないですよ」と言います。「このあたり、明け方になるとカジノで負けた人たちがゾンビのように行き場を失い徘徊しています。どんなにアドバイスをしたって聞く耳を持ちません。ここの住民も後悔しています。日本でカジノを解禁したら、まったく同じ現象が起きるのではないでしょうか」

石炭産業が衰退し、さびれた江原町がカジノ誘致を決めたのはおよそ20年前のことでした。「カジノ利用客が年間200万人訪れ、現金収入を生み出す。第2の神話を実現するでしょう」といううたい文句に、地元住民は「反対の声はなかった。とにかく早く作ってほしい思いだった」といいます。しかし、実際に江原ランドの営業が始まると想像もしなかったことが起きました。

「カジノの客が破産して、ホームレスのようになってしまい、窃盗などの犯罪や自殺が頻繁に起こったのです。開業して14年経ちますが、人口はむしろ減っています。カジノの周辺が人の住めないような環境になってしまったのです」

開業したとき、およそお2万人だった人口は1万4000人にまで減少。子育てなど教育環境の悪化のため、若い世代の流出が今も止まりません。さらに、韓国政府によると、財産を失うなどして自殺した人は6年間で48人に達するのだそうです。

カジノ運営の解禁を目指す超党派の「国際観光産業振興議員連盟」は日本人のカジノ施設への入場に関して「必要な措置を講ずる」との趣旨で、部分的な修正を盛り込む方針だといいますが、実際、韓国の現状を目にすると、カジノを解禁するという決断の先にあるリスクや、日本人の利用も含め、その対応策については、十分な議論が尽くされているように思えません。