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オバマ大統領の訪問を、各国メディアはどう見たか 広島を訪れた海外記者の声

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71年前のあの日もこのように日差しが照り付け青空が広がっていたのだろうか、とふと思った。5月にも関わらず、真夏のような広島平和公園に、オバマ大統領は現役アメリカ大統領としてはじめて立った。それを熱心にレポートする各国メディア。近年アメリカをはじめ、世界のメディアがこれほどまでの熱量で広島、長崎、原爆、そして被爆者について伝えたことがあっただろうか。これもまたアメリカ大統領が訪問した大きな意義の一つであると感じた。これまでアメリカによる原爆投下について、ほとんど関心をもたなかったアメリカ人記者たちも、自分の足で広島に立ち、被爆者の話を聞いていろいろなことを感じたようだ。以下は「報道ステーションSUNDAY」で伝えきれなかった、アメリカ、ロシア、中国、アラブ世界、フランス記者たちの声である。

CNN ホワイトハウス担当(2年半) ミシェル・コシンスキーさん


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「私個人としては、(大統領と言葉を交わした)一人目の被爆者の姿を見ただけで感動しました。車いすに乗って出てくる姿を見ました。彼らの顔を見ると、ただ呆然としてしまいます。彼らが罪のない人間であることを痛感するからです。想像すると、非常に痛ましいです。

アメリカがそんなことをしたと思うと、非常に痛ましいことです。

多くのアメリカの歴史家は原爆投下が命を救ったのだ、戦争が続いていたなら、もっと多くの命が失われていただろう、と信じています。それでも、生存者や、直接の被害者の家族を見ると、そのとたんにすぐ心が揺さぶられます。

今回の大統領のスピーチは歴史的な瞬間であり、すばらしいと思いますが、とはいえただのスピーチにすぎません。スピーチにもそれなりの意味があり、感情を引き出し、人々に思考を促します。それは重要なことです。しかしある意味で私はスピーチよりも行動を好みます。

私自身にとってもっとも特別だったのは、この場所を自分の目で見て、何が起こったのか想像しようとし、自分の気持ちを感じとり、それを日本とアメリカの方に伝えることができたことです。

世界中の人がISISに苦しみ、どうすればいいか悩み、アメリカでも、どこまで軍事力を用いるのかについて大きな意見の相違が見られている。オバマ大統領はできる限り戦争から手を引こうとしてきました。しかし同時に、ISISとの対決姿勢を強めなくてはいけない、シリアに対し対応しなくてはならないというプレッシャーも彼にのしかかっています。十分な対応をしなければ、アメリカ人の生命が危険にさらされるというプレッシャーもあります。

世界でのさまざまな物事への対処の仕方に関し、多くの人々はアンビバレンス(矛盾した二つの感情)を抱えていると思います」

米CBSラジオ パム・コールター記者(ホワイトハウス担当)


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「在職の大統領としては米国が広島に投下した第二次大戦後、初の訪問なのでという意味で歴史的な出来事ですね。大きなターニングポイントです。ただ、「核なき世界」への実現性は不透明。大統領が最も懸念しているのは北朝鮮です。言葉の一方で、大統領が核兵器の近代化を進めているのも、抑止力と不測の事態への迅速な対応のためでありやむを得ない状況です」

ロシア国営テレビ・ラジオ・東アジア支局 ミンガジェフ・セルゲイ支局長


「今回のG7サミットは世界経済に与える影響も少なく何も期待していないが、オバマ大統領の広島訪問は非常に興味深い。オバマは謝罪はしないという。アメリカは未だに子供や女性、お年寄りを含む人々に原爆を使用したことを正当化している。つまり罪のない人々の大量殺戮をだ。しかし、戦争を終わらせるのにその行為は必要なかったことを歴史は物語っている。戦争を終わらせるのではなく、恐らく他の政治的な理由からだ。そのことを認め、言及しないのなら、この広島訪問は不完全燃焼に終わる」

香港 フェニックス 李淼(り・みゃお)東京支局長


「もちろん広島・長崎の悲劇は人道的には許せないものだと思います。もちろん心痛ましい、同情すべきというのは共通の認識だと思います。一方で、中国ではオバマの広島訪問はこれを通して日本は戦争の被害者であるということを強調していくんではないかと、そういった懸念もないわけではない。

中国や韓国からすると戦争というのは、日本は加害者だと思われている。中国の中でもこの訪問を通して、日本の悲劇を強調しすぎるんじゃないかといった懸念はあります。

中国も核の保有国ではあるんですけど、今、中国からすれば核の不拡散体制も非常に停滞しているというような認識があると思う。その中で「核なき世界」を実現するために、どのようなことが必要なのか、なかなか具体策も見えていないんじゃないかというような見方があります」

中東・北アフリカ向けのラジオ記者 ディーブ・アリーさん


「広島と長崎のことはアラブ世界で知られていますが、今とくにオバマ大統領が広島にきて多くの人たちが、このニュースを見ていると思います。でも向こうの人たちの考え方からするとオバマ大統領が謝らなかったから、ちょっと残念な気持ちがあると思います。日本人より残念な気持ちがあると思う。

今までいろんな日本人に聞いてみて、オバマ大統領が謝罪する必要はないと聞いたんですが、今のアラブ人に聞いたら謝ってほしいという意見が多いと思います。

誰か悪いとか悪くないとかではなく、原爆を使った国だから全世界に謝らなきゃいけないという考え方があるんです。

みんなの前できれいなスピーチを出してそれで終わりです。今のオバマ大統領は任期も短いし、力がないからあまり期待していない。

アラブ世界では、アメリカはトラブルになったら日本の方に逃げる気持ちがあるというように見えます。経済で困ったら日本の助けを頼む。戦争で困ったら、日本の助けを頼む。

中東の人たちにとって一番驚くことは、今までアメリカの大統領が広島に来たことがないということ。びっくりする」

フランスのラジオ局 ヨーロッパ1 ダビド・ドゥカン記者


「オバマ大統領は謝罪しないということだが、そもそも日本の国民も謝罪を期待していないと理解している。トラウマ的体験であることを考えれば、それは成熟性と深遠さの表れだと思う。謝罪だけを考えるのは短絡的で、国民の傷はもっと深いはずだ。しかし、この訪問によって、テロが跋扈し、核兵器の近代化が進むいまの流れが変わるとは思わない。この訪問は象徴であって、象徴としての重要性がある。しかし、やはり象徴にとどまる」

米FOXニュース ケビン・コーク記者


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「2つの意味で重要なものだったと思います。1つ目は、過去と、爆撃がもたらした痛みを認めたこと。

一方で、過去はそういうことがあったけれども、私たち米国、日本、さらに他国は、協力しようという気持ちがあれば、そうした脅威を永久に取り除くことができるということを証明し、そうした考え方を前向きに見つめたこと。

この8年の大統領の核軍縮への取り組みを評価するなら、成績はCです。

確かにイランの核合意がありました。しかし実際のところ、アメリカの核の蓄積はまったく変わっていませんよね?彼は核の拡散に終止符を打ちたいと公言しながら、(核兵器の)近代化をしている、または少なくともその近代化を考えています。

確かにそれは、リーダー特有の微妙なバランス感覚です。

しかし、時にレトリックは現実にマッチしないことがあり、彼はそれを認める最初の人物となるでしょう。

意義は歴史が決めると思います」