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「スマホ断ち合宿」で外に出る子どもたち ネットの世界をより豊かにするために

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歯ブラシや鉛筆のように、生まれたときから当たり前のものとしてスマホが存在する子供たちが参加した「スマホ断ち合宿」。文部科学省がネット依存対策で進める委託事業の枠組みを使って、兵庫県と秋田県が都道府県で初めて実施したものだ。瀬戸内海に浮かぶ兵庫・姫路市の西島は、宿泊施設はあるものの島民がいない「ほぼ無人島」である。

そこにこの8月に送り込まれたのは、14人の子供たちだ。ネット依存傾向があるとして、親からほぼ強制的に参加させられたという小中高校生は、スマホから引き離された生活の中で何を感じるのか。「報道ステーションSUNDAY」で放送した。

合宿初日、船で海を渡り西島に到着すると、まず行われるのがスマホの回収である。

「最悪や」

と呟いたのは星矢くん(13)。星矢くんが1日で最も長くスマホを使用した時間は、なんと22時間だという。キャラクターを集めて育成するバトルゲームに夢中だ。星矢くんのお父さん曰く、

「ともかくずっとスマホなんです。スマホずっと持つんです。風呂も入らない。極端に言うと歯も磨かない。ずっとスマホ」

家族で話し合い、平日は1時間、休日は2時間までとルールを決めても守れなかった星矢君にとって、スマホ断ち合宿は悪夢以外の何物でもない。

実は「スマホ断ち合宿」は完全にスマホ禁止ではない。宿泊施設から少し離れた山の中腹に、通称「スマホ部屋」なるものがあり、1日に1時間だけ自由に使うことができるのだ。スマホのできる環境で、「スマホしようかな、しないでおこうかな」と葛藤したり考えることこそがスマホ断ちには必要なのだという。もちろん合宿の初日、星矢くんは一番乗りでスマホ部屋に駆けつけ、同じくスマホ部屋にきたもう一人の少年と失った時間を取り戻すかのようにゲームに集中した。一方、2人を除いた他の少年たちはスマホ部屋には行かず、宿泊施設で仲間たちと輪になってトランプを始める。

「一人一人でスマホゲームしているよりも、みんなでトランプしている方が絶対楽しい」

2日目、スマホ部屋に現れたのは星矢くんだけだった。

「別に人は人やなって。ずっとやっているから、(ゲームの)報酬が途切れたら嫌や。毎日、連続でやってたら報酬が良いものになるけど、一回途切れたら、また最初からになるから」

ゲームの報酬を得るために、3日目も一人スマホ部屋に通う星矢くんだったが、他の少年たちはスマホを手にすることなく海で遊んでいた。合宿ではシュノーケリングやカヌーをこいで離れ小島を一周。野外体験や自炊に取り組むといった活動が行われる。少年たちからは「こんなところに来て、スマホ触っていたらもったいない。時間がもったいないって感じる、ゲームやってたら」と、笑顔が返ってくる。

desert island japan

星矢くんに変化が起きたのは最後の夜のことだった。いったん一人でスマホ部屋に現れた星矢くんだったが、わずか5分でスマホを置き立ち上がったのだ。小屋を飛び出し、夜の山道を走り出す。向かったのは仲間たちのいる宿泊施設だ。

星矢「寄せてや!」

友達「いま、ケイドロしとんのよ。星矢は逃げて!いまから10秒!」

一人でスマホをしているときには見せなかった満面の笑顔で星矢くんは走り出す。

星矢「なんか面白かった。みんなで遊ぶのが。スマホ以外にも面白いことあるなって思った」

こうした「スマホ断ち合宿」の効果を疑問視する声や、そもそも子供をこうした合宿に行かせる前に親がスマホ断ちをするべきだという意見もある。一方、星矢くんのように、合宿をきっかけにしてスマホとのかかわり方を初めて客観的に意識することで、これまで目を向けなかった世界に気づくこともあるようだ。

家入一真さんが著書「さよならインターネット」で、「かつてのインターネットは何が出てくるのかわからない偶然性にあふれていた」としつつ、技術が進歩する中で「見たくないものを排除する方向へパーソナライズしてくれるようになった」と指摘している。家入さんは、インターネットがかつての輪郭を失いはじめた今、「エクスターネット的」な行動、つまりネットから離れて「外に飛び出す」ことが必要であり、それによってネットの世界をさらに豊かな広がりにつなげることを提言している。

「エクスターネット的」行動のきっかけづくりとしての「スマホ断ち」合宿が、日常生活に戻った星矢くんたちにどのような変化をもたらしたのか。それを確認する合宿が11月にふたたび開催されるという。