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緊縮策をめぐりギリシャとEUの交渉決裂

2015年02月18日 00時45分 JST | 更新 2015年04月18日 18時12分 JST

 2月15日に、ギリシャ救済をめぐって同国政府と他の欧州諸国の間の交渉が決裂した。ブリュッセルで開かれたユーロ圏財務省会合で、緊縮策の維持を求めるEU諸国と、緊縮策を拒否するチプラス政権の意見が対立し、両者は合意することができなかったのだ。

 ギリシャに残された時間は少ない。同国へのEUの融資プログラムは、今月末に期限が切れるからだ。

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 この対立の根源は、1月25日にさかのぼる。この日ギリシャ国民は、歴史的な決定を行った。彼らは総選挙でアレクシス・チプラス党首が率いる極左政党・急進左派連合に最も多い得票率を与え、同氏を翌日首相の座に就けたのだ。チプラスは勝利宣言の後、「貧困と破局の5年間は終わった。トロイカによる独裁は過去のものになった」とアテネ市民に呼びかけた。トロイカとは、ギリシャ政府の構造改革を監視する欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)による三者委員会のことである。

 なぜギリシャ人は、極左政党を政権に就けたのか。2009年12月にギリシャの債務危機が発覚して以来、同国は国債を外国の投資家に売ることができなくなった。このためギリシャはEUに救援を要請。EUは同国に2400億ユーロ(33兆6000億円・1ユーロ=140円換算)の融資を行った上、同国の債務額を1070億ユーロ減らした。

 そのかわり、EUはギリシャ政府に公務員数の削減、社会保障のカットなどによる歳出削減や構造改革を要求したのだ。ギリシャの国家財政はトロイカの監視下に置かれた。

 誇り高いギリシャ人にとって、トロイカが彼らの政府の一挙一動を監視し、指導することは、大きな屈辱だった。約400年にわたってトルコに支配された経験を持つギリシャ人は、外国人による支配を嫌う。このためトロイカはギリシャでは怨嗟の的だった。

 チプラスは、トロイカによる監視を終わらせることや、ギリシャがEUなどに対して抱える債務の大半を棒引きにすること、緊縮策によって大きな皺寄せを受けた公務員らの待遇改善、利払いの猶予などを要求している。彼は、前政権によって解雇された公務員9000人の復職や、国営会社の民営化の停止を発表。EUと全面的に対決する姿勢を取った。

 チプラスは、ユーロ圏からの脱退を要求しているわけではない。彼は「ギリシャが不況から抜け出せない原因は、EUの緊縮策だ」と主張し、EUに対し融資の条件を変更するよう求めているのだ。

 だがチプラスの選択肢は限られている。現在ギリシャがEUから受けている融資プログラムは、2月末に終わる。EUはギリシャが緊縮策を実行することを、融資のための条件にしている。このためチプラスとトロイカの交渉は難航するだろう。ユーロ危機の再燃だけは避けて欲しいものだ。

保険毎日新聞連載コラムに加筆の上転載

(文と写真・ミュンヘン在住 熊谷 徹)

筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de