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知られざるブームタウン・ミュンヘン

2015年04月14日 17時21分 JST | 更新 2015年06月13日 18時12分 JST

ドイツの首都はベルリンである。だがこの国には、もう1つ「隠れた首都」と呼ばれる町がある。それがミュンヘンだ。

私の日本人の知り合いは、最近この町を訪れて、「ミュンヘンは他の町に比べて活気がありますね。豊かな町という感じがします」と話していた。

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ミュンヘンは今、ドイツで最も経済状態が良い町の1つだ。(筆者撮影)

ミュンヘンがブームタウンである最大の原因は、雇用が多いことだ。この町には、BMW社やジーメンス社のような大手メーカーの本社がある。かつてバイエルン州では産業の中心は農業が中心だったが、州政府が1970年代、1980年代から基幹産業を農業から航空産業やIT産業など、物づくりに移行させるための産業政策を推進してきたことが、今になって功を奏した。

このため、自動車部品やIT、電機産業などの関連企業も多数集まっている。つまり、自動車、電機、保険の大手企業を中心とする、周辺産業のクラスターが形成されているのだ。北ドイツや旧東ドイツから、職を求めてミュンヘンに移住する人が後を絶たない。たとえば旧東ドイツのザクセン州では、1990年から2011年までに人口が13%、チューリンゲン州では14.9%減った。これに対しミュンヘンがあるバイエルン州では、同じ期間に人口が10%増えている。

ドイツ連邦統計局が2013年の16の州のGDPを比較した統計によると、バイエルン州のGDPは4879億ユーロ(68兆3060億円・1ユーロ=140円換算)で、ノルトライン・ヴェストファーレン州に次いで第2位。ドイツのGDPの18%をバイエルン州が稼ぎ出している。

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春が来て、ミュンヘンっ子たちは屋外のカフェで太陽の光を満喫する。(筆者撮影)

ブームタウンでありながら、ミュンヘンでは、ドイツの他の地域にもまして充実した余暇を過ごすことができる。多くのドイツ人がここに住みたがる理由の1つは、バイエルン地方の美しい自然だ。ミュンヘンから南へ向かって1時間も車で走れば、はるか彼方に雄大なアルプス山脈を望む田園風景が広がる。この地域には、テーゲルンゼー、キムゼー、アマゼーなど多くの美しい湖がある。ドイツでは厳しい検査によって水質を管理しているので、湖水は泳いでいる魚が見えるほど澄んでいる。春夏秋のハイキングや登山、サイクリング。冬のスキーやスケートなど、アウトドア派にはこたえられないと思う。

ミュンヘンの人口は約140万人で、東京に比べるとはるかに小さい町だが、公園などの緑地が非常に多い。英国庭園やニュンフェンブルク公園など、広大な公園が市内にいくつもあるので、ジョギングや散歩を手軽に楽しむことができる。

さらにバイエルン州立歌劇場という、ドイツでもトップクラスのオペラ劇場や、コンサートホールも充実している。アルテ・ピナコテーク、ノイエ・ピナコテーク、レンバッハ・ハウスなど有名な美術館も多い。レンバッハ・ハウスは、表現主義の画家のコレクションで世界的に知られている。

また、ミュンヘンはヨーロッパの中心に近い場所に位置しているので、旅行にも便利だ。車に乗れば、オーストリア国境までは1時間、イタリア国境にも3時間で着く。チェコやフランス、スイスに車で旅行するのも簡単だ。シェンゲン協定に調印した大半の国では、国境検査を廃止しているので、以前のようにパスポートや荷物検査のための渋滞もなくなった。

電車でもオーストリアのザルツブルクまでは3時間、ウィーンならば6時間、パリにも直通列車で6時間で行ける。ウィーンの菓子屋でケーキを買って、ミュンヘンの自宅で夕食後のデザートとして食べたり、パリのパン屋で焼きたてのバゲットを買って、翌朝ミュンヘンの自宅で食べることが可能だ。

またミュンヘンには、フランクフルトに次ぐ第2の国際空港があり、世界のあらゆる場所へ簡単に飛べる。東京・羽田とミュンヘン間には、ルフトハンザと全日空の直行便が毎日2本ずつ飛んでいる。読者の皆さんの中にも、外国の空港での乗り換えの煩わしさを体験した人が多いと思う。乗り換えなしに、羽田に到着できるのは、とても便利だ。この文章を書いている2015年3月の時点では、首都ベルリンから東京への直行便はない。

外国の首都だけではなく、スペインのカナリア諸島、ギリシャのロードス島、モルジブなどのリゾート地への直行便も多数飛んでいる。

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100万都市でありながら、豊かな自然を満喫できるのが、ミュンヘンの魅力だ。(筆者撮影)

ヨーロッパのハブ空港として重要な地位を占めるミュンヘン空港だが、成田空港ほど遠くはなく、町の中心地から電車ならば45分、タクシーならば40分で着く。

バイエルン州の風物詩「ビアガルテン」も人気の的。ミュンヘンは空気が乾いているので、夏に太陽の光を浴びながら木陰でビールを飲むのは、乙なものである。

読者の皆さんも、知られざるブームタウン・ミュンヘンへ是非一度いらして下さい。

保険毎日新聞連載コラムに加筆の上転載

(文と写真・ミュンヘン在住 熊谷 徹)
筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de