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スノードンの運命

2015年05月31日 17時01分 JST | 更新 2016年05月29日 18時12分 JST
Adam Berry via Getty Images
BERLIN, GERMANY - DECEMBER 14: Former National Security Agency (NSA) contractor turned whistleblower Edward Snowden speaks during a video conference at an award ceremony for the Carl von Ossietzky journalism prize on December 14, 2014 in Berlin, Germany. Filmmaker Laura Poitras, Snowden and journalist Glenn Greenwald (the latter two in absentia) were awarded the prize by the International League for Human Rights for having 'put their personal freedom on the line to expose abuse of power' by Germany and the United States in their revelations of the extent of government surveillance on ordinary citizens in the name of 'national security' in the wake of terrorist attacks. The prize is named for journalist and Nobel Peace Prize winner Ossietzky, who died from complications from being held as a dissident in a Nazi concentration camp. A bid to allow Snowden, who has temporary asylum in Moscow, to testify in Berlin before an NSA parliamentary inquiry is ongoing. (Photo by Adam Berry/Getty Images)

エドワード・スノードンは、米国の電子諜報機関・国家安全保障局(NSA)が世界中の携帯電話やメールの傍受、盗聴を行っていることを2013年に欧米のメディアを通じて暴露した。

彼は米国から香港に逃亡した後、モスクワのトランジット区域に到着。ここから多くの国々に亡命を申請したが、拒否された。亡命を受け入れる意向を示したのは、反米傾向が強いボリビアとベネズエラだけだった。

しかし米国政府がスノードンのパスポートを無効にしたため、彼は国外に移動できなくなった。ロシアのプーチン大統領は、「米国の利益に反する活動を行わない」という条件で、亡命を受け入れる意向を表明。スノードンは2017年7月末までロシアへの滞在を許されている。

だがスノードンが置かれた状況は厳しくなりつつある。その理由は、ロシアと米国・欧州諸国の間で新たな「東西冷戦」が起きているからだ。ロシアが去年3月にクリミア半島を併合し、ウクライナ東部での内戦に介入して以来、同国は欧州と米国との対決色を深めているからだ。

ウクライナ危機は、ベルリンの壁が崩壊して以来、欧州で最も深刻な安全保障上の危機である。以前ソ連に併合されていたバルト三国や、ポーランドではロシアの変貌について不安が高まりつつあり、米国を盟主とする軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)は、東欧に戦闘部隊を常駐させることを検討しているほか、欧州連合(EU)も独自の軍隊を持つべきだという意見が出ている。

私は、ロシアのスパイ組織である対外情報庁(CBP)や連邦保安庁(FSB)が今後スノードンにNSAやCIAに関する情報を提供し、米国の諜報機関に対するサイバー攻撃に協力するよう、圧力をかけると考えている。

もしもスノードンが拒否した場合、ロシアは彼を国外退去させるだろう。プーチン大統領は、ソ連時代の諜報機関KGBの出身である。彼の辞書に「人道主義」という言葉はない。

一方、米国政府は、反逆者に対しては苛酷だ。世界中の大半の国は、米国との間に犯罪人引渡し協定に調印している。スノードンが米国に逮捕された場合、終身刑に処せられる可能性がある。

東西関係が緊張の一途をたどる中、第二次世界大戦後最も重要な告発者(ホイッスル・ブロワー)の身に大きな危険が迫りつつある。

(ミュンヘン在住 熊谷 徹)

筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de

保険毎日新聞連載コラムに加筆の上転載